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目標は、水不足のない未来を実現すること。ウィーンの大学生が発明した、サイクリング中に空気から水をつくりだす装置「Fontus」

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

9月に入ってすっかり秋になりましたが、過ごしやすくなったのでサイクリングやランニングに励んでいる方も多いのではないでしょうか?

どんな季節であっても、スポーツをするときに大事なのは、こまめな水分補給。でも山奥や田舎でのトレーニングなど、外出中に飲み水が必要になったとき、周りに自動販売機やコンビニエンスストアが見つからず、飲み水の確保に苦労した経験がある方もいるのでは?

そこで今回ご紹介するのは、自転車に装着できる「Fontus」という装置。なんとこの装置、自転車に取り付けて走行するだけで、水をつくりだしてくれるというのです!
 
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「Fontus」をとりつけた自転車。コンパクトでシンプル!

「Fontus」を発明したのは、ウィーンの大学で工業デザインを学ぶ、Kristof Retezarさん(以下、クリストフさん)。「Fontus」を自転車に取り付ければ、走行しているだけで飲み水を手に入れることができるようになります。その気になる「Fontus」の仕組み。一体、どんな構造になっているのでしょうか。

まず、「Fontus」は装置の後ろ側にある吸気口から、サイクリング中に生じる風を内部にとりこみ、装置上部にある冷却装置で急激に冷やすことで、空気中の水蒸気を結露させ、水をとりだします。
 
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「Fontus」の断面図。写真右側から空気を取り入れ、上部で冷却して水をつくりだしたあと、左側から排気する。

こうして取り出された水が、細いチューブと不純物を取り除くフィルターを通って、装置下部に設置したペットボトルの中にたまり、飲み水となるのです。

冷却装置は、「ペルチェ素子」というクーラーなどに使われるものと同じ仕組みを利用し、必要なエネルギーはソーラーパネルによって確保しているのだそう。
 
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ペットボトルをとりつける様子。500mlのペットボトルであれば、どのペットボトルでも使えるそう。

「Fontus」の適切な稼働条件は、気温20℃以上、湿度50%以上。気象条件がそろえば、1時間で500mlもの水をつくり出せるのだとか。そして高温多湿であればあるほど、さらに早く多くの水をとりだすことができるといいます。
 
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赤やオレンジの部分が、「Fontus」を使用できる気象条件を備えた地域。もちろん、日本も入っています!

現時点で「Fontus」は不純物を取り除くフィルターは備えているものの、水を精製する装置は付属していないため、飲み水として利用できるのは、残念ながら空気が汚染されていない地方などに限られています。

しかし、これからさらに開発を進め、市販をスタートすることには、都市部でも安全な飲み水がつくれるように目指しているそう。

そんな「Fontus」、価格が気になりますが、現在の開発コストは日本円で1つあたり、3000円から5000円程度。実用性だけでなく、手軽で、環境にやさしいのも「Fontus」の魅力です。

究極の目標は、水不足のない未来をつくること

自転車に取り付ける装置ということで、主に自転車愛好家のなかで注目を浴びている「Fontus」。実はもともと、クリストフさんの「水不足で苦しむ人々に、きれいな飲み水を供給したい」という思いから生まれたものでした。

クリストフさんは、自身の目標をこう語ります。

国連の調査によると、世界の40か国以上で、およそ20億の人々が水不足に苦しんでいます。また、そのうち7億人は、安全な水を確保できないがために、生命の危機にすらあるといわれています。

僕は、そのような人々が、安全できれいな水を手に入れる一手段をつくりだすことができればと思っています。

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開発者のクリストフさん

体内の水分がたった2%ほど失われただけでも、運動能力が低下すると言われるほど、私たちには欠かせない水。私たちの住む日本は、雨と山の恵みで、水道の蛇口をひねれば安全な水が手に入るため、水のありがたさに気付いている人は少ないかもしれません。

みなさんもこれを機に、水の大切さを心にとめてみませんか?

[via gearjunkie, isuuu, Huffington Post, Treehugger]

(Text: 水野淳美)

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