私たちの暮らしは情報技術の発達によって、日々やり取りされるメッセージ量が格段に増えています。インターネットさえあればどこでも連絡が取れ、世界中が一つになったかのように感じることもあるかもしれません。しかし、世界に目を向けてみると、紛争や国際情勢などの問題で人々が分けられ、お互いが近くに住んでるのに”遠い存在”となっている場所もあるのです。
例えばインドとパキスタン。この二カ国のあいだでは50年以上も政治的な対立が続いており、インドの北西部にあるカシミール地方は世界で最も危険な紛争地帯の一つと言われています。市民間の意識間にも大きな溝があり、いわば”近くて遠い国”なのです。
そこで、インドとパキスタンの対立を乗り越え、人々の心をつなげるためにコカ・コーラ社が取り組んだあるキャンペーンが、いま世界中で話題になっています。
まずはこちらの動画をご覧下さい。
「Open Happiness」というキャンペーンで使われたのは「Small World Machine」と名付けられた2台の自動販売機。インドとパキスタンのショッピングモールにそれぞれ1つずつ設置され、タッチスクリーンとカメラを通じてリアルタイムで二国間の人々を結びつけます。
インド北部の大都市デリーのショッピングモールに設置された「Small World Machine」
そこではお互いの様子を見れるだけではなく、スクリーンの向こう側の相手とペアとなって取り組む簡単なリクエストが出されます。ダンスをしたり、お互いの写真を撮りあったり、一緒にハートマークを書いたり…無事クリアすると、無料でコカ・コーラが手に入るという仕組みです!
画面を通して手を振りあったり
一緒に平和のシンボルであるピースマークを書いたり
画面の向こう側と乾杯!なんてことも
小さな子どもから…
お年寄りまで、年代を超え国境を越えて人々をつなぎます
インターネットを通じて”笑顔”を生み出し、人々の心をつないだ「Small World Machine」。生まれてからずっとインドに暮らすある男性は、このスクリーンを通して初めてパキスタンの人々がどんな服を着ているのか知ることができたそうです。
また、このようなコメントもありました。
インド人のことを全く知らない私が、同じく私たちのことをまったく知らないであろうインド人とつながれたことはすばらしい経験だった。(パキスタン人のコメント)
お互いを見ることができ、もはやパキスタン人は私たちにとって”正体不明”な存在ではなくなった。このような変化が、国をつなげることにつながるんだ。(インド人のコメント)
コカ・コーラ社は3日間に及ぶ「Open Happiness」キャンペーンを通じて、約1万本のコーラを無料で配布ました。
この動画の始めに、こんな文章が出てきます。
“A moment of happiness has the power to bring the world closer tother.”
(幸せを分かち合う瞬間は、世界を近づける力をもつ)
今回の「Small World Machine」に使われたタッチスクリーンやカメラは、特別なテクノロジーではありません。けれど、”幸せを分かち合う瞬間を生み出すためのテクノロジー”という視点からテクノロジーの使い方、活かし方を考えてみると、それは大きな変化につながっていくということを今回のキャンペーンは教えてくれました。
私たちの身の回りでも、視点を少し変えるだけで問題解決につながるような”あったかテクノロジー”が見つかるかもしれませんね。
(Text: 阿部星渚)
[via Co.CREATE, Coca-Cola Jpurney,Wikipedia,The Inspiration Room]