セレブはグリーンカーペットを歩き、上映はグリーン電力で行う、環境にやさしいグリーンな映画祭を目指す東京国際映画祭は今年も環境に対して意識が高く、環境問題を題材とした映画も多数上映されます。
今年はグリーンに加えて「ソーシャル」という要素も強まってきました。オープニングを飾るのはFacebookの創業者マーク・ザッカーバーグを描いた話題作『ソーシャル・ネットワーク』。これ以外にも変わり行く社会のあり方を見つめた作品が多く上映され、「社会」との関わり方を探って行くことができそうです。
今年は6つの部門で115作品が上映される第23回東京国際映画祭、今年も環境問題をテーマにした作品を集めた「natural TIFF」部門が設けられ、10作品が上映されます。ラインナップを見てみると、大きな話題作というものは見当たらず少々地味な感じはしますが、これまでの私の経験から言って、そんなときこそ面白い作品が見つかるものです。そこで私が注目するのはこの2作品!
まず1本目は『そのカエル、最凶につき』。
タイトルだけでもワクワクしますが、内容は「サトウキビ畑の害虫駆除のために外国からオーストラリアにやってきた102匹のオオヒキガエル。やがて彼らは莫大な数となり全土で珍事件を巻き起こす。」というものです。外来生物が固有の生態系を壊してしまうということは日本でも問題になっていますが、「珍事件」というからにはそれだけではない面白い出来事が起きそうな… いったい何がおきるのか、そしてそれは生物多様性の未来にどう関係してくるのか、とても興味をそそられます。
もう1本は『スペース・ツーリスト』。
これは女性初の宇宙旅行者となったアヌーシャ・アンサリとマグナムの女性写真家ジョナス・ベンディクセンの視点から「宇宙旅行」について考える作品。宇宙と環境に何の関係があるの?と思うかもしれませんが、宇宙というのは地球にとっての環境、その環境が開かれることは地球にとって非常に大きな意味があると私は思います。実際に宇宙に行った女性の視点から宇宙や地球はどう見えるのか、非常に興味があるのです。
さて、環境問題の映画といって多くの人の頭にすぐ浮かぶ作品のひとつといえるのは『不都合な真実』でしょう。今回はその『不都合な真実』のスタッフが再び地球に警句を発した『カウントダウンZERO』が特別招待作品として上映されます。今回のテーマは核兵器、オバマ大統領の目指す「核なき世界」は本当に実現するのかを検証します。これも「世界」に関心があるなら、見逃せない作品です。
世界中から作品が集まる国際映画祭は文字通り「世界」に目を向ける絶好の機会です。未知の「世界」から届く作品は知的好奇心を刺激され、さらに世界がつながるために必要なことを見つけるヒントにもなりそうです。ソーシャルであることの第一歩は他者を理解すること、そのためにはさまざまな事実について知ることは非常に重要です。
そのような観点からぜひ見てみたいという作品が『神々と男たち』。この作品はフランス人修道士が現地のイスラム教徒と調和を保って暮らしている北アフリカ山間の僧院が舞台のドラマ。原理主義者の拡大によりその関係がどう変わっていくのか… まさに今の世界を考えるのにうってつけの題材です。
もう一本あげるなら『一粒の麦』です。ルーマニア、セルビア、コソボを舞台に、息子と娘を探す旅に出るふたりの父親を描いた物語。近年ではユーゴ内戦も経験した民族対立が絶えない地域で生きる人々が経験してきたこととには非常に興味があります。
なんだか深刻そうな作品ばかりあげてしまいましたが、もちろん楽しい作品もたくさんあるわけです。ですので、楽しくて、しかも何か刺激も受けることができそうな作品も見たい。そんな作品なんじゃないかと思うのが『小学校!』です。この作品は型破りな美術教師が子供たちの創造力を刺激し、気持ちを開放していくさまを描いたドラマ。すごくハッピーになれそうです!
今後公開予定の話題作も気になるところですが、せっかくの映画祭ですからぜひここで見逃したらもう見られないかもしれない!という作品から面白そうな作品を探してみるのがオススメです。世界中の映画制作者が作品に込めた未来への想いをぜひ受け止めてください。
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