みなさんは、普段ネットショップを利用することはあるでしょうか?
最近注目を集めている、誰でも簡単にネットショップを作ることができるスマートEC「BASE(以下、ベイス)」。これは、1,000種類以上のパターンが表現可能なテーマやオリジナルの素材を活用することで、自分だけのネットショップを開設できるサービスです。
昨年11月にリリースしたベイスですが、約半年で2万数千店舗に及んでいると言います。そんな勢いのあるベイスは、一方で3月11日に東北復興支援としてのモール「東北復興春市場」を開設するなど、サービスの持ち味を生かしながら東北、地方へのアプローチもしています。
同サービスの設計コンセプトは、代表・鶴岡裕太さんの「お母さんでもネットショップが開設できる」というもの。地方の人でも使いやすいように設計されていることもあり、ベイスを東北復興・地域活性の一助になるような取り組みも注目していきたいと思います。
今回は、ベイスの東北支援の取り組みについてのお話に加え、東京などの都会中心での利用が活発な中、どのように地方にもアプローチしていくのかなどを鶴岡さん、チーフマーケターの小澤亮さんに伺いました。
東北の商品のストーリーを伝えたい
(左)代表取締役の鶴岡裕太さん(右)チーフマーケター小澤亮さん BASE株式会社にて
Q.「東北復興春市場」をはじめた経緯について教えてください。
鶴岡 僕は、これまで2回ほど東北を訪れました。1回目は今年の2月12日。実際に足を踏み入れ、自分の目で東北を見つめてみると、まだまだ復興が進んでいないということを感じました。このような状況で、今すぐベイスとして復興を手伝えることは何だろうと思い、正直モヤモヤしていました。
その後東京に戻り、ベイスのチームメンバーに東北の現状について共有しました。すると、メンバーからベイスとしても「何かできないか、何かやりたい」という意見がすぐにでてきました。
そこで、しっかりやるなら、もっと東北の今を見なければと思い、みんなで再び東北を訪れたのが3月3日です。東北の人に話に耳を傾け、人やお店、作られている商品のストーリーの大切さを感じました。そして、この東北訪問を経て、3月11日には東北の5店舗のストーリーを載せた「東北復興春市場」という特設モールをオープンしました。
Q.実際に春市場を開いてみて、反応はいかがでしたか?
鶴岡 まず現地の方々は、当初は受け入れてくれないかもしれないと思っていましたが、ベイスはシンプルで使いやすいこともあり、意外とどんどん利用していきたいと言ってくださる方もいました。
また、ソーシャルメディア上での反応は、知らないお店や商品のストーリーに触れることで、東北の魅力を再発見することができた人もいたと思っています。徹底してストーリーにこだわったこともあり、モノを見ただけでは分からない背景なども知ってもらえて良かったです。ウェブ上だけでなく、雑誌への掲載にもつながったこともあり、成果を見せることができたと思っています。
Q.東北でセミナーも開いたとのことですが、いかがだったでしょうか?
小澤 東北への出張セミナーは、4月27日にヤフー石巻復興ベースにて開催しました。その中で課題に感じた点が1つ、手応えを掴んだ点が1つありました。
まず、課題ですが、そもそもインターネットに関して抵抗感がある人が少なくないな、と率直に感じました。例えば、現地の漁師さんは普段インターネットを利用していません。
したがって、彼らにとってネットショップの運営は、全くの未知の世界であり、まだまだ導入のハードルが高いのが現状でした。インターネットが分からないということ、だまされるかもしれないといった一種のアレルギー反応も見受けられたほどです。
なので、セミナー集客に関しては、現地の人も巻き込んでおこなったものの、参加を拒否する方が少なくありませんでした。しかしながら、そのような状況でも1つ手応えを感じたことがあります。それは、少数ではありますが、ベイスを活用した販路開拓に前向きな方もいたということです。
例えば、脱サラして実家のカキ漁を継いだ漁師の阿部さんという方は、以前から積極的にベイスを活用してくださっており、毎月一定の売上を上げています。加えて、周りの漁師さんたちにもこのセミナーについてお声がけしてくださったりする他、ベイス自体へのアドバイスもくださるので、僕たちも勉強させていただいています。
ベイスとしては、阿部さんのような貴重な存在と一緒に、成功事例をつくっていきたいと思っていますし、それが作れると確信できました。ここまでが、セミナーを通じた、東北の方との対面でのやりとりでの収穫です。
ヤフー石巻復興ベースで実施したワークショップセミナーの様子(写真提供:小澤亮)
Q.今後の東北や地方へのアプローチについてどのように考えていますか?
鶴岡 現在時点では、都会の人を中心に伸びていることは事実ですが、本来ベイスは地方との相性が良いと考えています。ですので、地方の方々にもネットショップを立ち上げてもらいたいと思っています。
現状では地方でも東北にしぼって、夏市場、秋市場…などと展開予定です。その中でも、地道に地方のショップの立ち上げサポートや成功事例づくりをしていくことで、他の地方のまだネットショップを開設していない層の精神的なハードルが下がるのではないかと思います。東北のモールを進めつつ、他の地域にもアプローチしていければと考えています。
Q. 6月にオープン予定の夏市場についてはどのような感じでしょうか?
小澤 まだまだインターネットで呼びかけてもお店の募集などが難しいので、東北の店舗の方々にアプローチしていくという呼びかけが大切です。店舗を集めていくには、辛抱強く継続していくしかないと思っています。
春市場に関しては、5店舗のストーリーを丁寧に見せていくという形をとりましたが、夏に関してはもう少し間口を広げたいなと構想しています。つまり、春のようなストーリー重視というよりは、たくさんの商品を1つひとつ見せていくという方向です。少しずつですが、夏のモールでも成功事例を生んで、東北の店舗やプロダクトを発信していければと思っています。
最後にメッセージをお願いします!
鶴岡 まずベイスは、これまで地方の方々がイメージしているようなウェブサービスとは違うということを強調しておきたいです。僕の母親も60歳手前ですが、毎月洋服を何枚か販売しているなど一定の成果を見せています。
このように実際にあまりパソコンを使えないような方でも利用している現状があり、特に地方の方には、無料でリスクなくネットショップ開設ができるというポイントを知っていただけたらと思います。
小澤 いいものをつくる生産者がベイスを活用して販路開拓に成功する事例をどんどん増やしていきたいです。そのために、ベイスでは、ネットショップの運営を学びたい人に向けた学習メディアを準備しています(6月オープン予定)。
ベイスでのショップの作り方、販売促進の具体的な方法を含め、ネットショップの開設に必要なこと、知っておくとよいことなど具体的なノウハウをどんどん公開していく予定です。
(インタビューここまで)
「東北復興春市場」はもちろん、ベイスに並ぶ店舗を見ていくと、「ストーリー」が大切だと感じました。小さなネットショップだからこそ、丁寧につくられた商品に込められた思いやその背景が、ショップ訪問者の購買を決定していくのではないかと思います。
6月には、多くの東北のプロダクトを集めた復興夏市場、そしてECに関する知識の底上げをしていくメディアのリリースが待っています。引き続き、ベイスの東北や地方のネットショップ開設へのアプローチには注目していきましょう。