『生きる、を耕す本』が完成!greenz peopleになるとプレゼント→

greenz people ロゴ

鎌仲ひとみ(2) 夢はかなえるもの

「ひとりひとりが自分らしくあること」それが私の夢
greenzインタビュー、今回は2回にわたって映画監督鎌仲ひとみさんのインタビューをお届け。第2回目はいよいよ「夢」についてのお話が登場。鎌仲さんが映像を通じて発信している「未来」とは?

ーー映画「六ヶ所村ラプソディー」を観て、すごく自然だなと思ったんですよ。目線が近いというか、離れたところにいるんじゃなくって、ああ横にいるんだなあという感じがしました。わざとらしくない。生活から切るか社会から切るかっていう切り口があると思うんですけど、この映画の切り口は生活ですからですよね。

鎌仲 そうなんです。わざとらしくできないんですよ。だから劇映画つくれないんです(笑)。

ーー今までいろんな映像作品をつくってこられたと思いますが、鎌仲さんの夢ってなんですか?

鎌仲 えっ、夢ですか?

ーー映画は手段ではないかと思うんですよ。こういう風になったらいいなと思うことと映画をつくることが実はリンクしているんじゃないかと思うんですけど。

鎌仲 私自身を考えると、ああしろとかこうしろとか言われるのがイヤだ(笑)。なんか選択肢がたくさん欲しいじゃないですか。で、その選択を押し付けられたくないんですよ。その自由な選択が可能な世界が実現できたらいいなあと思うんですよ。

菊川さんはチューリップを咲かせているけれども、菊川さんってちぃっちゃな、ホントに小柄な柔らかい女性なんですよ。その彼女がやってることが16年間チューリップを咲かせることなんです。99パーセントの人があきらめている中で。だから誰にでも自分の花を咲かすことができる可能性があるし、その可能性が開かれていくことが

私の夢かな。

ーーひとりひとりの可能性が?

鎌仲 うんうん。それがあるとかないとかいう絶対的なものじゃないんですよ。ひとりひとりが「なんだ、できるんだ!」って気づけばいいんですよ。それが「どうせ私ひとり反対したって」とか「どうせ私ひとり何か言ったって」ていう考え方が可能性の扉を閉めるんだと思うんですよ。自分で可能性をなげ捨ててしまう。ちっちゃな可能性を捨てない。自分を大切にする。それを見てまわりが、「あの人はそれがしたくて、自分で決めてやってるんだなあ」って認める。すごいささやかな夢だよね。

ーー六ヶ所村、イラクなどで映画の制作を通じて出会われた人がたくさんいると思うんですけど、ドキュメンタリーを撮る中でその人達の夢はどのようになっていきましたか?

鎌仲 それが自分でもこうなると思ってなかったんだけど、「ヒバクシャ」をつくった時は、誰がこんな映画観るんだろうと思っていました。前はテレビ番組をつくっていたから(鎌仲さんは以前NHKで番組を制作していた)、放送したら自動的に見てくれたし。でもこんなドキュメンタリーって映画館で上映してもたかがしれてるじゃないですか。今はね、ものすごくいろんな人がドキュメンタリーつくって、こんな風に映画館で上映してもらえるようになったけど、2003年の時はまだまだ走りだった、というかそんなになかった。それで、誰が見てくれるんだろうと思っている時に、自分たちで上映会を開いて地域の人に見せるっていう活動が始まって、350カ所もの全国の映画館のないまちや村で上映され、みんなが観てくれて……。

最初は点だったわけ。九州には、岡山には、秋田にはこんな人たちがいてこんな風にして映画を見てくれたのかって思ってたんですよ。そして「六ヶ所村ラプソディー」をつくったでしょ。そしたら「ヒバクシャ」を観てくれた人達ももちろんやってくれるし、また違う人達がね、食べ物のこと、農業や漁業をやっている人とか、もっともっと多様な人が参加してくれて、この映画を自分たちで上映しよう、見てもらおうとやり始めた時に、点が線でつながり始めたんですよ。

それには坂本龍一さんの影響(再処理工場の稼動に反対するアクションを起こしている)もあるんですけど、ただただエネルギーを消費して生きるのとは違う生き方、もっと環境のことを考えて気持ちよく暮らしたいという若者達も、その点と線の中に入ってきました。立体的に広がっていっている。だから映画の及ぼしている影響が目に見えるようになってきました。

ーー自給自足的な生活を目指している人は若い人達の間で増えてきていると思うんですが、彼らの活動は活気があふれてきましたか?

鎌仲 すごいクリエイティブなんですよ。以前大阪でそういう若者達が坂本さんからこの映画に興味を持って、こんな映画があるから上映してみようよって上映してくれたんですよ。でも映画を観てないからまず観たいというので、試写ビデオ送ったの。そしたらどーんと落ち込んでしまって……。「こんな重たい、絶望してしまう映画をみんなに観せて、どうしよう」と。自分たちは詩とか踊りといった表現で六ヶ所村のことをメッセージで出したかったけど、こんな暗い映画の後に、絶望的になってしまう現実の前に、どうすればいいんだって。

やめようかっていう話もでたみたいなんですけど、でも「絶望のままでいられないじゃない」「絶望を希望に変える」ってことで、”転換の宴”っていうイベントをしたんですよ。それに参加している人っていうのは、自然素材で服をつくっている人とか、有機農法をやっていて、自分がつくったものをそこで料理して出してくれたりとか、詩を朗読したりとか、詩を歌ったりする人たちだったんですよ。全体でなんかエコエコな雰囲気。エコに気持ちよく生きるって方法を模索する若者達の、すごくいい場になったんですよね。すごくみんなハッピーな感じでした。

ーーそういう前に進む原動力になるのは嬉しいですね。

鎌仲 そうなんですよ。六ヶ所村の現実はどうしようもない変え難い大きなもののように思えるんだけど、でも、あきらめたらそこでおしまいじゃないですか。私はイラクにも行っていますが、イラクで繰り広げられている現実は六ヶ所村の100倍も200倍も1000倍も絶望的なものですよ。サバイバルというより、明日殺されるかもしれないっていう中で、生活そのものが破壊されているわけでしょ? その中ではチョイスがないんですよ。生きるか死ぬかしかない。殺されるかしかもしれないというような恐怖の中で生きていかなければいけないような。でも、まだチョイスがある、選択できるというところに私たちは生きているんだから、そこで選択できなかったらどうするの!? 私たちこそが選択できる、そういうところに生きているはずなのに。

ーー自分の理想を実現しながら、みんなが幸せになる方法を選んでいけたらいいですね。

鎌仲 それがいかに非現実的かという人ももちろんい