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本を読んでもよくわからなくてつまらなかったけれど、映像を見てみたら意外に面白かった、という経験はありませんか?今回ご紹介するのは、アニメーションを通じて哲学の面白さに触れられるウェブサイト「Wi-Phi」です。
「Wi-Phi」は、「だれでも、いつでも、どこでも哲学にアクセスできる」という意味が込められた「Wireless Philosophy」の略で、アメリカの名門、イェール大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)にそれぞれ所属する2人の大学院生によって始められたサービスです。
アニメーションと音声で解説したビデオクリップをオンライン上で公開し、哲学を学んだことのない人に、“自分なりに哲学すること”を学んでもらおうというのがねらいです。
コンテンツの本格的な充実はこれからという段階のため、まだ数はあまり多くありませんが、「無限とは何か」や「神の存在について」などの哲学的なトピックを扱ったビデオが、ウェブサイト上やYoutubeで公開されています。
例えばこちらは、「科学によって全てのことがわかるのか?」(“Science, Can it Teach Us Everything?”)というタイトルのビデオクリップ。「マリーの部屋」という知る人ぞ知る哲学の思考実験が登場します。
白黒のモノクロ部屋から一度も出ることなく生まれ育った女性、マリー。赤色を実際に目で見たことはありませんが、この世界に白黒以外の色があることは知っていて、赤という色が見える仕組みを“科学的に完璧に”説明することができる天才的な科学者です。
さてある日、マリーは机の上に真っ赤なトマトが置いてあるのを目にします。生まれて初めて目にする赤い色。果たしてその反応は?
マリーは、赤という色について何か新しいことを学ぶのでしょうか。もしそうだとしたら、科学では説明できないものがあるということになるのでは―?
哲学者の間でも意見が分かれていて決着がついていないこの問題。色ひとつをとっても、それを“知っている”とはどういうことなのか、考え出すと眠れなくなりそうです。
©Wireless Philosophy
哲学の初歩知識を解説するこうしたビデオは、短いものなら5分弱、長くても10分程度とコンパクト。まずSchool Liaison(スクール・リエゾン)と呼ばれる連絡・交渉役の学生スタッフが、解説者と実際に面談しながらナレーションを録音。次にその内容に合ったアニメーションを制作し、編集したナレーション素材と合わせて、ビデオの形に仕上げてゆくそうです。
ちなみに、ナレーションで解説を行っているのは、実はMITやハーバードといったアメリカの一流大学で哲学を研究している教授や大学院生ばかり。哲学をもっと多くの人に気軽に楽しんでもらいたい、という思いを持つ研究者が多いようですね。
アップロードされているビデオの中には、実際に紙にイラストを描いて説明していることがうかがえる音の入っているものもあり、目の前で顔を合わせながら録音したからこその臨場感が伝わってきます。
Wireless Philosophy facebook page
筋道立てて考えたり議論したりする力を蓄えるためのツールになることを役割として掲げる、哲学者たちの“手づくり”オンライン教室「Wi-Phi」。
アニメーションを通した哲学の授業に参加して、身の回りの物事を素材として視覚的に考える楽しさを感じてみませんか?
(Text:松本優真)
[via:open culture]