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「働く」「暮らす」「生きる」が一体に。300年の歴史がある旅館で地域資源をいかし、風土を未来へ繋ぐ「里山料理人」という存在#求人

[sponsored by 有限会社 御客屋旅館]

募集要項は記事末をご覧ください。

熊本県阿蘇郡にある標高700mほどの山々に囲まれた黒川温泉。30軒の旅館が点在し、全旅館をひとつの旅館に見立てて共栄を図る「黒川温泉一旅館」という考え方にもとづいたさまざまな取り組みにより多くの観光客が訪れる、九州屈指の温泉地として知られています。

その中の一つが、肥後細川藩の御用宿として創業し、300年以上という黒川温泉でもっとも古い歴史をもつ「歴史の宿 御客屋(おきゃくや)」(以下、御客屋)です。創業当時から変わらず「半農半宿」というスタイルでその歴史を重ね、旅館と2店舗の飲食店を営みながら、2020年には農業部門を設立し、自社農園や田んぼ・山林・竹林の管理もしています。

そんな御客屋では、「里山料理人」を募集しているそう。300年以上の歴史の中で培われてきた御客屋の大事な理念や、今の時代に即した「半農半宿」とは何なのか、「里山料理人」とはどんな存在なのかを聞くために、御客屋を訪ねました。

御客屋から見える黒川温泉郷の景色

御客屋がこの地にあり続け、風土・風習・風味を未来へ繋いでゆくために

御客屋は享保7年(1722年)の創業当時から田畑を耕し、山を手入れしながら宿を営む「半農半宿」を続けてきました。農業、林業、観光業といった産業、そして生業と暮らしが融合し、この土地ならではの風土と風習、そして地域ならではの風味が引き継がれてきました。

しかし経済の停滞や熊本地震、コロナ禍の影響もあり、黒川温泉も岐路に立たされています。なかには閉館後に大きな資本に買収された旅館や、宿泊と食事を切り分ける泊食分離を進める旅館もあります。また、里山も管理が行き届かず、荒れてしまいがちになった時期もありました。

このままでは、御客屋だけでなく黒川温泉自体が持続可能でなくなってしまう。そんな危機感を持ったのは、御客屋の七代目御客番である北里有紀(きたざと・ゆうき)さん。北里さんは、「今一度日本の里山にある事業者として原点回帰しながらも、この時代に即した『半農半宿』を見出していく段階に入った」と感じているそうです。

掲げている理念は、「御客屋がこの地にあり続け、風土・風習・風味を未来へ繋げてゆく」ということ。しかし、黒川という地域の未来を見据えつつも、取材冒頭で北里さんから出てきたのは手の届く範囲の世界を想う言葉でした。

北里さん 会社のパーパス(存在意義)と従業員のパーパスの重なり合いが大きければ大きいほど、個人は幸せを感じ、会社の生産性は上がります。「地方だから何もない」じゃないんです。地方だから、黒川だから、豊かなものが溢れている。それをみんなで探究し、体現していこう。そんなスタンスで日々臨んでいます。

北里さんが7代目御客番として継業したのは2010年のこと。当時は「お客様は神様だ」という世の中の風潮もあって疲弊する従業員もおり、業績は伸び悩んでいたといいます。現実を真摯に受け止め模索していく中で、ふと頭に浮かんだのが「自分たちの幸せ」だったそうです。

まずはおもてなしをする自分たちが心身ともに健康ではならない。健康だからこそ、お客様が気持ちよく滞在できるサービスが提供でき、結果的に風土・風習・風味を未来へ繋げてゆくことができるのではないか。そんな気づきから、理念やパーパスを次のように見直したのだとか。

【理念:ありたい姿】
御客屋がこの地にあり続け、風土・風習・風味を未来へ繋げてゆく


【パーパス:存在意義】
「私たちはこの地の体験や食を通じて得られる「喜び・感動・感謝・幸せ」を創出し続ける

御客屋7代目御客番の北里有紀さん

里山と共にある「半農半宿」の宿

300年以上の歴史の中で、御客屋がずっと大事にしているものは、この土地ならではの「風土」「風習」「風味」の3つ。それを物語るのが「半農半宿」です。田畑を耕し、里山を手入れしながら温泉宿を営むスタイルを創業当時から続けています。

自家農園では近年、農薬や化学肥料に頼らず良い作物を育てられるように、土づくりにも注力しているそうです。現在、田畑や山林で収穫できる野菜や米、山菜は約60種類を超え、新鮮なまま、もしくは保存食として提供しているといいます。

取材日に収穫された野菜

料理人は収穫したものをまず一口食し、食材をもとに日々のメニューの組み立てを行っているのだとか。連泊客には毎日メニューを変える、ヴィーガンの宿泊客にも要望に応じながらメニューを考えるなど、一人ひとりに寄り添った対応もしており、それが結果として「体だけではなく心も満たされる」と評され、多くのリピーターを生んでいます。

北里さん 半農半宿というスタイルはとても手間がかかり、大変なことも多いです。でも、経済性や効率性を追い求めるのではなく、心を込めてこの土地にいらっしゃるお客様をおもてなしする。これはこの地で暮らす私たちが健康で幸せであるためにも果たしていけないといけません。そして、今に満足せず、私たちの理念を引き継ぐであろう次世代も幸せだと感じるような循環をつくっていかないといけない。そう感じています。

従業員の中には80歳のメンバーもおり、若いメンバーも多くの知恵や技術を教わったという。写真はそのメンバーが作った梅干し

さらに御客屋の特徴の一つが「まかない」です。美味しいものをまずは自分たちがいただく。そこから素材の美味しさを知り、心身ともに整え、質の高いサービスへ繋げていこうとしているのだとか。

そのほかにも社員寮を完備し、研修制度を徹底するなど、従業員にも投資をし、関係性や繋がりといった結束力を整え、チームで動けるように尽力しています。

社内研修で提供された料理

「食」を通じて、景観を残していきたい

御客屋を運営する有限会社御客屋旅館は、宿泊部門・飲食部門・農業部門の3部門に分かれており、2部門以上で働く従業員が18名在籍していることが特徴として挙げられます。部門を横断するからこそ、広い視点で現場に臨むことができるといいます。たとえば、ある従業員は農業部門に所属しながら、将来を見据えて調理や接客の業務にもあたっているそうです。

飲食部門では、御客屋の姉妹店であるあか牛料理専門店「わろく屋」と、自家栽培した食材を使ったの料理を提供する「予祝」(よしゅく)を運営しています。

御客屋ではどうして「食」を大事にしながら事業を展開していくのか。今回「里山料理人」を募集する背景も含め、教えてくれました。

北里さん ここ数年、旅館業や飲食業を続ける意味は何なのか考えてきました。その中でふと原点に戻ると、私が一番好きな「調理場」に辿り着いたんです。

料理人は現代の侍だと思っています。侍は元々世の中を良くするために刀を振るっていました。料理人は食べている人を幸せにするために包丁という刀を振るっています。誰かを幸せにしたいという気持ちは共通しているんです。

黒川温泉はありがたいことに世界中からお客様がいらっしゃるエリアになっています。それは、ここには「日本らしさ」や「黒川温泉らしさ」が残っているからだと思います。私たちは「食」を通じてそうした景観を残していきたいという想いがあります。

自社で提供しているメニューは地域の旬の食材を使っており、調味料も含め、すべて手づくりです。それらは一つひとつ手間暇がかかり、現在の従業員だけで提供するには限界があります。だからこそ、一緒に挑戦し続ける仲間を募集することにしました。

わろく屋(1F部分)と予祝(2F部分) の外観

「わろく屋」ではあか牛まぶし膳(3,800円)が人気となっている

「働く」「暮らす」「生きる」が一体となる里山料理人とは?

今回募集する「里山料理人」は、経験不問。里山で農業に従事しつつ、少しずつ調理技術を習得し、接客もこなしていきます。

里山料理人のことをより深く知るために、料理人として長年御客屋で働いている2人にお話を聞きました。

一人目は佐藤信弘(さとう・のぶひろ)さん。10年以上前に料理人として御客屋で働き始め、現在は総料理長として調理場の指揮や人材育成などにあたっています。

御客屋で働き始めて最初に驚いたのは、調味料など含め全て手づくりのものを使っていたことだそうです。そこから佐藤さん自身、黒川の食材だからこそ、御客屋だからこそ出せる味を試行錯誤してきたのだといいます。

暮らしの中では地域の人たちとの交流も増え、そこから得た情報や知識をいかし、メニューをつくっているのだとか。「働く」「暮らす」「生きる」が一体になる日々が居心地よく、「自身だけではなく、家族の幸せにもつながっている」と嬉しそうに話します。

佐藤さん 一番力を入れているのは素材そのものの味をいかすこと。特に自分たちで育てた野菜を使う前菜は、一品目から楽しんでいただけるように試行錯誤しています。10年以上かけて、少しずつですが御客屋の提供する食を理解してくださるお客様も増えてきています。恵みある里山の食材をいかし、お客様に喜んでいただけることもですが、日々の暮らしのなかで美味しいものを食べられることは本当に幸せです。

里山料理人は、「食」と「自然」に興味がある人にとってはやりがいのある仕事だと思います。300年以上つないできた御客屋の想いを引き継いでくださる方に来ていただけると嬉しいです。

総料理長 佐藤信弘さん(画像:御客屋旅館ご提供)

2人目は料理人として働いている畠山真一(はたけやま・しんいち)さん。大学時代に御客屋でアルバイト(調理補助)をしたことがきっかけで、料理人に対する想いが芽生え、そのまま就職し今に至っています。最初は接客から従事し、その後料理人になったそうです。

畠山さんは野菜を使用する際、必ず生で一口食べてからその日の調理法を考えているといいます。「この野菜はこうすればさらに美味しくなるのでは?」と考え、実際に美味しいメニューができた瞬間が一番やりがいを感じるのだとか。数年前には米粉を使ったクッキーの商品開発にも携わった経験もあり、今後は里山の野菜をいかしたデザートづくりをしたいと意気込んでいます。

畠山さん 海鮮類や肉類に比べて、里山で育った食材の価値をお客様に伝えるのは難しいです。だからこそ「御客屋の菜食料理なら食べられるよ」「こんなに美味しい野菜は食べたことがない」といったお客様の言葉をいただくと嬉しい気持ちになります。

私自身、就職するまで料理人としての経験はありませんでした。でも、美味しさを探究する気持ちがあったからこそ今まで楽しく続けられてきたんだと思います。

幼い頃から食べることが好きで、夏場に野菜を川で冷やして食べた経験は一つの原体験としてずっと心の中に残っています。御客屋で働いてからは黒川の恵みが体に染み付いたのか、「この土地の食材が一番美味しい」と心の底から思うようになりました。

料理人 畠山真一さん

自然の恵みを探究するからこそ生まれる、里山のおもてなし

続いて自社で管理する里山へ案内してもらいました。まず訪れたのは葉物や薬味系の植物を栽培している畑。本格的に整備を始めたのは2年前からだそう。それまでは整備がなかなか進まず、荒地になっていたといいます。現在はアルバイトで働いている従業員を中心に管理しているのだとか。周辺の土地では竹林整備や堆肥場、ジビエ加工などの計画も進めているそうです。

北里さん 地域の先輩たちから里山で生きていく上での知恵や技術を教わりながら里山の整備や管理をしています。たとえば、ジビエ。現状として、猟師さんが仕留めたお肉は一頭まるごと売られ、その後不要な部位は捨てられてしまう傾向があります。

しかし、一頭丸ごと使い切る手法を教わることで、無駄な部分なんてなく、食材一つひとつが自然の恵みだということを料理人たちが学ぶことができ、刺激になっています。ジビエになる動物は山で育ち、山の中にある穀物などを食べ、その穀物は山の土から育っています。その循環から生まれた里山の恵みを提供することは、黒川温泉にしかないおもてなしを創出することにも繋がるんです。

葉物や薬味となる植物を栽培している畑

原木しいたけを栽培しているエリア。今後は桜の原木を使ってなめこの栽培する計画を進めているそう

次に訪れたのは自社で管理する田んぼ。水の管理や草刈り、獣害対策など手間がかかることが多く、自分たちにとってベストな手法を模索している段階だといいます。特に大変なのが井手と呼ばれる用水路の管理。水が詰まらないように葉や枝などを取り除いたり、他の農家と水の供給量を調整したりと、一つひとつの作業に手間がかかります。時には台風といった災害対策もしないといけません。

自然が相手なので正解はない。農家によってやり方はそれぞれ。それでも農業部門にいる従業員はその状況を楽しむメンバーばかりで、働いているうちに自然と生きる力も身についてきたと感じているそうです。

北里さん 御客屋での働き方も、いろんなかたちがあっていい。ここで働いていると、本当に正解なんてないと感じる日々です。摘んできた野菜をお客様に見ていただいてコミュニケーションのきっかけを生むなど、ただメニューを提供するだけではないかたちのおもてなしを、料理人たちと一緒に試行錯誤しているところです。

また、里山の整備も進んできたため、お客様を実際に里山へご案内する体験ツアーも考えています。温泉街だけではなく、自然のなかでも時間を過ごし、そこで目にした食材を実際にいただくというのは、新しい楽しみ方なのではないかと思ってます。

ここでは「働く」と「暮らす」と「生きる」の境目はなくて、私はそれが楽しいと感じています。黒川ではお肉を食べたかったら猟師だったり、お米を食べたければ農家だったり、知恵や技術を身に付けることができます。人間って、本来は自然をベースに暮らしていたはず。それが便利な時代になるにつれ、自然との繋がりが薄れつつあります。そういう自然との繋がりの感覚を思い出させてくれるのも、御客屋で働く魅力の一つかもしれません。

自社で管理している田んぼ

自社のビニールハウスで管理している籾殻。土づくりの肥料として活用している

食を愛し、里山を楽しむマインドを持つ

北里さんの話を聞きながら、黒川の地域資源や人に対する尊敬の念、ともに働く従業員に対する愛情、そして、次世代を想う心……それらがあるからこそ、黒川にしかない価値を御客屋として提供し続けてられているんだと感じました。

そんな御客屋を引っ張る北里さんにとってどんな瞬間が幸せなのか、聞いてみました。

北里さん 御客屋が家業だった私にとって、幼い頃から宿が自宅のようなものでしたし、常に家族や従業員、お客様が近くにいる環境で育ってきました。そして今は経営者として従業員と一緒に学びを深め、挑戦する日々が続いています。その中でかたちにしたものがお客様に喜んでもらえたり、未来を自分事として考えられる仲間と語り合い、アクションできたりするような環境になってきたことが幸せに感じます。

もちろん全てがうまくいくとは限りません。働いている従業員は世代も育ってきた環境も違います。だから価値観やコミュニケーションにズレが生じることだってあります。そんな状況でさえも楽しみ、一人ひとりと向き合う時間を大事にしています。

最後に、今回の里山料理人の募集に込めた思いを教えてくれました。

北里さん 何より大事なのは、食べることが純粋に好きなことです。美味しさを探究し、里山での時間を面白がるマインドさえあれば大丈夫。調理の技術は少しずつ覚えてもらえたら問題ありません。

一緒に農業をして汗をかきながら知識も増やしていき、その体感したことを接客でお客様にありのまま伝えていけば、御客屋として大事にしていることが自然と身について、「働く」「暮らす」「生きる」が一体となった時間を心から楽しめると思います。

先人たちが継承してきたものに新しい価値を加えれば、できることはたくさんある。だから、まずは手の届く世界に目を向け、黒川の風土を未来へ繋げていこう。そんなマインドで日々挑戦を続けているのが御客屋です。そこでは「働く」が「暮らす」「生きる」と一体となることで、黒川温泉でしか体験できないサービスを提供しています。

歴史ある宿で料理人のキャリアをスタートし、里山を舞台に技術や知恵を習得していくことができる環境はなかなかないのではないでしょうか。気になった方は、一度黒川温泉を訪れてみてください。御客屋との出会いが、あなたにとっての新しい「働く」「暮らす」「生きる」に繋がることを心から願っています。

(撮影:柚上顕次郎)
(編集:山中散歩)

– INFORMATION –

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