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カーボン・オフセットをして「環境のふるさと」を見つけよう!個人が小口でオフセットできる「四国カーボン・オフセット市場」

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カーボン・オフセットしてますか!?

と聞かれても多くの人は「っていわれても…」と思うでしょう。カーボン・オフセットという言葉は知っていても、どういう仕組みで行われているのか、そしてやるとどういいことがあるのか、さらにはそもそも個人でできるのか、などわからないことだらけだと思います。

しかし、実はやればいいことがあるし、個人でも意外と簡単にできるのです。しかも、それは漠然と「環境にいいことをする」というのではなく、直接地域に貢献したり、個人の日々の生活のあり方を考え直したりすることにもつながるのです。そんなカーボン・オフセットを扱うサイト「四国カーボン・オフセット市場」が先ごろオープンしました。いったいカーボン・オフセットの「市場」とはどのようなものなのでしょうか。

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http://www.shikoku-carbonoffset.jp/

個人でCO2排出権が買える?

まず、カーボン・オフセットについておさらいしておきます。多くの方がご存知かと思いますが、カーボン・オフセットは排出した二酸化炭素を相殺する仕組みです。具体的に排出した二酸化炭素を相殺したいと考える人や団体が排出量を削減する取り組みに投資するなどすることで、排出した二酸化炭素を「なかったことにする」制度です。投資というのは、たとえば森林を管理している自治体なり森林組合から「排出権を買う」というような方法です。

ただそうするためには、森林があればなんでもいいというわけではなく、きちんと認証制度があり、認証された団体が1トン当たり1万円というように価格を決めて排出権を「クレジット」として販売するのです。ひとつ例を挙げると、サッポロビールは北海道内のビアホールで生ビールを1杯売るごとに、その製造と輸送の際に排出される約5倍のCO2をクレジットとして北海道の4町による森林作り事業から購入、オフセットしています。

企業の場合はそのようなクレジットの購入により社会的責任を果たすことができるので、CSR活動というはっきりした目標をもって行うことができます。しかし、今回取り上げる「四国カーボン・オフセット市場」では個人による購入を視野に入れてサイトを展開しています。

それでは個人がカーボン・オフセットを行う意味とは何なのでしょうか、そしてやろうと思ったら具体的にどこで何にいくらくらい投資すればよいのでしょうか。まずはそのあたりの疑問を解決しようと、四国カーボン・オフセット市場を運営する「四国地域オフセット・クレジット拡大連連携議会」の事務局である高知県林業振興・環境部 環境共生課のカーボン・オフセット担当チーフ荒尾正剛さんにお話を聞いてきました。

CO2削減を自分ごとに

荒尾正剛さん

荒尾正剛さん

具体的な意味や方法に入る前に、そもそもなぜ「カーボン・オフセット」が必要なのか、そして今何が課題なのかを聞きました。

日本は京都議定書にのっとって2008年から2012年の間に1990年比で二酸化炭素排出量の6%削減を約束しています。この期間がこの3月末で終わり、おおむね目標は達成できているといわれています。この削減の内訳を見ると、3.8%が森林を適正に管理することによって二酸化炭素を吸収したもの(吸収系)、2.2%が実際に排出量を削減したもの(削減系)です。

吸収系は、間伐などをして森林を適切に管理することで二酸化炭素を効率よく吸収できるようにし、結果的に増えた吸収量を排出削減量として計算できるというもの。削減系は、たとえば燃料を化石燃料から薪などに変えること。これは、化石燃料という地球の中にしまいこまれた二酸化炭素を地表に放出するのではなく、二酸化炭素を吸収する木を燃やすことで二酸化炭素の総量を増やさないというものです。環境省は「J-VER」という制度で吸収あるいは削減したCO2をクレジットとして販売することを認めています。これはISOにも準拠する国際標準のクレジットです。

管理されずに荒廃した森(左)と管理されてきれいに葉が茂る香北赤塚山団地内の森(右)

管理されずに荒廃した森(左)と管理されてきれいに葉が茂る香北赤塚山団地内の森(右)

もうひとつは経済産業省の「国内クレジット」という制度です。これはもともと中小企業が大企業と組んで中小企業のエネルギー量を減らす目的ではじまったもので、中小企業が削減によって創出したクレジットを大企業が購入することで中小企業の削減コストを分担しようというものです。ですので、扱っているクレジットは削減系だけです。

こちらも削減する人を支援するという支えあいの活動というわけです。2つも制度があってややこしいですが、今年の4月から「新クレジット」というひとつの制度になるそうです。クレジットを買う必要がありそうなこと、そしてクレジットという制度の仕組みはわかりましたが、これで果たして「買おう」という気持ちになるでしょうか?

国内で現在までに創出されたクレジットは国内クレジットで約63万トン、J-VERで約34万トンだそうですが、実際に利用されたのはその二割にも満たないそうです。「使われていない」ということはやはりそれだけ必要性が認識されていないということです。なぜそうなのでしょうか。

荒尾さんは「日常で別に困っていないから、ツバルとかに実際に困っている人がいたとしてもそれは『他人事』になってしまうからだ」といいます。CO2削減の必要性というのは遠い場所で起こっていることや未来に起こりうることを想像することではじめて認識できるもの。その想像力が働いていないこそが過大であり、荒尾さんはそれをもっと「自分ごと」にできないかと考えているのです。私自身も「自分ごと」とは認識していなかったので、こんな疑問を投げかけられてはっとしました。

たとえば今日家に帰るのにCO2を何キロくらい出すかわかりますか?

と。確かにわかりません。はっきり言って想像もつきません。

荒尾さんはCO2排出量というのがカロリーのように私たちにとって身近なものになればカーボン・オフセットは「自分ごと」になるのではないかといいます。私たちはカロリーのとりすぎはいけないと考えてカロリーを「自分ごと」ととらえます。CO2排出量もおなじようにできるのではないかというのです。そしてそのようにして「自分ごと」にできたときの出口が「四国カーボン・オフセット市場」なのです。このサイトの特徴について荒尾さんはこういいます。

排出権はインターネットで買うことができるけれど、これまでは1トンずつの販売だったり、購入するためには「購入したい人はこちらへどうぞ」みたいなリンクをクリックしてメールを送らなければならなかったんです。それじゃ誰も買わないでしょ。それをもっと小さなロットにして、プロジェクトも選べるようにして、ショッピングカートに入れて誰でも簡単に買えるようにしました。

このサイトを使えば、たとえば毎日排出量をチェックして月に1度、余分だと思う量を購入したり、あるいは飛行機に乗ったらその分をクレジットでオフセットしたりという使い方ができます。

実際、日常の排出量はどのくらいなのかを調べるために、ある1日の排出量を「CO2計算機」というスマートフォンアプリで計算してみました。この日は片道30分を電車で移動しただけでしたので、1日の排出量は約5kgということでした。これが平均的な1日だと仮定すると、1年間の排出量は2トン。そこからCO2のオフセット量をマイナス6%に目標設定すると、とりあえず120kgほどオフセットしたほうがいいということになるでしょう。

それに加えて、たとえば羽田と那覇を飛行機で往復した場合、排出されるCO2は約350kg、1年の見込みの6分の1を一気に排出してしまいます。これは大人が呼吸で排出するCO2約1年分になるということなので、「これはオフセットしなければ!」と思うのではないでしょうか。そんなときこそこのサイトに行けばいいわけです。

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サイトでは職場・家庭・乗り物での排出量を簡単にチェックできます

排出権を買うことは、未来への投資

そして、このサイトのもうひとつのポイントは購入するプロジェクトを選ぶことができるということです。たとえば、「四万十町森林組合温室効果ガス吸収間伐推進プロジェクト」なら購入したクレジットは四万十の森林の再生に使われます。それは自分の使ったお金で実際に森が育ち、自分の出すCO2を吸収してもらえるということです。もちろん実際にその森が吸うわけではありませんが、それは「グリーン電力で発電された電気を使いたい」という考えと似て、選択することによって自分が気持ちよくなれるし、その活動を応援することにもあるのではないでしょうか。

「四万十町森林組合温室効果ガス吸収間伐推進プロジェクト」のページ

「四万十町森林組合温室効果ガス吸収間伐推進プロジェクト」のページ

あるいは、自分の出すCO2とは関係なく、未来への投資と考えることもできます。四万十の森は栄養を蓄え、それは高知の海に流れます。それによって高知の海は豊かな漁場になり、高知では美味しい魚が食べれるのだといわれます。その魚を育てているのはあなたのクレジットだということになるのです。よく釣りをするという荒尾さんも、この海を守るためには森が重要だと言います。他にも、和紙、バイオマスなど森林に投資することによって私たちが得られるものはあり、それを基準にプロジェクトを選ぶこともできるわけです。

高知の海ではこんな大物も釣れるんです!という荒尾さん自慢の一枚。

高知の海ではこんな大物も釣れるんです!という荒尾さん自慢の一枚。

これですぐに「そうだカーボン・オフセットしよう!」とみんなが考えるとは思いません。ただ、自分が排出する二酸化炭素というものを意識することができれば、「あ、出しすぎたな」とふと思ったときには、「四国の森から排出権を買おう」と思うこともあるのではないでしょうか。そしてその購入から生まれた出会いはさらにもう一歩進んだ意識や関係を生む手がかりになるかもしれません。

実はクレジットを売る側もどうすれば売れるのか、どうすれば資金を得て削減をさらに進めることができるのか、まだまだ手探り状態のところがあります。これ以上の温暖化を阻止するためには、クレジットを売る-買うという単純な関係ではなく、一緒に取り組んでいくパートナーを見つける、それくらいの気持ちでCO2排出のことを考えないといけない、そんなところまで来てしまっているのかもしれないと荒尾さんのお話をうかがいながら思いました。私たちが普段「出しすぎている」CO2を吸収してくれる「環境のふるさと」をあなたも探してみてはいかがでしょうか?

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