ISSUE☆連載 こそだて寺子屋

3 years ago - 2013.07.30

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働くママがもっと活躍できる世の中に!子連れで仕事ができるコワーキングスペース「Hatch Cowork+KIDs」

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産後の育児休暇を経てママたちが直面するのは、子どもを預ける場所がない、会社に復職しても時間短縮で給与減、その上、産前のように第一線では働けない…。こうした課題に立ち向かおうと、東京・赤坂に子連れで仕事ができるコワーキングスペース「Hatch Cowork+KIDs」をオープンした、代表の片山勇志さん。片山さんが見つけた、ほしい未来のつくり方を紹介します。

子どもが生まれて、社会の課題が自分ごとに

東京・赤坂にあるHatch Cowork+KIDs。ここは、働くママが子どもを連れてくることができるコワーキングスペースで、実際には働くママを含めて、男女、子どもの有無、国籍に関わらず、いろいろな方がフラットに仕事をしているのだそう。

子連れでいらっしゃるお母さんは、ラッシュアワーを避けて、お子さんと一緒に11時くらいから17時くらいまでいることが多いですね。うちのスタッフも、週に2回ほど、子連れ出勤してもらっています。

国内のみならず、世界を見渡してもキッズルーム付きのコワーキングスペースは他にないのだとか。そんなサービスをつくったきっかけをお聞きしました。

本業は車のディーラービジネスをしているんですが、2年前に子どもが産まれて、日本の将来がとても気になり始めたんです。このままで大丈夫なのかなって。いろいろ調べてみたら、50年後の社会保障は、もう破綻していると気がついてしまったんです。

あるデータによると、今70歳くらいの人は、社会保障で約4,000万くらいの黒字となりますが、今産まれてくる子どもたちは6,000万くらいの赤字だそうです。その1億円の差って、個人がどう稼ぐか、どうお金を運用するかなんて話ではなくて、やっぱり国としての問題ですよね。

今まで自分たちが育ってきた環境は、なくなってしまうのではないか、と続ける片山さん。

国としての問題というのは、責任の所在のことではなくて、将来の子どもたちの身に降り掛かってくる問題だと思うんです。それは治安だったり、食の安全性だったり。挙げればきりがないほど、これまで考えてもみなかったようなことが、きっと大きく社会の課題として、子どもたちにのしかかってくるんじゃないかと。

それだったら海外で暮らすのもひとつの選択肢かも…と迷って、でも今のままでいいと思ったのだそう。

今のこの環境は、海外よりいいと思っているんです。アメリカやイギリス、フランスにも住んだことがあるのですが、やっぱり日本の治安や日本の人の優しさって他の国とはちょっと違ったりするんです。じゃあ、どうしたら、今のいい状態を維持できるかなって。

Hatch Cowork+KID 代表の片山 勇志さんHatch Cowork+KID 代表の片山 勇志さん

もちろん、もっとよくなったらいい。でも、今の状態を維持すればいいんだということに気づいた、という片山さん。

そのためには、労働人口を増やしていかないと、というのが自分の出した答えでした。労働人口を増やすためには、障がい者、女性、高齢者、移民という4つの層があると思ったんです。

この中でもっと増やせるなと思ったのが女性と移民。移民の就労については、先々、大きな壁にあたって動けなくなってしまうんじゃないかなと思ったんですが、女性であれば、自分にもできるかもしれないと思ったんです。

ご自身の奥さんも、保育所が見つからず、一時仕事をあきらめたりしているのを、見ていて思ったのだとか。

そんな現状を目の当たりにして、それなら、自分で、妻が働ける環境をつくってあげればいいのかなって。ある日、うちの姉がサンフランシスコに住んでいたときに、コワーキングスペースが流行っているから、日本でやってみたら?と言われて。子連れOKのコワーキングスペースができたら、働きたいけどなかなか働けないお母さんたちの役に立てるかもしれない。そう思ったとたん、何も考えずにつくり始めちゃいました(笑)。

コワーキングスペースHatch Cowork+KIDsのオープンは2012年7月。お姉さんとお話をされたのが3月で、アイデアとしてまとまったのが4月。6月にはこのスペースが完成していたので、たった2ヶ月くらいで実行したことに。

やりたいという気持ちが先行して、マーケティングも何もしていませんけどね。だから最初のころは、しーんとしていました。でもオープンしてみると、いろいろとハードルはありますが、少しずつお母さんたちも増えてきて。もちろん男性の人も半々でいますし、全員がお父さんお母さんでもないですが、そうやって少しずつ、形になってきました。

待機児童問題ばかりが社会の課題ではない

本当の課題は、待機児童の解消ばかりではないと指摘する片山さん。

このコワーキングスペースを始めてから気がついたんですが、2つ大きな社会課題があると思うんです。2つとも、意識というかメンタリティの部分。

ひとつは、男性のメンタリティです。言い換えると、社会のメンタリティともいえますね。女性の仕事について、結婚して子どもができたら、仕事を辞めて主婦になるべきだって思っている人もまだまだいるんです。そういうメンタリティがあるから、家事を手伝わないし、育児にも関わらないんですよね。

それは、その人が悪いということではなくて、社会がそういった風潮をまだまだ持っているということが課題と考えているのだそう。

また、2つ目は、女性のメンタリティです。結婚して主婦になることが夢だという人もまだいると思うんです。それ自体を批判するわけではなくて、女性についてはもう少しロールモデルが必要だと思っているんです。

女性の憧れ像に、社長や役員といった肩書きがまだまだ入っていない。先が見えないというか、ロールモデルがないと自分がどこに当てはまるかという目標も見えずらいですよね。

だからこそ、こうしたコワーキングスペースから、女性の起業家がたくさん出てきて、「子どもがいても世界にインパクトを与えるような仕事ができるんだ」と思ってもらえるような事例が、どんどん生まれてほしいのだそう。

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子どもがいても、自分自身の目標を持っていいんだって、知ってほしいんです。世界に出ていくお母さん起業家が近くにいれば、そういう意識もどんどん高まっていくと思うんですよね。会社という組織のなかでも同じです。

ママ社員がどんどん昇進して、責任ある仕事を任されるようになれば、私は将来あんなふうに活躍したいって思う女性が増えていくんじゃないかと。

まったく同じ仕事をしていても、男性と女性とでは、賃金の差が28%もあるのだとか。

Facebookの初の女性取締役COOであるシェリル・サンドバーグが言っていたことですが、例えば小学校のテストで、ある男の子とある女の子が同じ点だったとしても、男の子のほうが優等生に見られるんですって。これは男性だけがそう見ているんじゃなくて、女性もそう見てしまう。会社でも同じようなことはきっと起こっていて、男性と女性がいたとして、同じような成果を上げていたら、やっぱり男性のほうが注目されるし、早く昇進ということになる。

そうした部分はどんどん改善していかないといけないと、という片山さん。

男性も女性もフラットですよね。それぞれ、異なる素敵な感性を持っている。だから、女性は、女性だからこそ活躍できるんだというのを見せられればいいなと。社長や役員の方たちに、うちも女性社員に活躍してもらわないと世界に置いていかれる、って危機意識を持ってもらいたいんです。でも、まず自分の勤める会社から。そういうマインドシフトができたらいいなって思っているんです。

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卵のようなロゴマーク

コワーキングスペースの「Hatch」には、いろんな意味が込められているのだとか。

ハッチは和訳すると、「ふ化」という意味ですね。ひとつは子どもとの関連性を想像できるのと、ビジネスやアイデアが元気よく生まれてくるとか、日本の“殻”を破らないといけない、もっと言うと、お話したような意識、メンタリティの殻を破っていかないと、維持もできず、今ある課題はますます大きな課題となってしまうんじゃないかなと。

“75%しかできなかった”、ではなく“75%もできた”

今は30名くらいの方がこのスペースをレンタルしていて、お子さん連れの方は7名くらいだそう。お父さんが時々子どもと一緒に来たりするし、片山さんご自身も、週に2〜3回ほど、お子さんと一緒に来るのだそう。

今は託児施設としての機能はありませんが、保育士さんを探しているところで、週に3回くらい、3〜4時間だけでも、お母さん、お父さんにより集中しやすい環境をつくってあげることができるかなと考えているんです。子どもを連れてくると、だいたい50%とか60%くらいの効率でしか働けないんですよね。

それを、今日は75%くらいの効率で働けたなっていう感覚を持ってもらえたら十分なのかなって。

子育て期間中は、100%は難しい、と言う片山さん。

100%って難しいと思うんですよね。保育所に入れても、熱を出してしまったのでお迎えに来てくださいと連絡があったり、あと1時間、あと30分…って時間が気になって焦ったり。なので、75%くらいがいいところなのかなって。75%しかできなかった、と考えるのではなく、75%もできた、って考えればいいと思うんです。

Hatch Cowork+KIDsのキッズルームで遊ぶお子さん Hatch Cowork+KIDsのキッズルームで遊ぶお子さん

それは、働くママやパパだけではなく、経営側の視点としても必要だと考えているのだとか。

75%の集中力でしか働けないから、給与は25%給与カット、ということではないと思うんです。時間短縮だと給与が減るのは、少しおかしいなって。お母さんって、働き方が効率的になると思うんです。家事にしても同じですよね。

お母さんになったら効率が落ちてしまったのではなくて、効率はむしろ上がっている。さらに、お母さんだからこその目線で考えられることもある。感性は豊かになっていると思うんです。だから雇う側も、そこを見るべきですよね。

おかしいと気がついたら、行動を起こしてほしい

大人が子どもにできること…。そう聞いてみると、片山さんは、慎重に言葉を選んで「信念を持つこと」と言います。

おかしいなと気がついたことに、アクションを起こしてほしい。何でもいいと思うんです。そのために必要なのは、信念を持つことですよね。大人はもちろん、子どもにも信念を持ってほしいです。例えばスポーツでも勉強でも、自分が何かやりたいことを見つけたら、それをとことんやってみてほしいなと。仮に、親や周囲に反対されたとしても。そういう行動が積み重なって人生は豊になるし、そんな人たちが集まれば、社会は変わると思うんです。

あなたは最近、どんな信念を持って、行動しましたか?

働くママがもっと活躍できる世の中に。子連れで仕事ができるコワーキングスペースは、今後ますます注目されそうです。

行ってみよう!
Hatch Cowork+KIDs

writer ライターリスト

増村 江利子

増村 江利子

greenz シニアエディター/シニアライター 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。一児の母。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。八ヶ岳の麓の賃貸トレーラーハウスで、“小さく暮らす”をモットーに、DIY的暮らしを実践中。 facebook:http://www.facebook.com/e.masumura twitter:https://twitter.com/eriko_n

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