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鎌仲ひとみ×Shing02対談インタビュー「一人一人がミツバチのように持続可能な存在になれば問題は解決されていく」

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greenzでも紹介した今注目のドキュメンタリー映画『ミツバチの羽音と地球の回転』。持続可能な未来を目指すこの映画をより深く知りたい、より多くの人に知ってもらいたいと思い、監督の鎌仲ひとみさんと音楽を担当したShing02さんに対談インタビューという形でお話を伺いました。その様子を一部ご紹介します!


インタビューの模様はUstreamで生中継!100人以上の方がご覧になる中、2人の熱いトークが展開されました。

編集部:今日はよろしくお願いします。まずは、前作の映画『六ヶ所村ラプソディー』から今作まで4年という間がありますが、どのような経緯で今回の作品を作るに至ったのでしょうか?

鎌仲:(『六ヶ所村ラプソディー』は)見た人が、放射線物質を生み出す原子力に覆われる日本という現実を見て、「何でいままで知らなかったんだろう、どうしてこんな風になってるんだろうと考えて、どうしたらこれを変えることができるだろう」という気持ちになって落ち込んでしまったという人が多かったんです。
そういう人たちは「どうしたらいいですか?」と私に聞いてきて、具体的なアクションを起こした人たちもいたけど、運動の成果は上がらなかった。だから、なにか変えるヒントになるようなものを、『六ヶ所村ラプソディー』を見た人数よりも大勢の人たち、つまり電気を使っている1億2千万人の人たちに広げて、アクションが有効になるような具体的なビジョンを示して欲しいというニーズが出てきたんです。
そこから今回の『ミツバチの羽音と地球の回転』へとつながるわけです。

鎌仲ひとみ監督

鎌仲ひとみ監督

編集部:では、Shing02さんとの共同作業はどのように進んだのでしょうか?

鎌仲:ひとつの曲を作っていただいて、その曲から好きなところを好きなように使ってくださいと言ってもらいました。

Shing02:それが結果的によかったと思うし、サウンドトラックとしては別にフルで聞けるようにするつもりだったので、映画では好きなように使ってもらえればいいと思いました。

鎌仲:事前にお伝えした映画のコンセプトや、観ていただいた「ぶんぶん通信」から、シンゴさんの中から出てきた発想で作った音楽を私が頂いて、好きなところをつまんで入れたという感じです。

Shing02:最後の方でやり取りはありましたけどね。今日も3時間前まで(音楽の編集を)やってたんです。

Shing02さん

Shing02さん

編集部:Shing02さんが、完成した映画を初めて観た時はどのように感じたのでしょうか?

Shing02:よい意味で今までより疑問が増えました。祝島で起きている切実な問題は他の場所で起きている切実な問題とどう違うんだ、という風に考えました。環境の問題だったり、政治的な問題だったり。日本中にあるし世界中にもある。それらをどうとらえたらいいんだろうと。
ドキュメンタリーというのは、ひとつのサブジェクトを掘り下げていくことによって、最終的には普遍的なところにたどり着く。祝島で起きていることは沖縄で起きていることと共通点がたくさんあるし、その解決策にも共通点がやっぱりどこかにあるんじゃないかと思うんですよ。普段、東京にいたりアメリカにいたりする中で、祝島に共感する部分をどうやって行動に反映していけばいいのかなと考えました。

鎌仲:六ヶ所村ではすでに、自然とともに農業などで生活してきた人たちが核施設を押し付けられるということが起きている。それは日本でも世界でも同じような構造で起きているんです。その構造そのものを見て、自分達が構造を支える側にもなっていることを知らなければ、それを変えることができない。でも、単に被害者でもなく加害者でもなく、構造の中にとらえられてしまった中で、構造そのものを変えるという大きな仕事にみんな絶望的になってしまった。
でも、今回の映画は単に構造を描くだけでなく、「構造を支える側から構造を支えない側へ行ける。構造を壊すとか破壊しなくても、違うところに自分たちの意識とか行動を移していくことでその構造を社会から押しやったり、自然に消えてゆくように仕向けたりできる」ということを描きました。

Shing02:それは凄く共感できますね。どんな争いでも、その問題の種というのはみんなが水をやればやるほど大きくなるし、根も張る。だから問題を解決するためには土を変えなきゃいけないってなると思いますが、問題を解決しようとがんじがらめになるのではなく、問題を問題と思わない人たちが出てきて、それで乗り越えられるということもあると思う。(「問題を問題と思わない人たち」についてShing02さんは、対談の終盤で「何かを提案して行動して問題じゃなくしてしまう人たちのこと」だと語っていました。つまり、起こった問題に対して、無関心、無行動になるという意味ではなく、行動することによって、問題となっている構造ごと乗り越えてしまう人たちのことを指すのだと思います。)だから、オルタナティブ・アイデアをどんどん出していって、AかBか選ぶんじゃなくて、CもDもEもFもGもあるよとするっていうのが大事なんだと思いますね。

対談はどんどんヒートアップ、Shing02さんが祝島を訪れた話から、「生き方」についてへと深まっていきます。

Shing02:
島で住むというのはそう簡単なことじゃないし、生易しいものではないけれど、「みんなとうまくやっていく」というのは基本だと思う。人は一人では生きていけない。人間は所詮動物だから、どんなに個人が潤っても種族が絶滅してしまったら一人では生きていけない。だから、お金とかモノとかをベーシックな価値よりも上に持っていってしまうのはよくない。
外から見ている者としてできることは、(中略)歴史も含めて広い目で、今やってることが20年30年40年先にも生きてくるのかなという風に考えないと。今生きるのに必死な島の人たちにそこまで要求するのはちょっと残酷だと思う。
自分たちの生活守りたいと思うのは当然だし、自分が漁師だったらまったく同じ気持ちだと思う。だからと言って自分が電力会社の人だったら自分のベストを尽くすということしかいえないし、「いい・悪い」で片付けられない。

greenz/グリーンズ ミツバチ・インタビュー2

編集部:タイトルの「ミツバチの羽音」にはどのような意味が込められているのでしょうか?

鎌仲:
放射能という人間の遺伝子に対する目に見えない脅威であるものを振り払うものは大きな力ではなくて、小さくてでも命を象徴するような力で、そのひとつの例がミツバチの「羽音」なんです。しかも、ミツバチそのものは持続可能な存在として生きているわけで、一人一人がミツバチのように持続可能な存在になれば問題は解決されていく。「誰かが」じゃなく、「自分が」なればいい。そういう思いで、このタイトルをつけました。

お二人の話は止むことを知らず、映画の内容はもちろん、スウェーデンのこと、日本のエネルギーの今後、アメリカの現状などなど盛りだくさんの対談となりました。その模様は、Ustreamのアーカイブでたっぷりとお楽しみください!

鎌仲さんは色々な話題にふれながら、しかししっかりと映画について語っていたという印象でした。shing02さんは言葉を吟味して論理的に自分の考えを語っていて、すごく格好よかった!そして、お二人は本当にお互いに尊敬しあっているんだということが伝わってきました。

このインタビューで、たびたび口に上ったキーワードは、情報、透明性、そして選択。何かを「変える」ためにはまず情報を得て、選択の幅を広げることが重要なのです。当たり前のことではあるけれど、それが今の日本ではできない、それが何よりも問題なのだと改めて思いました。

映画『ミツバチの羽音と地球の回転』より

映画『ミツバチの羽音と地球の回転』より

映画の上映会は、今後も全国で続きます。お近くで上映会が開催された際にはぜひ脚をお運びください。
『ミツバチの羽音と地球の回転』上映情報

また、Shing02さんのHPでは、レポート「僕と核~祝島訪問手記」が公開されているほか、予告編でも使用されている「隼」がダウンロード可能になっています!ぜひアクセスして、映画の感動をもう一度味わってください!

鎌仲ひとみ プロフィール
早稲田大学卒業と同時にドキュメンタリー制作の現場へ。90年最初の作品「スエチャおじさん」を監督、同年文化庁の助成を受けてカナダ国立映画制作所へ。93年からNYのペーパータイガーに参加してメディア・アクティビスト活動。95年帰国以来、フリーの映像作家としてテレビ、映画の監督をつとめる。主にNHKで「エンデの遺言―根源からお金を問う」など番組を多数監督。2003年ドキュメンタリー映画「ヒバクシャー世界の終わりに」を監督。国内外で受賞、全国400ヶ所で上映。2006年「六ヶ所村ラプソディー」は国内外650ヶ所で上映。。明治大学、国際基督教大学、津田塾などで非常勤講師もつとめる。著作「ドキュメンタリーの力」「内部被爆の脅威―原爆から劣化ウラン弾まで」「ヒバクシャー:ドキュメンタリーの現場から」「六ヶ所村ラプソディー ドキュメンタリー現在進行形」など。
Shing02 プロフィール
最先端のテクノロジーと解放的な文化が共存するカリフォルニアを拠点に活動するMC / プロデューサー。これまでに「絵夢詩ノススメ」「緑黄色人種」「400」「歪曲」を発表し、発案したfaderboardを取り入れたKosmic Renaissanceなど、国内外のコラボレーションをこなす。アルバムを発表する毎に初期のサンプリングスタイルから脱却し、ライブミュージシャンとの競演を重ねながら、現代音楽としてのヒップホップを体現する。 2009年は「歪曲楽集」を発表し、多数の客演をこなす傍ら、まだ謎が多い日本語作の「有事通信社」と初英語アルバムの「RxOxTxO(通称ロト)」も控えている。(HPより)

『ミツバチの羽音と地球の回転』を観に行こう!