オリンピックの東京開催が決まり、徐々に盛り上がりをみせている日本ですが、毎年盛り上がりをみせているオリンピックが実は他にもありました。それが今回ご紹介する「World Eskimo Indian Olympic」(通称WEIO)です。
1961年から毎年7月にアラスカのフェアバンクスで開催されているWEIOは、先住民の先住民による先住民のためのオリンピック。参加資格はアメリカン・カナディアン・シベリアンエスキモーもしくはネイティブアメリカンの血を16分の1以上ひいていること。
各競技は極地方のインディアンが厳しい自然の中で生き抜いていくためには欠かせないサバイバル能力を総合的に試すユニークなものとなっています。
アザラシの皮剝ぎ競争「SEAL SKINNING」
例えば、「SEAL SKINNING」はアザラシの皮剥ぎ競争。一見、残酷なようにも見えますが、極寒のアラスカ地方に住むエスキモー達にとってアザラシは貴重な食料。つまり、アザラシの皮を素早く上手に剥ぐことは生きていくうえで必要不可欠なスキルなのです。
エスキモー流トランポリン「BLANKET TUSS」
「BLANKET TOSS」はエスキモー版トランポリンのような競技です。大きく広げられたセイウチの皮の上で飛び跳ねて、どこまで高く飛べるかを競いあいます。
トランポリンと異なるのは、地上にアスリートを投げ上げ、キャッチする人たちがいることです。跳ぶ人と投げる人達の息が合えばなんと30フィートの高さまでとぶことができるのだとか!
エスキモーたちは古来からこの「BLANKET TUSS」の手法を利用して沖にいる鯨やアザラシなどを見つけてきました。
忍耐を競いあう「EAR PULL」
他にも「EAR PULL」や「EAR WEIGHT」という競技では耳に負荷をかけ、いかにその痛みに耐え抜けるかを競いあいます。痛みや苦しみに対する我慢強さというのは、エスキモーにとって美徳であり、厳しい自然を生き抜くためには欠かせない精神力なのです。
競技と競技の間にはダンスや民話の語り聞かせや、アスリート以外の参加者も楽しめるゲームなどが行われます。そんなお楽しみいっぱいのこのオリンピックはエスキモーたちに民族的アイデンティを再認識させるだけなく、他の部族との旧交を温める良い機会を生み出す役割も果たしています。
WEIOは一般の人にも大人気で、この時期には毎年多くの人がフェアバンクスに押し寄せます。エスキモーの日常生活で必要なスキルを競技とすることで、このオリンピックは外の人にエスキモーの文化を知ってもらうよい機会となっているのです。
伝統的な技術や習俗の継承は先住民全体の課題ですが、それらを誰もがあつくなれる「オリンピック」というかたちで残すというのは秀逸なアイデアですね。もしも、あなたの街でオリンピックをひらくとしたら、どんな競技をつくりますか?
(Text:北條みくる)
[via:WEIO]