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生活の拠点がバラバラでも、上手に仕事を進めるコツって? グリーンズの理事3人に聞く、僕らがこの働き方を選んだ理由

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(写真:コバヤシアイコ)

特集「グリーンズのひみつ」は、ウェブマガジンを読んでいるだけでは見えにくい、普段のグリーンズのこと、メンバーが考えていることを、より多くの方に知っていただくための対談シリーズです。

前回の「グリーンズのひみつ」で明らかになった、グリーンズでじわじわ進行しつつあるスケールアウト(全国展開)。理事だけでも、関東と関西と生活の拠点がバラバラななかで、「どうやって働いているの?」と疑問に思った人も多かったのではないでしょうか。

今回は、グリーンズ流の働き方のひみつについてお届けしたいと思います。聞き手は、greenz people担当アシスタントの渡邊めぐみです。

本当に毎日オフィスに通う必要があるの?

渡邊 菜央さんは外房、YOSHさんは京都、小野さんは都心と、グリーンズメンバーの生活拠点はバラバラですよね。それなのに、どうやって仕事を進めているのか、ずっと気になっていたんです。

いつくらいから、こういうスタイルになったんですか?

小野 ワークスタイルそのものが変わってきたのは震災がきっかけでしたね。それまでは、「朝みんなでオフィスに集まる」という、一般的な働き方をしていました。

菜央 そのときのオフィスは白山だったね。

小野 でも、震災を経て、「毎朝オフィスに通うのは本当に必要なのか?」という議論があったんです。とはいえ、「いきなりバラバラになっても、まとまらないんじゃないかなあ?」という不安はありました。

渡邊 そうですよね。

YOSH 震災の後は、co-lab千駄ヶ谷に移りました。オフィスの荷物も断捨離して、ロッカーがあるだけのフレックスメンバーという感じで。

そのとき既に、菜央くんは外房のいすみに移住していたけれど、僕も横浜の港南台というちょっと離れたところに引っ越したんです。

渡邊 はい。

YOSH でも、港南台から千駄ヶ谷まで、ドア・トゥ・ドアで片道1時間半くらい。往復だと毎日3時間、電車移動することになるので、かなりロスになる。そこで次第に、「オフィスに集まるのは週に2回で、それ以外は直行直帰」みたいな感じになっていました。

今振り返ると、その1年がいいシミュレーションになっていたのかも。

小野 意外とそれがうまくいっていて、その後YOSHさんが鹿児島に引っ越すことになったんですよね。

YOSH もう少しで妻が出産というタイミングで、妻の両親が鹿児島に住んでいたので、おじいちゃん、おばあちゃんの側で子育てしたいなと、移住することにしたんです。

とはいえ、シミュレーションの期間もなく、いきなり鹿児島という話だったら、その希望を打ち明けるにもハードルは高かった気がしますね。

ちなみに、最初その話を聞いたとき、みんなどう思った?

菜央 驚きはあったけど、リアクションのしようがなかったよ。僕もそうだけど、みんな勝手に移住するし(笑)

YOSH 家族の事情があったので、有無を言わせなかった感じはあったよね(笑)

何だか漠然と東京から離れたいと思っていたので、「このタイミングを逃すとずっといるだろうなあ」という予感もありました。

渡邊 編集長が移住するというのは、大きなニュースだと思うのですが、グリーンズのメンバー以外の方の反応はどうでしたか?

YOSH 東京の人たちからは「グリーンズらしいね」と言われましたので、よかったのかなと(笑)

あと、東京以外のライターさんたちには喜んでもらったように思います。どうしてもグリーンズ=東京というイメージがあったようですが、それがいい意味でなくなったと。

その後は、どんどん全国にライターさんが増えていったり、大阪でも忘年会を開催できるくらいになりました。

渡邊 移住したからこそ、視野が広がったと。

YOSH 大きな変化のひとつは、それまで東京でしか展開できていなかったインターンプログラムを、全世界から受け入れるようになったことです。

今のところ日本語の読み書きは必須なのですが、「世界からインターン募集!」と呼びかけたら、ニューヨークから、インドから、イギリスから続々と連絡がきて。この前はクアラルンプールとつなげたりしました。

渡邊 一気に世界に広がったんですね。

YOSH といいつつも、遠隔で働くようになってから2年経ち、逆に遠隔では足りないこともたくさんあるなあと感じています。

定例会議で情報共有はできても、情緒までは共有できないし、スキマの休み時間の話が何かを生み出すこともありますから。そのあたりはもう少し出張の機会を増やすなど、次の課題かなと思います。

「その人らしい」働き方を目指して

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4月末に久しぶりにコアメンバーが集合。撮影会をしました。(写真:コバヤシアイコ)

YOSH グリーンズのメンバーに感謝しているのは、子どもが小さいうちは夕方の時間が大変になるので、「17時以降にミーティングをいれないでほしい」というお願いを受け入れてくれたこと。

その分、時間内にきっちり仕事をしなくてはいけないので大変だし、結局、朝4時くらいに起きて仕事をすることも多いのですが、事情をきちんと説明して落としどころを探していける信頼関係があるのはありがたいことです。

菜央 世界をみてみれば、アメリカ人の事情とインド人の事情も違いすぎる。そこをオープンにしたら、「そうなんだ」って了解するしかないよね(笑)

YOSH 「働き方」について、いろいろ考えている方もたくさんいますが、大事なことは、「与えられた環境で」、「その人らしくいる」ことだと思います。

ワガママをいうからには、責任も果たさないといけない。そういう無茶ぶりに近い状況が、人を成長させることもあるのかなって。

菜央 「やりにくくないんですか?」って聞かれるけど、僕たちがやりやすいように変えてきたものなので、答えに困っちゃうよね。やりにくくなったら、また変えていけばいい。

だから逆に、他の組織はどうしているのか、すごく知りたいです。

YOSH もちろん、LCCの登場のように、時代の流れも大きいですよね。

みんながGmailやfacebookのアカウントを持っていたり、グリーンズのやり方に合わせて、LINEやGoogleハングアウトを仕事でも使ってくれたり。新たなインフラのおかげで可能になっていることも多いと思います。

小野 あとは、Googleカレンダーで、コアメンバーの予定をすべて共有していますね。仕事もプライベートも。これって結構、重要だと思う。

植原 これはかなりカルチャーショックでしたね。「子供の運動会」とか「畑」とか書いてあるから(笑)

菜央 最近は週末はDIYすることが多くて、月曜日は筋肉痛なんです。そういう、みんながそれぞれのリズムってあるわけで、とても必要な情報だと思います。

離れていても連携できる環境づくりをする

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リトルトーキョーの小屋ブックスにて(写真:コバヤシアイコ)

渡邊 メンバー同士のミーティングはどのように行っていますか?

菜央 毎週の定例は月曜日と木曜日の午前中に開催しています。

月曜日は、案件の進捗などを共有する「全体会議」、木曜日は編集面やgreenz peopleについて話し合う「編集&ピープル会議」。

それ以外はそれぞれプロジェクトごとに、という感じですね。

小野 ミーティングの前には、必ずアジェンダを書いて参加者全員に送るようにしています。参加できなかった人でも追いつけるように、箇条書きだけでなくメモを加えたり。

渡邊 全体会議はテキパキ進みますよね。最初からそういう雰囲気だったんですか?

小野 そんなことはなくて、試行錯誤の結果です。アジェンダがないと漫然とミーティングが進んでしまって、目的から逸れてしまうことってありますよね。

でも、ミーティングは交通整理のような意味合いがあると思っていて。

渡邊 交通整理とは?

小野 みんな忙しいのに、最大限タスクを詰め込んでしまう癖があって(笑)どこでどうつまづいているのかを確認し、やるべきことを取捨選択する時間にしています。

タスクを明確にすれば精神的負担をもっと減らせると思っています。逆に、そうならないんだったらミーティングをやる意味なんてないですよね。

YOSH そんなわけで、ミーティングのある月曜日が憂鬱じゃないんです(笑)

渡邊 なるほど(笑)いつもYOSHさんはオンライン参加ですが、苦労することはありますか?

YOSH 会議が始まる前と後でどんな話をしていて、どんな雰囲気なんだろう、ということを掴めないのは辛いですね。逆もしかりだと思うので、僕の方では敢えてリアクションや身振り手振りを大きくするようにしています。

菜央 顔の表情も重要な情報ですよね。普段は画面越しで話している分、直接会うとすごく濃密な時間をすごせたりする。

YOSH ちなみに、ハングアウトで「初めまして」と挨拶をして、その後リアルにあったときになんていうか悩みますね。「二度めまして」とか。

菜央 僕は「リアル初めまして」といいます(笑)

渡邊 複雑ですね(笑)

ライターさんとは主にオンラインのやりとりが多いようですが、どのように意思疎通をとっていますか?

菜央 ライターさんとは、記事のやりとり以外に、半年に一度30分、おひとりずつヒアリングの機会を設けています。

渡邊 その目的は?

YOSH 転職したり、体を壊してしまったり、ご家族の事情だったり、半年もたつとライフステージって劇的に変化することもありますよね。もちろんgreenz.jp自体も生き物のように変わっていくので、お互いの変化を共有し、次の半年を一緒に描いていくことが目的です。

ヒアリングを始める前に、やむを得ない事情で記事の本数が減ってしまったライターさんが、そのことに後ろめたさを感じて、連絡がとれなくなってしまったことがあって。せっかく生まれたご縁だし、気まずいままだともったいないので、結び目がキツくなる前に、ほぐしたいなと。

フリーランスのライターさんも多い中で、「組織に属している感じがあって安心する」と、仰っていただいたこともあります。そういうひとことは嬉しいですね。

菜央 それにライターさんの興味も広がっていくので、それを編集部としても応援したいと思っているんです。ライターさんのアンテナの張り方次第で、greenz.jpの真価もどんどん変わっていくので、そういう企画のブレストもしていますね。

半年に一度、30分だけですが、積み重ねていくと心からつながっていきます。こういう感覚をすごく大切にしたい。

渡邊 地域はバラバラでも、やっぱりリズムを大切にしているんですね。

YOSH あとは信頼関係ですね。みんな離れていて、どこで何をしてるかわからない。同じ職場にいたりすると空気で伝わることもあるけれど、それもできない。

だからこそ「一緒に動いている感」「同じ時間を生きている感」を共有するために、LINEの連絡は頻繁ですね。

ただ、たまにピリピリすることもあるので、「もっとみんなスタンプを使ったほうがいいと思う」みたいな提案を、最近はしています。

渡邊 まさに今も試行錯誤の連続なんですね。今日はありがとうございました!

(対談ここまで)

 
グリーンズの働き方のひみつがつまった今回の対談、いかがでしたか?

「組織のために人が変わる」のではなく、それぞれのライフステージの変化にあわせ、柔軟に組織のかたちを変えていくグリーンズのやり方。その土台となるのが信頼関係であり、それは普段の仕事の積み重ねにあるのかなと感じました。

何かひとつでも、参考になることがあると嬉しいです。

(Text: 渡邊めぐみ)