自分のスキルが誰かの役にたつー「ココナラ」は、500円で自分の特技やスキルを活かしたサービスを出品し売買をおこなうマーケットサービスで、 7月3日にサイトをリリースしました。
ユーザは、アカウントを作成した人なら誰でもサービスを出品・購入することができ、出品も購入も一律500円でおこなうことができます。売買ができるのは、例えば「あなたの似顔絵書きます」といったものや「うさぎの飼い方のアドバイスをします」「翻訳をします」「テーマにそった書籍選びのアドバイスをします」など、自身のスキルや特技などを出品することができます。
サイトリリースから約2ヶ月がたち、ユーザは約6500人が登録。出品件数も1000件を越え、1600件以上もの取引が発生しています。
なにが開発をするきっかけになったのか。また、サービスに込めた思いとは。運営している株式会社ウェルセルフ代表取締役の南章行さんに、ココナラに込めた思い、そして、ココナラが目指す今後について話を伺いました。
震災をきっかけに起業を決意
南さんは、大学を卒業後に大手銀行に入行。業界アナリストの経験を経て、企業買収ファンドの会社へ転職するなどのサラリーマンの経験を中心に過ごしてきました。その後、2009年には英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)を修了しました。
大学院時代に、「音楽を使った若者向け社会起業プログラム」ブラストビートの日本法人(NPO)設立に関わり、また、オックスフォードの同期が設立したNPO法人二枚目の名刺にも参加するなど、個人の自立・自律をサポートする活動に積極的に参加し、企業の経験だけでなく、個人として自分自身の生き方を振り返ることを意識しながら過ごしてきました。
その後、2011年3月に起きた大地震をきっかけに、若者や社会人などすべての人が社会に対して生きる力と価値を見出し、世の中に対して能動的に働きかけるためのサービスをつくっていきたいと考えました。そうした思いから退職を決意し、現在の創業メンバーである新明智さんと谷口明依さんと一緒にウェルセルフを設立しました。
一人ひとりの自己実現の役にたつサービスをつくりたい
「一人ひとりの自己実現の役にたちたい」−−それが、ウェルセルフとしての大きな理念だと、南さんは語ります。
時代の変化と同時に、世の中全体が他人ごとと感じる人が多くなってきました。それによって閉塞感を感じるようになっていると思います。そうではなく、自分自身が社会の中で必要とされていると実感できる場ができることで、世の中の出来事が”ジブンゴト”だと感じることができるのではなかと考えました。いきなり起業するのは難しいけど、働きながらでもジブンゴトに見える関係性を社会とつくること、それが「ココナラ」のサービスの原点でした。
自分の行動が何かに影響すると感じることで世の中の見え方が変わる。そこで、自分がもっているなにかを誰かに提供するサービスを、それも無料ではなく、有料でやりとりできるサービスを、と南さんは考えました。
検索ではわかりにくいことを知りたい、まわりに相談できる人がいないというニーズと、好きを仕事にしたい、自分がもっているスキルや経験を誰かの役に立てたい、という需要と供給をマッチングできる仕組み、しかも、少額でもお金でのやりとりがあるということで、購入者は真剣に相談したいという気持ちにもなり、お金をうけとった人も相談に対して真剣に応えようと思うことで、お互いにとって充実したやりとりができると考えました。
出品されているサービスを購入すると、非公開の場で出品者と一対一のやりとりができ、プライベートな相談や質問にも対応できます。出品者と購入者による密なコミュニケーションをおこないながら関係性を築く、まさに”顔が見える商い”を、ココナラのプラットフォームで提供しています。
問いをたて、自身と向き合うきっかけに
出品の一覧を見ていると、500円とは思えないくらいの良いサービスがでていることが多く見られます。
明らかに500円では安すぎるくらいのサービスが多いことは確かです。ビジネス的な視点でお試しのために出品している人もいて、購入者も500円で試してみて、クオリティーが高いとそこからきちんと高額なサービスを依頼したい、という考えをもっている人もいます。つまり、お試しな内容を出品している人もいます。
単純に必要なものを購入するだけではなく、購入者と出品者による密なやり取りそのものが、500円という価格以上の価値を生み出しているケースも多くあります。
個人で出品している人も、出品しているものに購入者がつき、評価をもらうことでもっとサービスの内容の質をあげようという前向きな動きにつながり、結果として良い学びや経験を得る人もでてきています。もはや、それは”500円”という値段に関係なく、出品者と購入者をつなぐためのきっかけにすぎないのかもしれません。また、”何を出品すればいいか”という問いを自らに立てることで、自分自身と向き合うことができ、自分を見つめなおす機会にもなっています。
価格にとらわれることなく、購入者に満足してもらおうと考える。出品するという感覚だけではなく、評価を得たい、自分自身のスキルを向上させたい、自分自身の内面と向き合いたいなど、出品者にも多種多様な人がいます。その結果、購入者の満足度が高いサービスが次々と生まれて、よいサービスには多くの評価コメントがつき、新しい購入者がさらにつくというよい循環が生まれています。
定期的にイベントを開催し、ココナラコミュニティを作っていく
ココナラは、ウェブサイトの運営だけではなく、ユーザインタビューや出品者を中心とした月一のイベントも開催しています。ユーザインタビューでは、サイトをどう使っているか、ココナラに期待していることや改善してほしいところなど、開発の参考になる情報をヒアリングしています。
一方、月一のイベントは、ココナラの思いでもある「個人の自己実現を図る」という考えを、しっかりと出品している人たちに伝えたい、という目的で開催しています。
イベントでは、ワールドカフェで出品者それぞれがどういった思いで出品をしているのか、それぞれのサービスに対する考え、ココナラが普及したらどうなるか、個人が自己実現するためにどうすればいいか、自分自身の人生とどう向き合うかなどを話しています。ワールドカフェで話すことで、それぞれ立場や経験は違えども互いに頑張っているという感覚をもち、日々の過ごし方を意識してもらうことをこのイベントでは重視しています。
起業するほどでもなくても、普通の人でも自分の持ち味で他者とつながれる機会をつくっていきたい。それによって、ちょっとできることが誰かの役にたっているという感覚をもつことが商いの原点だと思います。
世の中の効率化と巨大化が進み、お金で多くのものが手に入る現代では、その原点を忘れてしまいがちです。そんな商いの原点を経験するのがココナラでであるということを、リアルのイベントでも話しています。
イベントに参加してもらった人の日々の過ごし方への意識が変わり、得意なことは提供し、頼りたいことは頼ればいい、という思いをもってもいたいです。それによって、互いが互いに提供できる何かを分けあって生活する社会に近づいていくといいなと思います。
誰かの役にたつことで自分の価値を高めることができる
それぞれが自分の力で価値を提供できる場を持ち、自己実現を図る。そしてそれは、自分の得意を活かすことが誰かの役に立つということにつながります。その結果、日々の行動に自信をもち、さらにその人の魅力が増すというポジティブな意識が生まれ、日々の活動に向上心が芽生える。ココナラは、そうした人たちに対する成長の場を提供していきたいと語ります。
以前のNPOでの経験の中で、誰かの課題解決のためにできることを提供することは、結果として自分の得意な部分を増すというポジティブループな経験を無意識に感じていました。そこから、社会的な目的のために活動することは、実は個人の成長にリンクする、と確信するようになりました。誰かの役にたっているという経験と自信をもち、何ごとにもポジティブに向き合える人が1人でも多くいる社会にしていく、そんな場を作れたらと思います。
今後は、ココナラは女性の利用者を増やし、女性特有の悩みなどを相談できる場にしていきたいと考えています。ネットはオープンで怖いというイメージを払拭し、オンラインで気軽ながらも対面で親密なやりとりができる仕組みを普及させていくそうです。
「ココナラ」のこれから
そんなココナラは、現在はPCのみに対応しています。今後はスマホ対応などによってより使いやすい場を提供していく予定もあるとのことです。最近実装されたリクエスト機能なども今後は活発な利用を目指しており、スキルを提供したい人と誰かに頼りたいと思う人のマッチングをおこない、社会全体のポジティブループをつくるプラットフォームを目指しているそうです。
ぜひ、「ココナラ」を通じて、自己実現や自分のスキルを誰かの役に立ててはいかがでしょうか。
(画像引用:ココナラブログ)
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