© Jensen Architects
食べ物を育て、料理し、みんなで味わう。スーパーやコンビニに行けば簡単に食料が手に入る都市部の暮らしでは、それぞれのプロセスをじっくり感じられる機会はあまり多くないかもしれません。
今回ご紹介するのは、“食”をめぐるこのサイクルをカタチにした、新しいスタイルのファーマーズマーケットです。
おいしそうな料理がずらりと並ぶ食品コーナー ”The Larder and Pantry” © Jensen Architects
英語で“物置”を意味する「SHED」は、世界的なワインの産地として知られるアメリカ・カリフォルニア州のHealdsburg(ヒールスバーグ)につくられました。
大きなプレハブのような外観のこのスポットには、食や農にまつわるこだわりが満載です。
食を楽しむすべてが揃うショップ
© Jensen Architects
まずは、建物の1階にあるショップに注目。「育てる(FARM)」、「調理する(COOK)」、「味わう(EAT)」をそれぞれテーマとしたコーナーがあります。
ここには、スコップやハサミなどのガーデニング用品から、フライパンや鍋などの調理器具や食器まで、世界中からセレクトされた洗練された品々がずらり。
“FARM”コーナーに並ぶ商品。カマとノコギリは、日本でつくられたものを仕入れているそう © Jensen Architects
食品コーナーに並ぶのは、地元の農家から届けられた新鮮な有機野菜や果物、そしてそれらを使った特製のお惣菜の数々。
さらに、開放的なオープンカフェやバーに立ち寄れば、地元のコーヒーブランドがローストしたコーヒーや、この地域名産のワイン、ビールなどを楽しむこともできます。
カフェやバーのスペースは、訪れた人々の交流の場。 © Jensen Architects
二階にはみんなで集まるスペースも
イベントスペースは、パブリックイベントのほかに貸し切りパーティやレセプションの会場としての利用も可能。 © Jensen Architects
また建物の2階にあるのは、スクリーンやオーディオなどの設備も整った、広い多目的スペース。
ここでは、野菜の専門家を招いてのトークイベントから、「そば作り体験」や「ナイフの使い方講座」といった多彩なテーマで開かれるワークショップ、ミツバチをフィーチャーしたドキュメンタリー映画の鑑賞会まで様々なイベントが行われています。
時には地域の農家が集まる懇親会や、植物の種の交換会の会場にもなるなど、地域の人が食生活や農業に関心を深めるきっかけとなる場になっているのです。
資材もローカルなものをチョイス
© Jensen Architects
こうした地域密着型のスタンスは、施設をつくる当初から大事にされてきたもの。建物のリノベーションの際には、地域の素材や人材が積極的に用いられ、同じカリフォルニア州にあるブランドの木材が採用されたり、地元の職人や技術者が作業に関わったりしました。
建物の天面には施設の電気をまかなう光電池パネルが取り付けられたり、外壁にリサイクル率の高い金属製パネルが利用されたりするなど、地域の環境にも配慮されています。
建物のリノベーションの様子© Jensen Architects
農業との結びつきが強いヒールスバーグの文化が、スタイリッシュに表現されている「SHED」。そこで大切にされているのは、次の言葉です。
“農”の精神は、まず大地を愛することから始まる。それが、良き育ち、良きごちそう、良き味わいにつながる。
その地域の大地の恵みを食卓へ届ける、こだわり満載の“物置小屋”。日本の食と農を盛り上げるいいヒントになりそうですね。
(Text:松本優真)
[via treehugger]