(Photo:中川なつみ)
エコやグリーン、サステナビリティをテーマとして世界各地で開催されている飲み会「green drinks」。2010年にgreen drinks Japanが設立されたことをきっかけに、今や日本全国150近くの地域にまで、そのネットワークが広がっています。
そんな、5年目を迎えるgreen drinks Japanの恒例イベントが、各地のオーガナイザーが半年から1年に一度集まり、参加者の方々と一緒に活動内容や課題を話し合う「オーガナイザーサミット」です。
先日、京都市内で開催されたサミットには、京都、東京、横浜、谷町、西条、石巻の6地域でそれぞれgreen drinksを展開するオーガナイザーが集結しました。今回は、各地域の取り組みや課題がシェアされたサミットの様子をご紹介し、green drinksの未来像を探っていきます。
色とりどりの浴衣をまとって準備に励むスタッフのみなさん。(Photo:中川なつみ)
関西で初の開催となった今回のオーガナイザーサミットの会場は、京都御所のほど近くに建つ、築約150年の京町屋を改装したコミュニティスペース「風伝館」。
サミットのホストを務める「green drinks Kyoto」のスタッフのみなさんは、それぞれ涼やかな浴衣に身を包み、この風情溢れる空間でおもてなしを演出しました。
そしてこの日は約40名のgreen drinksファンが来場し、スタートを前に畳敷きの大部屋は満員に。半数近くの方が初参加でした。
和やかな雰囲気の中、サミットはスタートしました。(Photo:中川なつみ)
彩り豊かな6地域の自己紹介から
飲み物を片手に早くも参加者同士で会話が盛り上がる中、green drinks Kyotoの村木さんの司会でサミットがスタート。
green drinksについての簡単な説明の後、各地のオーガナイザーにバトンタッチして、それぞれのコンセプトやこれまでの活動についてのプレゼンテーションが行われました。
「ハマっ子の“地恵地楽”の場に」/green drinks Yokohama
まずは「green drinks Yokohama」。プレゼンターはオーガナイザーの足立さんです。
(Photo: 中川なつみ)
3年ほど前にスタートしたgreen drinks Yokohamaは、つい先日14回目を開催したところです。
キャッチーなコンテンツがたくさんある横浜だけど、意外とそこに暮らす人同士のつながりは薄いんじゃないか、という感覚を持ったのがきっかけでした。
“ハマっ子”の出会いの場にしようということで、地元の恵みを地元で楽しむ“地恵地楽”という考え方を大切にしながら、横浜の季節の食材を味わうイベントを開催しています。
昨年、横浜のシンボルであるみなとみらいの海を会場に行ったクルーズイベントの様子。(Photo:green drinks Yokohama)
「ふたつの港まちがつながる交流の場を」/green drinks Ishinomaki
7月末に第1回目を開催した「green drinks Ishinomaki」からは、西大條さんです。
(Photo:中川なつみ)
green drinks Ishinomakiは、green drinks Yokohamaの有志たちが石巻を訪れて開催したイベントです。
一夜限りだったので、とりたてて復興のために私たちが何かしようというよりも、素朴に交流しましょうということで、トークセッションとライブの2部立てで行いました。
まだこの先は未定ですが、これからも年に一度でもいいので続けていけたらいいなと思っています。
石巻STAND UP WEEK 2014「未来作りの見本市」のプログラムとして開催されました。(Photo:green drinks Ishinomaki)
「自分らしい“働く”を考えたい」/green drinks Tanimachi
続いて大阪の谷町からは、オーガナイザーの中西さんです。
(Photo:中川なつみ)
「green drinks Tanimachi」は、今年で3年目になります。
私たちは、自分が気持ちよく生きてゆくための選択や活動をしていることこそが、green drinks共通のテーマでもある“グリーン”だと考えています。
特に“働くこと”や“仕事”について意見を交わせる場になればと、毎回お一人“グリーンな”ゲストをお呼びしながら、3ヶ月に1度ほどのペースで開催しています。
地域の盆踊り大会に「green drinks Tanimachi」として参加するのが、毎年の恒例だそうです。(Photo:green drinks Tanimachi)
「“酒都”西条の日本酒で異分野交流を」/green drinks Saijo
「green drinks Saijo」のオーガナイザーは、現役大学院生の山本さん。
(Photo:中川なつみ)
東広島市にある西条は、兵庫県の灘、京都府の伏見に並ぶ酒蔵の街として有名なのですが、大学や国、企業の研究所が点在する学研都市でもあります。
一方で、西条に暮らす学生や社会人の交流の場が少なかったり、西条のことが好きという人が減っていたりするので、西条自慢の日本酒を通じた交流の場をつくりたいと考えました。
green drinks Saijoは、地元の人や学生、研究者などが、年齢や職業、専門分野の垣根を越えてつながれるような場にしていきたいです。
地元のバーテンダーを招いて日本酒を使ったカクテルを楽しんだことも。(Photo:green drinks Saijo)
「夢を叶える小さな“実験”の場を広げたい」/green drinks Tokyo
「green drinks Tokyo」のオーガナイザーは、greenz.jpの副編集長でもある小野さんです。
(Photo:中川なつみ)
2007年にスタートしたgreen drinks Tokyoですが、もともとはgreenz.jpを読んでくださっている方たちのオフ会のような形で始まりました。
だんだんとその枠を超えた社会的なコミュニティをつくっていこうという流れになって、“これからの○○”を考えるようなイベントを毎月100人規模で実施するようになりました。
最近では、虎ノ門にある「リトルトーキョー」を拠点に、規模は小さくても良いので、参加した人の夢を一歩でも二歩でも前に進められる集まりを毎日開催しようという方向に、シフトしています。
リトルトーキョーは、もう一つの肩書が持てるコミュニティ。“市民”による活動が盛んです。
「“ツクるを学ぶ”の一つとして」/green drinks Kyoto
最後にgreen drinks Kyotoについては、教育や地域にまつわるユニークな事業を手がけている松榮(まつえ)さんが紹介。
(Photo:中川なつみ)
green drinks Kyotoは、“ツクるを学ぶ”をテーマに展開している様々なプロジェクトの一つとして実施していて、昨年のスタート以来、かれこれ十数回開催してきました。
自分たちで「こんなものができたら面白いんじゃないかな」と思うことをどんどんつくっていく、その過程で学ぶということを日本の教育に取りいれたいという思いを、僕自身持っています。
大学生のメンバーがgreen drinksを頑張ってつくってくれているので、これからもここ風伝館という場所でお世話になりながら、続けていけたらなと思っています。
「伝統」をテーマに開催された第9回目のディスカッションの様子。(Photo:green drinks Kyoto)
サンドイッチ片手にグループトーク
こうして各地域の紹介が行われ、30分間のテーマトークタイムへ。
オーガナイザー6人が、それぞれのgreen drinksのコンセプトや課題を素材として考えたトークテーマを発表。
「食と掛け合せたら面白そうなものって?」「まわりに素敵な働き方をしている人はいますか?」など、イベントとしてのコンテンツを充実させたり、参加者の層を広げたりするためのアイデアについて、ワールドカフェ形式で参加者と意見を交わしました。
6~7人のグループに分かれ、和室や囲炉裏スペースでそれぞれのテーマについて談笑。
お楽しみの一つ、トークのお供はハムサンドです。(Photo:中川なつみ)
みんなでサンドイッチを頬張りながらのグループトークは自由な雰囲気で進み、最後に各グループで出た意見を全体で軽くシェア。
例えば、多様な人を巻き込むアイデアを募ったgreen drinks Ishinomakiのグループでは、「地元の人がガイドするツアー仕立てのイベントを企画してみては?」という意見が。
実は、前回のgreen drinks Japanサミットでは、開催地となった千葉県の松戸と柏、二つの街に精通するガイドによるツアーが実施され、好評を博しました。街ぐるみで様々な人が交わったイベントの好例として、参考になるかもしれませんね。
こうして、意気投合した参加者同士の話に花が咲くなか、サミットはおひらきを迎えました。
サミット終了後の集合写真。みなさん笑顔が輝いています!(Photo:中川なつみ)
これからのgreen drinksって?
6地域それぞれ独自の色を目にすることができた今回のオーガナイザーサミットでは、同時に各地域が抱える“いま”の課題も垣間見えました。
サミットに先立って、谷町と石巻を除く4地域のオーガナイザーが囲炉裏をかこんで行った「オーガナイザー会」での発言も踏まえながら、最後にgreen drinksの“これから”を探るポイントをまとめます。
オーガナイザー会では、イベント中にはじっくり触れることができない、各地の課題と今後を話し合いました。(Photo:中川なつみ)
1. 普段はつながりづらい人が出会う機会を
これまでとは、興味や関心が異なる人たちを巻き込んでゆくには、どうするべきか? そのアイデアを探る会話の中では、例えばこんな声が聞かれました。
京都・村木さん 土地柄もあってか、green drinksのようなソーシャル系の場に参加する人が、どこに行っても同じ顔ぶれで、あまり面白くないことがあるんです。
各地に共通する、様々なバックグラウンドを持つ人に参加してもらいたいという思い。過去に開催したイベントをきっかけに得られた次のような感覚は、大きなヒントになりそうです。
東京・小野さん 同じ業界にいる人同士、お互いに聞いてみたいことがあると思っていても、ビジネスの世界ではなかなか出会いづらいということもあるんですよね。
2011年10月開催の「green drinks Tokyo」では、同じ金融業界に身を置く「お金を投資する会社」の人と「お金を集める手段を提供する会社」の人とが顔を合わせました。
2. その地域にとってありふれたものを見つめ直す
オーガナイザー会では、イベントのマンネリ化についての赤裸々な声も。そのやりとりのなかで一同ハッとしたのが、こんな指摘でした。
東京・小野さん 地元の人にとっては当たり前すぎて、それがコンテンツになると気付いていないもの。意外とそういうものをテーマにしても良いのかも。
サミット中のプレゼンテーションでも、オーガナイザー会には参加していなかった谷町の中西さんが、これに通じる展望を語っていました。
谷町・中西さん 私自身、谷町は大好きなんですけど、どうして谷町なのか、というところが薄い部分もあるので、もう少し深く考えて活動してみたいです。
オーガナイザー会で情報交換する横浜の足立さん(左)と西条の山本さん。(Photo:中川なつみ)
3. 地元の問題を引き受けて解決する場に
一方で、green drinksそのものについて、改めて考える手掛かりになるような声も聞かれました。
東京・小野さん green drinksは、徒歩圏内のコミュニティをつくるもの。green drinks Japanとしても、ただのお祭りごとではなくて、地域の課題の解決エンジンになるような“新しい町内会”をサポートする形に変えていく時期かもしれない。
楽しく、自由で、オープンなことがgreen drinksの大きな特徴ですが、全国にますますその輪が広がってゆく中で、今後各地のコミュニティは地域の中でどのように活き、また全体としてどのようなネットワークに成長してゆくのでしょうか。
今回のサミットは、それを見つめ直す節目となるものだったのかもしれません。
みなさんも、次回どこかのgreen drinksに参加される際には、ぜひ考えてみて下さい!