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辛い現実を知ってもらうにはアイデアが必要だ。難民支援協会(JAR)15年の歴史に学ぶ「おいしくて、かわいい作戦のつくり方」

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Some rights reserved by Anthony Quintano

2014年に大きな話題となった、難病ALSの認知向上と寄付金集めを目指した「アイスバケツチャレンジ」。その目的には確実に貢献をしましたが、賛否両論があったのも記憶に新しいところです。

しかし、社会的課題に対して注目を集めるのは非常に難しいもの。NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんも、Twitterで以下のように主張していらっしゃいました。
 

厳しい現実を「ここにこんなに厳しい状況におかれている人がいるんです!」と直球で主張しても、それが完全に他人ごとである人にとっては見向きもされないことがほとんど。

関心が集まらず、寄付金も得られなければ、どんなに社会的に意義がある活動をしていたとしても団体の活動を続けていくことは難しくなります。そんななかで「認定NPO法人難民支援協会(JAR)」の広報活動はひと味違います。

難民支援協会(JAR)とは

難民支援協会は、日本に逃れてきた難民が自立した生活を安心して送れるように支援する団体です。日本には毎年3,000人もの難民が、迫害から自分の命を守るためにやむを得ず母国から逃がれてきています。

迫害を受ける理由は、改宗したことや、民主化活動に参加したこと、同性を好きになったことなどさまざま。
 
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写真提供:難民支援協会

命からがら日本にたどり着いても、難民たちは決して安心できません。彼らの多くが「着の身着のまま」に近い状態で日本にやってきており、日本で生活の安定を得るまでには、高い壁を乗り越えなければなりません。

難民として日本政府に認めてもらうための手続きには、平均3年、長い場合は5年以上かかります。その間に頼れる支援はごくわずか。ゼロから自力でなんとか生き延びていかなくてはいけません。

公的支援が受けられないにも関わらず、働くことが許されていない人もいます。時には、制度の不備から、ただ申請の結果を待っているだけの人が収容されてしまうことも。

日本語もわからない、相談できる相手もいない、孤独で先が見えない中、難民申請の結果を待ち続けます。
 
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写真提供:難民支援協会

しかし「命からがら逃れてきた難民が、たどり着いた日本でもまた苦しい状況にいるんです!」という現状を訴えても、なかなか多くの方に関心を持ってもらうことは難しいもの。

難民支援団体は、難民について関心を持っていなかった人も、その存在をより身近に感じられるようさまざまなアイデアを使った活動を行っています。

また寄付金の集め方もユニーク。1999年の設立から15年の間、地道に活動を続けられてきた秘密を探るべく、難民支援協会が現在行なっている取り組みを紹介します。

おいしくて、珍しい料理はみんな大好き!そんな気持ちに応えたレシピ本
『海を渡った故郷の味 Flavours Without Borders』

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以前にこちらの記事でも紹介しましたが、このレシピ本には“クルド”、“カメルーン”、“アゼリ”、“カチン”といった聞いたことのあるけれど、アメリカやフランスのようになじみが深いわけではない国々や地域や民族の料理が掲載されています。

ぱらぱらと中を見ると食べたことのない料理ばかり。実はここに掲載されているのは、難民が日本でつくって食べている料理なのです。

難民に関心が向いていなくても、おいしいものや変わったものを食べたいという人はたくさんいるはず。『海を渡った故郷の味』には、日本国内で手に入る食材でつくられている料理が多く、つくってみたい気持ちが高まります。

つまり本を読んで、実際に料理をつくったりしながら、難民の存在や置かれている現状を知らせることができる書籍になっているのです。
 
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難民×料理という発想は、思わぬ波及効果を生みました。たとえば、大学の学食。

関西学院大学(上ヶ原キャンパス)、立命館大学(衣笠キャンパス)、早稲田大学など多くの大学の学生さんたちが学食に働きかけ、書籍の中の料理を、料金のなかから20円が寄付金になるメニューとして提供する「Meal for Refugees(M4R)」を立ち上げました。

また以前、こちらも記事にしたとおり、神戸の多国籍レストランPalermoでも、メニューをレトルトにしたチャリティ商品を開発しました。

この書籍をきっかけに、自発的な取り組みがどんどん生まれています。

「かわいい!」をきっかけに。
クルド難民の伝統工芸オヤを利用したアクセサリーを紹介するオヤ・カフェ

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『海を渡った故郷の味』は人々に「おいしい!食べてみたい!」という気持ちをフックに広げていく仕組みですが、「かわいい!」をフックに認知を高めていく取り組みも行なっています。

そのひとつがトルコ・クルド地域の女性に伝わる”オヤ”という繊細なレース編み。編み図をもたず祖母や母から娘へと伝承されるため、家庭料理のように独特でユニークなものがつくられています。

オヤは手がかかった可憐な作品で、世界的に大人気。そこで難民支援協会では、トルコ出身のクルド難民のためにオヤづくりを通じた支援プロジェクトをはじめました。
 
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クルドの女性たちの多くは、家庭内で子育てや家事を担う生活が中心のため、日本にやってきても家の中に閉じこもりがちだったそう。

今では、クルドの女性たちが一針一針時間をかけて編んだオヤのアクセサリーを「オヤ・カフェ」というイベントで紹介し、販売しています。その際、もちろんクルドの文化や難民の方々の生活、苦労の話や難民全体の置かれている環境についてなども紹介。

商品のもつストーリーを知ることで、オヤアクセサリーはさらに価値を持つことになり、身につけるたびに難民について想いを馳せる品物にもなります。

クイズ×ランニング×仮装×難民!楽しみながら、運動しながら
難民のことを知る「チャリティウォーク&ラン DAN DAN RUN」

また、楽しみながら難民を知るきっかけとして、難民支援協会は協賛企業とともに仮装大会とセットになったチャリティウォーク&ランも開催しています。
 
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難民支援協会のチャリティウォーク&ランの様子

一般的にマラソン大会は、参加の可否を抽選や先着順で区切るものが多く、大会に参加できない人を”マラソン大会難民”と呼んで話題にするほど、人気があるものです。

そんなマラソン大会を、難民を出さずに開催したい。そして本当の意味での「難民」を知ってもらうために、ウォークではチーム毎にクイズラリーを、ランは沿道でクイズを出題して難民について理解を深められるように工夫しました。

古本をチャリティに使える「チャリボン」、
スマホから簡単に募金できる「かざして募金」など気軽な募金の仕組みも

立て続けに事例を見てきましたが、難民支援協会広報部の田中志穂さんは、「気軽さや手軽さが大切」だといいます。

“難民”という存在に対して認知が低いにも関わらず、”ネットカフェ難民”、”就職難民”など言葉だけは間違ったイメージで使われているのが悩みどころです。

日本にも逃れてきている難民の存在を少しでも知っていただくために、ストレートに発信するだけではなく、気軽に知る機会や、手軽に支えていただく機会をつくっていこうと、常にみなで議論しています。

そこで難民支援協会では、広報だけでなく募金に関しても工夫を凝らし、さまざまな仕組みを活用しています。そのひとつが(株)バリューブックスの「チャリボン」という仕組み。
 

チャリボンは古本を売った人が、買い取り金額を自分で受け取るのではなく、その分を寄付したり、古本自体が必要とされる場所に寄付される仕組みです。難民支援協会では、このチャリボンの寄付先の団体として登録されています。

つまり、お金を寄付しなくとも、古本をチャリボンに送ることでお金を寄付したのと同じ状態になるのです。

また、2014年の9月1日からは「かざして募金」のアプリを使って、スマホから簡単に募金ができる仕組みも採用。

この「かざして募金」はアプリをダウンロードしておけば、参加する団体のロゴやポスターなどを読み取って募金サイトに簡単にアクセスでき、そのまま募金ができるというもの。100円から募金ができるという手軽さがあります。
 

アイスバケツチャレンジをはじめ、社会課題を解決する団体が、どのように認知度を高め、支援を得ていくのか。面白さと学びを一致させる難民支援協会の取り組みは、いろいろと参考になりそうですね。

まずはみなさんもご自身の興味から、難民について考えてみませんか?