「“自分たちらしさ”を大切にした結婚式をつくりたい!」…そう考えたとき、まず直面するのが「場所」の問題ではないでしょうか。
結婚式場ではプランが決まっていることが多く、イレギュラーなことはしづらい傾向にあります。
でも、いざ式場以外の場所で結婚式を挙げようと思うと、「どうやって会場を見つける?」「当日に向けてどんな準備が必要?」と、疑問は次から次へと湧いてきます。
そこで今回は、さまざまなフィールドでDIYのアウトドアウエディングをお手伝いをしてきたH.O.W.代表の柿原優紀さんに、会場探しのコツを教えていただきました。
式場以外の場所で結婚式を挙げるとき、注意するポイント
結婚式の準備を手伝う柿原さん
H.O.Wでは、アウトドアウエディングを挙げようと考えているカップルに対して、個別相談会やプランニングやクリエイティブのサポートを行っています。そこでよく受ける相談が「公園で結婚式を挙げたい」というものだそう。
確かに、公園なら身近な場所なのでゲストも参加しやすいし、無料で使えます。気軽な結婚式を挙げたい人にはぴったりかも?…なんて思えますが、話はそう簡単ではないようです。
柿原さん 公園の場合、管理事務所などに使用許可をいただけるように相談することになります。でも、公共の場所であるがゆえにさまざまなルールがあり、市民イベントなどではない私的なイベントのために場所を占有する許可をいただくことは難しいことが多いですね。
「開催していい」という許可がとれたとしても、それぞれの公園にはそれぞれのルールがあるので、それを知って守る必要があります。
まず、多くの公園では無許可での営利目的の活動が禁止されているため、業者さんからの配達やケータリングの発注、参加費の回収などがルール違反になることも。無断で大きなものを設営したり、装飾したりするのももちろんNGです。
また、火気厳禁とされていることも多く、現地での調理なども難しいことがほとんど。スピーカーの使用なども禁止されているので、賑やかな結婚式にしたい人には不向きです。
柿原さん 一方で、ピクニックシートとちょっとした飲み物や食べ物を持って、気軽に集まるのんびりとしたピクニックウエディングなら、公園のルール内で楽しめるはずです。
凝った演出や装飾は必要なくて、とにかく青空の下のんびりと過ごしたい、という人なら素敵な一日になるのではないでしょうか。
そして、BBQなど火を使った調理も楽しみたいという人たちには、デイキャンプ場を併設した公園もおすすめですよ。都内のアクセスの良い公園でも、火気の使用やテントなどの設営を許可したデイキャンプ場を併設しているところがありますから。
さらに賑やかに、という場合は、思い切って少し足をのばして、キャンプ場などを選ぶのも良いと思います。
柿原さん曰く、大事なのは「どんな結婚式を挙げたいのか、どんな1日にしたいのか」ということ。それによって、どんな場所が適しているかが決まってきます。バーベキュー場、河原、森、カフェ、古民家…人によって、さまざまな場所が結婚式の会場になり得そうですね。
岐阜県飛騨市河合町でのフィールドワークの様子
では、会場が決まったら、どんなところに注意したらいいのでしょうか。
結婚式場なら緊急時の対応もしっかりしていて細やかにサポートしてくれますが、それ以外の場所で行うとなると、自分たちでなんでも準備しなければいけません。柿原さんは、現場に何度も足を運び、フィールドワークをすることを勧めています。
そのときまず確かめておくべきポイントは、たとえばこんなこと。ゲストのアクセスはどのように案内すると良いか、トイレや電気、水場の状況、日差しや雨を除けられる場所はあるか、ゲストが進む道の足場は良いのか悪いのか、道具や機材の搬入スペースはあるのか、子どもや高齢者に配慮すべき部分がないか。
森の中だと日が落ちたら真っ暗になってしまうので、何時に日が出て何時に沈むのかも確認したほうがいいでしょう。
海辺などであれば、風の強さも要注意です。そして、近隣の家はどれくらいの距離にあるのか。苦情などが出たら一生の思い出に影が差してしまうので、そうならないよう気を配りたいものです。
また、怪我人や病人が出ないような配慮も重要です。熱中症やバーベキューなどでの食中毒の対策はもちろん、川が近くにある場合は子どもたちが立ち入らないようにロープを張るなどの対応をしたほうがいいかもしれません。
具合が悪くなってしまった人が休んだり、お母さんが赤ちゃんに授乳したりできる場所をひとつ、つくっておくと便利だそう。万一のときのため、近隣の病院の連絡先は必ず確認しておきたいところです。
柿原さん 「こういう時どうする?」と、いろんな場面を想定しておくといいと思います。必ずしも何か大きなものを設営するとか大掛かりなことをする必要はなくて、まずはその環境を活かした自然な演出を考えてみてください。
そして、不安な点は、友達に協力してもらったりしながら、自分たちでできる範囲での方法を一つひとつ考えてみる。無理な部分は思い切ってプロに頼むのが安心です。
一番理想的なのは、地元の人に話を聞いてみることですね。「この川は雨のあとは水かさがずいぶん上がるよ」とか、「地元のお祭りでは、こういうふうに工夫してるよ」とか、その土地をよく知っているからこそわかることがあったりするんですよ。
「夕方のここからの眺めが綺麗で、写真映えもする」とアドバイスをしてもらえる場合もあります。
そのとき、地域の魅力や課題も合わせて聞いてみるといいと思います。たとえば、「機会があれば地元の野菜やお酒を紹介したい」と言われたら、料理でそれを使うとか。地元の人と話しながら取り組むことで、たくさんの人と仲良くなれたら嬉しいですよね。
そうやってフィールドワークを重ねることでエピソードが増えて「思い出の場所」になるので、その過程を楽しんでほしいです。
大分県での地元素材をたっぷり使ったパーティー料理 by momoe gohan
「結婚式を挙げたい人、ウエルカム!」
受け入れに積極的な7つのフィールドをご紹介
でも、こうした話を聞いて、「場所探しも大変そうだし、ちょっと私たちには無理かも…」と思ってしまう人もきっとたくさんいるはず。そこでH.O.Wでは、提携フィールド(※)を用意し、カップルさんに紹介しています。
(※H.O.Wでは、結婚式の開催場所のことを、“サービスとして用意された箱”というイメージを持つ「会場」ではなく、その土地の風土や文化と地続きであることを感じられる「フィールド」という言葉で呼んでいます)
柿原さん H.O.Wは最初、アウトドアウエディングの事例をサイトで紹介する活動だったんです。
でも実際に使える環境の情報がないと、まるで「買えない商品が載っている雑誌」みたいだなって。自分たちで会場を見つけて交渉して、全部自分たちで準備して…って、やっぱりハードルが高いと思うんです。
もっとたくさんの人にアウトドアウエディングを楽しんでもらうためには、地域や場所と連携することが必要だと考えました。
ちょうどその頃、東京の奥多摩から、「地域活性化のためにアウトドアウエディングを受け入れたい」という相談がH.O.Wの元に舞い込み、一緒に取り組むことに。これをきっかけに少しずつ提携フィールドが増え、現在は7つの地域と提携しています。それぞれどんなところか、少しだけご紹介しましょう。
都心から電車で1時間半ほどの距離にある奥多摩。バーベキュー、キャンプファイアー、キャンプとアウトドア好きには堪らない結婚式を挙げることができます。
伊豆諸島のひとつ、新島。広い空、青い海、白い砂浜…写真映えはバッチリ。浜松町からジェット船で2時間半、ちょっとした小旅行気分も味わえます。
千葉県の松戸市の会場は、江戸川河川敷。広い空の下、芝生に座って川を眺めながら語り合う。そんな、のんびりくつろいだ雰囲気の結婚式が似合います。
同じく千葉県の山武市では、森を有効活用したいと考える地元チーム「WO-un」と提携。森の中に張られた、間伐材を活用した大きなテントが素敵です。
神奈川県の金谷にある「KANAYA BASE」は、ホテル&フラワーハウスをリノベーションしたシェアアトリエ。海沿いで開放的な雰囲気が魅力です。
海と山とに面した大分のフィールド。農業が盛んなので、豊富な食材を使っておいしい料理を提供することができます。
函館から電車で30分、北海道七飯町大沼にある大沼国定公園。カヌーや船があり、さまざまな演出が考えられそうです。
柿原さん この7つのフィールドは、どこもアウトドアウエディングの受け入れにとてもウエルカムな雰囲気です。商売としてではなく、自分たちの地域を知ってもらって好きになってもらいたいという人が多い。
だから、準備をしていく内に仲良くなって、お気に入りの地域になったというカップルさんがたくさんいます。地域に協力的な人たちが居れば居るほど心強い。雨のときや緊急時などの対策も立てやすいので、おすすめです。
故郷の魅力を参加者にアピール!大沼のDIYウエディング
このうち、大沼は現在のH.O.Wスタッフの葭葉抄子(よしばしょうこ)さんのふるさと。まだH.O.Wに参加する前、H.O.Wの事例記事も参考にしながら、自らのウエディングを地元大沼の人々と協力して企画した葭葉さん。
それをきっかけとして、大沼でアウトドアウエディングの受け入れが始まったのだそう。この葭葉さんのウエディング、とても素敵な事例なので詳しく教えてもらいました。
「ゲストに大沼の環境や人の魅力を知ってもらいたい」と、地元の人たちに協力を依頼。地元で活躍する空間デザイナーチームがプロデュースを行いました。
会場は、大沼国定公園内の沼のほとり。桟橋をバージンロードに見立ててセレモニーを行った後、新郎新婦がカヌーに乗り込むと、地元のカヌーハウスのおじさんがイタリア語でカンツォーネを歌ってくれました。
使われていなかった一隻の遊覧船が二次会の会場。みんなで掃除をして装飾を施したところ、素敵な空間に変身しました。活用されていなかったものがこんな風に蘇ることに、葭葉さんはとても驚いたといいます。
この式をサポートしてくれたのは地元のおじさんたちです。
「抄子が結婚するのか、大きくなったな」と喜んでサポートしてくれました。当日は雨に見舞われてしまいましたが、アウトドアマンのおじさんたちはふだん仕事現場で使っているようなシートで即席の雨よけを設置。その手際の良さに、東京から来た葭葉さんの友人からは歓声が挙がったそう。
葭葉さん おじさんたちも嬉しそうでした。若者が都会からたくさん集まって、風景とか料理とかひとつひとつにキャーって盛り上がることで、自分たちにとって当たり前のことが、外の人にとっては価値があったり新鮮だったりするんだなとわかって嬉しかったですね。
この式の開催は地元の人からもとても喜ばれ、現在は葭葉さん自身が主体となって、大沼でのアウトドアウエディングを受け入れているのだそう。「大沼で結婚式を挙げたいという人がいたら、ぜひサポートしたいです!」とにっこり笑う葭葉さん。北海道のみなさん、いかがですか?
結婚式を通して、自分の好きな地域ともっと仲良くなる
こうして柿原さんや葭葉さんのお話を聞くうちに、結婚式の会場は、単に「自分たちの理想の結婚式を挙げられる条件が揃っている場所」ではなくて、「一生の思い出が残る特別な場所」「ずっとつきあいが続いていくかもしれない場所」なのだということが見えてきました。
柿原さん 結婚式は、その地域や場所の魅力を再発見する良い機会になると思っています。そして、見つけたものを自分たちで演出して、その魅力をみんなに発信できる絶好の機会でもあるんです。
たとえば、自分の好きな地域を知ってほしいと思ったとき、エコツーリズムを企画したとしても、実際に来てくれる人はなかなか限られてしまうこともある。でも、「結婚式をします」と言ったら、「じゃあお祝いしに行くか」となるかもしれない。結婚式には、人を集める力があると思います。
準備を通してその地域や地元の人と親しくなり、結婚式でその魅力をたくさんの人に伝える。そんな風に考えると、結婚式をDIYするのがより楽しくなりそうです。
みなさんは、どんな場所で結婚式を挙げたいですか?