みなさんは、乗り換えがうまくいかなくて、仕事に遅刻してしまったことはありませんか? 世界の中でも、特に電車路線図が複雑で分かりにくいと言われる東京。実際に、私も案内標識を確認しているのに、迷ってしまうこともしばしば。
最近、公共交通機関では英語やナビアプリの案内を増やしている様子ですが、もし障害を持った方が一人で駅構内を移動するとしたらどうでしょう? まだまだ整備が不十分なところは、きっと多いのではないでしょうか?
そんななか、ロンドンの地下鉄では、視覚障害者の方が、自分の意志で動けるようになるために駅構内を案内するアプリ「Wayfindr」のデモンストレーションが行われました。
このサービスは、英国王立視覚障害者協会(RNIB)の要請を受け、デジタルサービスをデザインするustwo(英企業)が開発しました。
このアプリがすごいのは、リアルタイムで音声案内をしてくれるところ。駅構内の要所に設置されたBluetoothビーコンからの信号を、スマートフォンアプリ「Wayfindr」で受信し、ユーザーの現在位置を割り出して、ヘッドフォンで音声案内をします。現在は、エスカレーター、改札口、ホームへの道案内を音声で行っているそう。
もし迷ってしまっても、ビーコンからの信号が1秒間に10回発信されているので、自分が今どこにいるのか、次にどこに進めばいいのかをすぐに知ることができるのだとか! とはいえ、このアプリは本当にうまく案内をすることができるのでしょうか? 気になる方はこちらのビデオをチェックしてみて下さい!
視覚障害を持ったKatherin Payneさん(以下、キャサリンさん)が「Wayfindr」をピムリコ駅で実際に体験したビデオ。
Ustwoが調べたところによると、現在ロンドンには視覚障害を持った子どもや若者が約9000人いるそうです。そのうちのおよそ半分の人々が、仕事に行く時や友だちと会う時でさえ、誰かの助けなしに地下鉄には乗れないと言われています。
テスト利用を終えてキャサリンさんは、「Wayfindr」を体験した感想をこのように語っています。
今まで駅の入り口からホームに、行くまで誰かに付き添ってもらうしかなかったんです。でも、このアプリを使って10回くらい駅を歩けば、もうその後は周りの人と同じように自分の感覚で自信を持って歩けそうです。
「Wayfindr」を制作したのは、「Ustwo」のUmesh Pandya(以下、ユーメッシュさん)。ユーメッシュさんは、「どのくらいの量の言葉や情報を一度に流すのか」、「音声以外にも他にも効果音をつけたほうがいいのか」など、視覚障害者の方の気持ちになって、自分で目隠しをしながら何度も構内を歩き試行錯誤を繰り返したのだそうです。
開発にあたっては、特に言葉の選択に頭を使いました。例えば、「ななめ」というのは、角が見えている人には簡単ですが、目に障害がある方にとっては親切ではない案内の仕方です。だからこそ私たちは、左や右といった分かりやすい表現を使うことを心がけました。
今後も、ロンドン市内の駅で試験実験を進めていく予定ですが、将来的には視覚障害者の方がロンドンの地下鉄を自由に自分の意志で歩いてもらえるようになってほしいです。
友達に会ったり、仕事に行ったり、自分の意志で行動することは、誰もが当たり前にしたいと思っていることですよね。ところが、キャサリンさんのように、障害のために自分の望みを人の力を借りずには実現することのできない人もいます。
日本でも、障害の有無や年齢の違いに関わらず、すべての人が自分らしく、安心して暮らすことのできる環境を実現するには、まだまだ整備が必要な様子。私たちが駅構内を歩くときに、「視覚障害者の方々だったらどうだろう?」と気にかけることから始めてみてもいいかもしれません。
[via GOOD MAGAZINE, WIRED]
(Text:山川七海)