3月3日(日)、代官山ヒルサイドテラスの一室は、本場メキシコ料理のスパイシーな香りと、英語と日本語の織り交ざった無数の対話で充満しました。
料理を振る舞ってくれたのは、メキシコ出身のアーティストのJulieta Aranda(フリエタ・アランダ)とLaureana Toledo(ロレアナ・トレード)のお二人。海外のアーティストが短期間、日本で生活し、作品制作を行う「アーティスト・イン・レジデンス・プログラム」で東京に滞在中です。
メキシコ、日本の両国のアートや社会、はたまた食や恋愛観などの文化などについて、活発な意見交換が行われたこのイベント。当日の様子と、主催団体であるNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/ エイト]の活動についてご紹介します。
メキシコ料理を囲んで新発見
料理メニューは生の白身魚をライムの絞り汁に6時間漬けた、火を使わない料理「セビチェ」からスタート。それに続く「ワカモーレ」は、参加者も加わり、一緒に調理。アーティストが、皮のついたままのアボカドに包丁でさいの目を入れ、手で押し出した様子に歓声の上がるシーンや、コリアンダーを購入したつもりが三つ葉だったという面白いハプニングがありました。
メインディッシュは、チョコレートやナッツ、クッキーなどが入った「モーレ」という茶色い濃厚なソースをかけたジャスミンライス。「チョコレートはお菓子だと、完全に思い込んでいました(笑)」と、発見と戸惑いを楽しむ参加者の様子が見られました。
違った角度から見てみよう
このディスカッション+ディナーイベント「THIS IS A GEOGRAPHY LESSON- 新たな文化地理学を考えよう!」を企画したのは、現代アートの教育やアートを通した交流の場を提供するNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/ エイト]です。
この日の参加者は、キュレーターや新聞記者、アートスペースの運営者といったゲストと、AITが主催する現代アートの学校「MAD(Making Art Different=アートを変えよう、違った角度で見てみよう」の修了生などの計15名。修了生の多くは会社員です。
言語や文化の違いから生まれるたくさんの「誤解」を積極的に楽しみながら工夫したり、知恵を絞ったりすることが身近な創造性に繋がります。このイベントからは、そうした発見が見えてきたのではないでしょうか。
と語ったのは、AITキュレーターの堀内奈穂子さん。堀内さんご自身も、社会人のときに「MAD」を受講して現代アートを学んだ修了生のお一人です。
現代アートは身近な未来の創発場
現代アートというと、美術館やギャラリー、アーティストだけの、少し特別で難しいものだというイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、現代アートがテーマとする社会や時代性は、わたしたちの日常を取り囲むとても身近なものです。
AITが2001年より開講している現代アートの学校「MAD」は、現代アートについて、アートという枠にとどまらず、哲学思想や社会学、文化人類学、文学、自然科学などの学問領域を横断した学びを提供しています。授業を通して、社会をクリティカルに見る視点や、新たな社会を創造するクリエイティビティを身に付けることができます。
授業は夜や週末に開かれるので、学校や仕事の帰りに通えます。これまでの修了生の数は1,600人!なかには、美術館やギャラリーで働き始める人、また、留学をしたり、自分でアートの仕事を立ち上げてしまう人もいるそうです。
AITでは、こうしたMADの他にも、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムで来日する海外のアーティストによるワークショップや展覧会、トーク、また、海外の国際展やアートフェアなどのアートイベントをめぐるツアー、昨年は、温泉と美味しい食事つきの合宿も開催しています。
今回の「THIS IS A GEOGRAPHY LESSON- 新たな文化地理学を考えよう!」のように、MADの受講生や修了生向けの限定イベントもしばしば。国内外のアーティストと直接交流を楽しみながら学べるのも醍醐味の一つです。普段とは違った場所で頭を柔らかくして、多様な職種の人たちと対話を重ねることで、新しい「何か」が生まれる化学反応を体感することができるでしょう。
現代アートを学んでみよう
AITの活動についてもっと知りたい人は、4月開講の「MAD2013」オープンデーや、「アートフェア東京 ART FAIR TOKYO」のAIT出展ブース、アーティストのトークイベントに遊びに行ってみてはいかがでしょう。1900年以降の100年分の美術史をオンラインで学べる無料レクチャー「FREE MAD」をのぞいてみることもおすすめです。
現代アートを学ぶことで、あなたの“アタリマエ”を、より良い未来をつくるヒントに変えてみてください。