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“外の人”と“地元の人”、どう協力すればいいの?震災後に発足した「石巻復興支援ネットワーク」に学ぶまちづくりのヒント

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ものづくりからはじまる復興の物語」は、東日本大震災後、東北で0からはじまったものづくりを紹介する連載企画です。「もの」の背景にある人々の営みや想いを掘り下げ、伝えていきたいと思います。

「地域に必要なのは、よそ者、若者、ばか者」って、よく聞く言葉ですよね。外から来た若者が、中にいるとわからない地域の魅力を発見して商品やサービスに発展させたり、地元の人にとっては思いもよらない方法で課題を解決したり…という成功事例が、ここ数年でメディアに取り上げられるようになりました。

でも、実際に外から来た人が地域で何かをしようとすると、抵抗を受けることのほうが多いかもしれません。「余計なお世話」と思われたり、考え方や価値観の違いから衝突が起こったり…。あまり表には出てこないだけで、ひっそりと幕を閉じたプロジェクトがきっとたくさんあるのだと思います。
 
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「石巻復興支援ネットワーク」の兼子さんと渡部さん

今回紹介する「石巻復興支援ネットワーク(通称:やっぺす石巻)」は、コミュニティづくりや女性の起業支援を行うまちづくりNPOです。石巻で生まれ育った主婦の兼子佳恵さんが代表、千葉県出身で震災後に石巻にやってきた渡部慶太さんが事務局長(現在は理事)となって発足しました。

お互いの持っているリソースを活かし多彩な活動を展開していますが、最初の頃は何度もぶつかったそう。「だからこそ、なんでも言い合える仲になりました」とふたりは笑います。これまでの葛藤を隠すことなく話してくれました。

そこには、外から来た人と地元の人が地域で活動をする際のヒントがたくさん隠れているように思えます。

震災の2か月後に「やっぺす」を発足

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兼子さんと渡部さんは、東日本大震災の数日後に発足した「被災者とNPOをつないで支える合同プロジェクト(つなプロ)」がきっかけで出会いました。避難所を回って特別な支援を必要とする被災者の情報を収集し、専門知識を持ったNPOへつなぐというプロジェクトです。

自宅が流されずに残り、復興のため自分にできることを探していた兼子さんは、ドライバーとして「つなプロ」に参加。聞き取りを行うボランティアの方々を各避難所へ送る役割を果たしました。一方、日系NGOのカンボジア事務所で働いていた渡部さんは、知人伝いで声をかけられて「つなプロ」石巻地区のエリアマネージャーに就任。NPOとの連携やボランティアマネジメントを担当しました。

渡部さん 「つなプロ」の活動をしているうちに、より広い範囲の課題が見えてきて、それを解決するために現地法人をつくろうという話になったんです。兼子さんは震災前から環境教育や子育て相談会を行う「環境と子どもを考える会」を運営していたので、「つなプロ」がその会をサポートし、合同で「石巻復興支援ネットワーク」を立ち上げました。

2011年5月1日、震災からわずか2か月後のことでした。

お母さんたちの手仕事によるお洒落なアクセサリー「Amanecer」

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「やっぺす」のミッションは、市民が復興の担い手となるためのサポートをすること。特に、子育て中の母親や子どもたちがいきいきと輝くための活動に力を入れています。

そのうちのひとつが、女性の手仕事支援。仮設住宅のより深いコミュニティ形成と、女性の生きがいとなる仕事づくりのため、2011年の10月に開始しました。

渡部さん 商品開発には、「SONRISA」というブランドを手がける勇上澄子さんに協力してもらいました。「SONRISA」は、赤ちゃんが引っ張っても切れないネックレスなど、育児中のママでもお洒落ができるアクセサリーを揃えたブランドです。

勇上さんは大阪在住でしたが、復興に対する意欲が高く、想いが同じだったので「一緒にやっていきましょう」と話が進みました。一度石巻に来てもらって、その後はメールベースでやりとりを重ねて商品を開発しました。

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そうして完成したのが、こちらの「コットンパールのゴムブレス」。軽くて着脱しやすく、上品な中にも可愛らしさのある製品です。

兼子さん ブランド名は「Amanecer(アマネセール)」としました。スペイン語で“夜明け”という意味です。「SONRISA」がスペイン語なので、それに合わせて。一人ひとりが石巻の夜明けとなって、復興を目指そうという想いを込めました。

2012年3月11日にネットショップで販売を開始すると、大好評ですぐに品薄状態に。流行のシルクリボンを使った「むら染めシルクリボンのブレスネックレス」、全国の方々から送っていただいた刺繍糸を使ってつくる「心をつなぐ一万本のミサンガブレス」など、新商品も次々に開発しました。どれもお洒落で、“復興”と関係なくほしくなるものばかりです。
 
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むら染めシルクリボンのブレスネックレス

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心をつなぐ一万本のミサンガブレス

今年3月には、Amanecerを応援してくれていたタレントの辺見えみりさんが手がけるファッションブランド「Plage」とのコラボレーションも実現。真鍮製のチェーンに刺繍糸を編み込みコットンパールを一粒つけた、シンプルで品の良いミサンガが誕生しました。現在、注文から1〜3か月待ちの大人気商品となっています。
 
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Plage×Amanecerコラボミサンガ

「この仕事があってよかった」というお母さんたちの想いに応えて

実は最初、「やっぺす」内で「Amanecer」の優先順位はとても低かったといいます。素人なので基本的なところでつまずくことも多く、中々計画通りに進みません。ほかの事業も忙しく、充分に手をかけられない状態が続きました。それが変わったのは、お母さんたちからの反響が、予想以上に大きかったからです。

渡部さん 自宅でできる手仕事ってほんとに需要があるんです。いろんなものが流されてお金がいるのに、小さなお子さんや介護が必要な家族がいて外に働きにいけない方が多くて。震災後の暮らしに大きなストレスを抱えている人もたくさんいました。自分で稼いだお金で子どもに服を買ってあげたり、ちょっとでもお洒落をしたりできれば、心に余裕ができますよね。

「この仕事があってよかった」というつくり手さんの声を聞くうちに責任感が芽生えて、もっと多くの方に継続的に仕事を提供できるよう、本腰を入れて取り組まないといけないと思うようになりました。

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つくり手の松川さんと勝俣さん。やりがいのある仕事で収入を得られることに大きな喜びを感じているといいます。

真摯に続けてきた結果、2014年4月末に商品の販売個数一万個を達成。製作技術の高いつくり手さんには、新しいつくり手さんに教える指導係になってもらい特別賃金をお支払いするなど、順調に成長を続けています。

壁にぶつかってしゃがみこんでしまう地元の人の背中を、
外から来た元気な人が押してくれた

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こんな風に、小さな声も聞き逃さず行動に移す「やっぺす」では、活動内容がどんどん多岐に渡っていきました。

被災地での活動を希望する企業や団体と現地のニーズをマッチングする復興コーディネート事業、仮設住宅での孤独死やアルコール依存症を防止するコミュニティづくり、楽しく子育てできる環境の整備、これからのまちをつくる起業家の育成…。まちづくりを担うNPOとしてしっかり石巻に根づいているように見えますが、ここまで来るにはたくさんの壁に直面したそう。

「やっぺす」内部のチームワークが整うのにも時間がかかり、冒頭で紹介した通り何度も衝突したといいます。

渡部さん 自分にとって当たり前のことが、当たり前じゃないんですよ。会社の会議だったら、アジェンダを決めて時間を決めて、しっかり結論を出そうとするじゃないですか。でも、お母さんたちは話がしょっちゅう飛ぶし、時間を気にしないから、全然まとまらないんです。

兼子さん 共通言語がないんですよね。こちらからすると、「アジェンダってなんですか」って感じなんですよ。でも、10歳も20歳も若い子に聞くのもちょっと癪だから、こっそりスマホで調べたりして。相手からしたら「真剣に話してるのになんでスマホいじってるの?」って思いますよね。「こっちはさっきの言葉必死で調べてるんだよ」って思いながら、言えなくて(笑)

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渡部さん 最初の頃は陰口も叩かれましたよ。僕も適当な人間だから(笑)でも、“インターンシップ”は“人材育成事業”、“インキュベーション”は“起業家支援”と、地元の人がわかる言葉に言い換えるようにしました。うちの団体では難しい言葉は使いません(笑)

そうした小さな衝突にも解決策を見つけ、歩み寄っていったことで、お互いへの信頼も高まっていったようです。

兼子さん うちの団体がここまでやってこれたのって、私のように壁にぶつかるとすぐに立ち止まってしゃがみこんでしまう地元の人たちを、外の元気な人たちが励ましてくれたからだと思います。

若い人の力ってすごいなって、何度も驚かされました。私が1歩進んでいるうちに、5歩も10歩も進んでいるんです。でも、進んでいく途中でちゃんと後ろを振り返って、1歩でも足を踏み出しているか、止まっているか、確認してくれたから、ついていくことができました。

実は精神的に弱いところがあるという兼子さん。震災後に2度、失語症を経験しています。渡部さんは「兼子さん、メンタル激弱なんですよ。ガラスの心もいいところです(笑)」とズバズバ言いながらも、こう続けます。
 
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渡部さん でも、だからこそ弱い人の気持ちがわかるんですよね。避難所の運営もまちづくりも、パワフルな男の人が行うと女性や子ども、障がい者の視点を見落としがちなんです。だから、兼子さんのように細かなところに気づく人も必要なんだと思います。

傍からはちょっとキツく感じるようなことも気にせずに言い合い、それでいてお互いへの尊重も感じられるふたりのやりとりは、とても小気味良く感じました。
 
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「わかってくれない」とふてくされるのではなく、「どうしたらわかってもらえるだろう」と考えて行動すること。我慢をするのではなく、話し合って解決策を考えること。相手が持っていないものを補い、持っているものを認めて活かすこと。それが、「地元の人」と「外の人」が一緒に活動するときの秘訣なのかもしれませんね。

育った地域や世代が違えば、言葉も経験も、価値観も考え方も違って当たり前。ぶつかることはあるかもしれませんが、それを乗り越えることで、より多様性のある活動ができるようになるのだということを、「やっぺす」の軌跡は教えてくれます。

そうやって、全国で楽しくまちづくりに励む人が増えたら、素敵ですね。