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IT企業をソーシャルデザインしよう!オープンイノベーションを創発する「ICT for Social Design Workshop」

企業、学生、研究者の3者の力を合わせた「ICT for Social Design Workshop」
企業、学生、研究者でアイデアをシャッフルした「ICT for Social Design Workshop」

皆さんは”IT企業で働く”と聞くと、どんなイメージが浮かびますか? NPOなどとは異なり、社会貢献とはあまり縁がなさそうだと思う方も多いかもしれません。

そんな中、「これまで実績を積み上げてきたICT(情報通信技術)ビジネスにソーシャルデザインを取り入れて、利益向上と社会的課題の解決の両方にさらなる価値を生み出したい」という熱い思いから立ち上がった会社が、主にITコンサルティング事業やシステム開発事業を手がける、キャスレーコンサルティング株式会社です。

同社とワークショップ研究者である東京大学の安斎勇樹さん、産学連携ビジネスを支援する事業を行う株式会社ビジネスリサーチラボの協働プロジェクトとして、これからの時代のICTビジネスを考えるワークショップが、全3回にわたって開催されました。

企業、学生、研究者でアイデアをシャッフルした3カ月。どんな気付きや課題が見えてきたのでしょうか。ワークショップの様子をキャスレーコンサルティングの砂川社長のインタビューとともにお伝えします。

砂川社長が「CSV」に注目する理由とは?

キャスレーコンサルティング株式会社 代表取締役の砂川和雅さん
キャスレーコンサルティング株式会社 代表取締役の砂川和雅さん

2006年に5名で創業したITコンサル企業を、社員120名、売上高12億円まで牽引し、キャスレーコンサルティングを立ち上げた代表取締役社長の砂川和雅さん。砂川社長はソーシャルデザイン、特に同社の企業理念である「CSV」に注目してきました。

「CSV(Creating shared value=共益価値創造)」とは、社会課題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方に利益を生み出す取り組みのことです。そこに寄せた問題意識や期待とは?

以前も開発会社に属していましたが、プライベートではNPOや社会起業家の集まりに加わり、途上国の貧困層が自ら事業を行うチャンスを作り出す「マイクロファイナンス」などの活動に携わっていました。その中で、こうした取り組みが社会から求められる時代が来ると感じてきました。

一方で、NPOや社会起業の側面からは利益に関しての意識がそれほど高くないことが多く、利益と相乗する形で貢献することこそが社会に価値があるのではないかと思いました。そのため、キャスレーコンサルティングでは利益と社会性を両立することを目指しています。

例えばこれまでの社内での実践としては、お客様にお茶を出す複数の方法について、環境への負担と人件費を比較し、業界最先端のウォーターサーバーを導入した「お茶出しCSV」などがあります。

ワークショップが生み出すオープンイノベーションの可能性

ワークショップ研究家の東京大学の安斎勇樹さん
ファシリテーターを務めたワークショップ研究家の東京大学の安斎勇樹さん

「ICT for Social Design Project」は今年6月から9月にかけて、全3回にわたって実施されました。キャスレーコンサルティングの社員、都内大学生、そして企業からのゲストが一堂に集まり、ワークショップ研究者の安斎勇樹さんのファシリテーションのもとに協同作業が行われました。

企業内部と外部のアイデアを組み合わせることで、革新的で新しい価値を創り出すことを「オープンイノベーション」と呼びますが、企業、学生、研究者という多様なステークホルダーを交えた今回の取り組みは、まさにオープンイノベーションのためのワークショップと言えるでしょう。

ICTビジネスのソーシャルデザインを考えるために、砂川社長はなぜこの方法を選んだのでしょうか。

ソーシャルデザイン、CSVはともに非常に抽象的な概念であり、理解や現場への活用が困難でした。そこで、専門性や概念を扱うことに長けている研究者の持っている力をお借りすることにしました。

また、これらは学生にとって関心の高い領域で、就職活動においても企業の社会的価値が志望理由になっているケースも多く、一緒に考えていきたいと思いました。

2014年卒マイナビ大学生就職意識調査」(株式会社マイナビ)によると、就職観について「社会に貢献したい」との回答が4年連続増加しており、学生が仕事に社会的な意義を求める傾向が続いています。

CSVをIT企業の現場にブレークダウン

「ICT for Social Design Workshop」

第1回ワークショップでは、「そもそもCSVって何?」について提唱者の定義、さまざまな分野の企業の実例を押さえた上で、「IT企業で解決すべき社会問題」とはどういうものがあるかについて話し合われました。

グループ毎に新規事業アイデアを発表すると、教育問題、人口問題、ゴミ問題など、さまざまな社会的課題を解決する事業アイデアが飛び出しました。一方で、社会的価値のイメージは人それぞれであることや、あらゆる事業分野に関連していて複雑だという難しさも見えてきました。

「ICT for Social Design Workshop」

そこで第2回では、日立ソリューションズの増田典生さん、株式会社グランマの山本尚毅さんのゲスト2名を迎え、企業のより具体的な事例をヒアリング。続いてキャスレーコンサルティングの企業理念を「CSV」「価値」「社会」の3つのキーワードを一切使わずに書き換える、というグループワークを通して、キャスレーコンサルティングにおけるCSVの領域を、256の要素から12種類の軸に具体化していきました。

IT企業のための「明日からでも使える業務改善案」

アイデア発表

ラストの第3回では、キリンCSV本部の早坂めぐみさん、川崎重工業の小野梨恵さん、磯海美穂さん、アクセンチュアの中村駿介さん、株式会社もくてきの與良昌浩さんのゲスト5名を迎え、現場に落としこむために「明日からでも使える業務プロセス・環境の改善案」を考えていきます。

グループで「コスト削減」「個人満足」「顧客満足」「社会的価値」というフレームワークに沿って考えをまとめ、最終アイデアが発表されました。

具体的には、開発のタスクでは「クライアント様と開発者の新たなコミュニケーション手段の構築」や「開発現場のコスト削減と環境資源への配慮」、「Web会議によるコスト削減と福利厚生を両立」、「遊休人的資源を最適配分するプラットフォームの提供」など、社会の為になる施策が挙げられました。

世界中で事業展開可能なアイデアを生み続ける

ワークショップ全体を通して、社員自らCSVについて考えることができたことは、新規Webサービスの開発や人材育成の観点から大きな成果がありました。

また、学生にとっては企業活動や社会的な問題意識を理解する場に、また企業にとっては、どのようにすればIT企業が学生にとって、そして社会にとって魅力的な企業になるかを知る機会になりました。

今後、キャスレーコンサルティングは、ワークショップを通して抽出した社会的課題と事業領域の定義についてのフレームワーク化と、「明日からでも使える業務プロセス・環境の改善案」を現場で活用する施策を具体的に検討していくそうです。

社員とのCSVについてのおさらい勉強会で語る砂川社長
社員とのCSVについてのおさらい勉強会で語る砂川社長

長期的な利益と成功を生むには、顧客はもちろん、従業員・社会にも支持され、価値を共有できるビジネスやサービスを生み出す必要があると考えています。

我々は、ワークショップでの研究結果をもとに、日本はもとより世界中で事業展開可能なビジネスやサービスのアイデアを得ることができました。

短期的な利益や成功を求める企業ではなく、我々のような企業が評価され、尊敬される未来を、自らの手で切り拓いていきたいと思います。

このCSVの理念を一緒に実現したい、新卒・中途エンジニアも募集中です!

皆で手を動かし、悩み、語り合った3カ月は、次なるイノベーションにもつながっていきそうです。