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studio-L × green bird × 日本橋フレンド × ヤマハでトークセッションを開催!人と人がつながるまちづくりの仕組み、みんなで共有しました

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特集「音楽の街づくりプロジェクト」は、音楽の力を通じてコミュニティの未来をつくるプロジェクトを紹介していく、ヤマハミュージックジャパンとの共同企画です。

みなさんは、自分の暮らす地域のまちづくりに参加していますか?ここ数年、地域コミュニティの大切さが注目されています。でも、「何かしてみたいけど、どうすればいいだろう」と思っている人も多いのではないでしょうか。

楽器メーカーのヤマハは、人と人を自然とつなげる力のある“音楽”をまちづくりに活かす「音楽の街づくりプロジェクト(おとまち)」を事業として行ってきました。

女性だけのビッグバンド立ち上げをサポートしたり、楽器を持っていけば初心者でも気軽にアンサンブルに参加できるイベントを企画したりと、さまざまな角度から音楽でまちを盛り上げる支援をしています。グリーンズでも、この取り組みを連載形式で紹介し、音楽によるまちづくりの可能性を探ってきました。

そこから浮かび上がってきたのは、一口にまちづくりといっても、企業や行政、市民など様々な主体があり、それに合わせて人をつなげる仕掛けもたくさんあるのではないか?ということです。

そこで、ヤマハが今まで連携できていなかった、異なる分野で活躍する専門家をお呼びして、生活者が主役になるまちづくりを考える公開イベント「ヤマハと“●▲■×まちづくり”の可能性を考えよう!」を4月18日に開催しました。

ゲストは、岡崎エミさん(studio-L)、川路武さん(三井不動産レジデンシャル/日本橋フレンド)、横尾俊成さん(港区議/グリーンバード)という豪華な顔ぶれ。当日はどんな事例が紹介され、どんな意見交換がなされたのか…その一端をご紹介します。

“学び”ではなく“実践”につながる場

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会場は、目黒の「Hub Tokyo」。平日の日中にも関わらず、40名近くの参加がありました。開催日時をこの時間に設定したのは、本気でまちづくりをしている人に、仕事として来てもらいたかったから。新たな活動を始めるときのパートナーに出会ってほしいという狙いがありました。

そのため、まずは参加者全員の自己紹介からスタート。行政の方、イベンター、音楽家、まちづくりを行う団体に勤める方など、参加者の背景は多種多様です。みんなが楽しそうに耳を傾けていて、良い時間になりそうな雰囲気が漂っていました。

場が温まったところで、ゲスト3人のプレゼンタイムへ。最初の登壇者は、studio-Lで働く岡崎エミさんです。

地域の課題は、地域の人が「好きなこと」で解決!

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studio-L」は、地域のブランディングや活性化といったコミュニティデザインを行う団体です。岡崎さんは2009年にstudio-Lに参画し、まちづくりの支援や研修プログラムの開発等を行ってきました。

studio-Lのコミュニティデザインは、地域の課題を、地域の人が解決するためのコミュニティチームをつくることから始まります。地域によって課題も住民の関心も異なるので、ほかの地域で成功したことを形だけ持っていってもうまくいきません。だからこそ、住民たちに「どんなまちにしたいか?」を考えてもらうのです。

たとえば群馬県富岡町では、観光に力を入れる市からの依頼を受け、100名を超える地域住民と一緒に、富岡の魅力や課題を考えるワークショップを数回に渡って行い、チームに分かれてアイディアを実行しました。
 
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そのうちのひとつが、少し入りづらい雰囲気を醸し出している地元のスナック街を飲み歩く「酔いどれウォーク」です。メンバーがみんなお酒好きだったことから企画しましたが、開催してみるとこれが大好評。若者がたくさん集まり盛り上がっている様子を見て、スナック街の店主たちが「数十年前の富岡を見ているようだ」と感動していたそう。すぐに第2回の開催が決まったといいます。
 

「オー・トミオカ」の動画。手持ちカメラなので、少々ブレています

また、別のチームでは、まちなかを歩きながら歌う企画を実施しました。陽気に「オー・シャンゼリゼ」ならぬ「オー・トミオカ」を歌う住民を見て観光客もつられて笑顔に。住民も観光客も楽しそうにしている姿に、普段はまちづくりに関心がない人も「すごくよかった」と言ってくれたそうです。

岡崎さん 地域の人が興味を持つものだったら、切り口はお酒でも音楽でも、本当になんでもいいんですよ。ちょっとした工夫で地域の人は活き活きと活動しはじめます。そのきっかけを与えるのが私の仕事ですね。

地域の課題には、地域の人の「好きなこと」でアプローチするのが、一番の近道なのかもしれませんね。

そのまちで“働く人”も、まちづくりに参加したい

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続いて、川路武さんのプレゼンです。川路さんは毎月第3金曜の朝、日本橋で働く人が朝ごはんを食べながら交流する「アサゲ・ニホンバシ」というイベントを定期的に開催しています。

日本橋で前の100年を築いてきた老舗企業の社長さんや歴史ある店の旦那さんを「マエヒャク」、これからの日本橋をつくっていくベンチャー企業や気鋭のクリエイターを「アトヒャク」と名付けてゲストに呼び、地域で働く人々と一緒に話を聞くというイベントで、参加者は毎回100人を超えるそうです。
 
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このイベントが始まったきっかけは、川路さんが「会社のある日本橋には月曜から金曜まで通っていて家よりも多くの時間を過ごしているのに、よく知らないな」と素朴な疑問を抱いたことにあります。「日本橋で働く人を対象としたイベントを行おう」と、日本橋フレンドという団体を立ち上げて実施しました。

2014年4月現在までに26回開催し、52人がゲストとして登壇しています。参加者は、日本橋の多様な魅力を知ると同時に、そこで出会う人との交流も楽しんでいるそうです。
 
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また、今年4月には、「TOKYO24区 日本橋」というプロジェクトもはじめました。これは、今までまちづくりの主体と考えられてこなかった会社員や店舗スタッフ等、その地域で働く人々を「24区民」とみなしてスポットを当てるというもの。日本橋で働く人を45人ピックアップしておすすめのお店を教えてもらい、顔写真と情報をカードにして配布するというユニークな試みです。

川路さん “顔でつながる”のが面白いなと思ったんです。「あの人がいるからあの寿司屋に行く」ってなったら、東京でも珍しい、面白いまちになると思います。

そのまちに“暮らす人”だけではなく、“働く人”もまちづくりに巻きこむというのは、ありそうでなかった視点です。多様な人が参加することで、より魅力的なまちになっていきそうですね。

誰でも気軽に参加できる“ゴミ拾い”はまちに関わる入り口になる

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最後のゲストは、NPO法人「green bird」の代表を務める横尾俊成さんです。green birdは、楽しくまちの掃除をする団体。ゴミ問題やまちの景観になんて一見興味がなさそうな若者達がお揃いのかっこいいユニフォームを着て楽しそうにゴミを拾っている様子は、道行く人の目を引きます。

横尾さん 「2:6:2の法則」というのがあります。社会貢献活動に関するアンケートをとると、2割は賛成の人、2割は否定的な人、そして残りの6割は「機会があれば参加したい」と考える人。その6割をどう掴むかをいつも考えています。

みなさんのようにまちづくりに熱心な人って、全体の2割位なんですよ。自分がマイノリティだということを意識して、自分とは異質な人、コンビニでうんこ座りしているようなお兄ちゃんが…いやしてなくてもいいんですけど(笑)彼らがどうしたら参加してくれるかを考えることが大事だと思います。

そうして工夫を凝らした結果、原宿表参道で始まったgreen birdの活動はほかの地域にも広がり、現在では国内外に55のチームができました。どのチームにもリーダーがいて、初めて参加した人やひとりでいる人に話しかけ、場を盛り上げています。
 
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ただ、そこから派生してコミュニティデザインにまで手を伸ばすことは考えていないそう。なぜなら、それらを得意とする団体はほかにたくさんあるから。green birdはゴミ拾いという、まちと関わる最初のきっかけを提示することに専念しようという考えです。

「老若男女誰でも気軽に参加できるという点で、音楽とゴミ拾いは似ていると思うんです」と言いながら、横尾さんは次の動画を見せてくれました。
 

ガーナの孤児院の子どもたちが発案したgreen birdの歌とダンスです。とても楽しそうで、一緒に歌いながらゴミ拾いしてみたくなりませんか?

横尾さん 最近の悩みは、いかにもボランティアをしそうな人の割合が高くなってきたことです。それだと普通でつまらないんですよ。変な人とか、歌舞伎町のキャバ嬢がゴミを拾っているから「あいつら何やってるんだ」と面白がってもらえる。だから、僕らはもっとロックでいたいし、常に面白いことを仕掛けていきたい。

それには音楽と相性がいいんじゃないかと思っていて…たとえば、全国各地で、「グリーンバードフェス」を開きたいと考えています。

横尾さんがそう言うと、会場からは「おおっ」と歓声があがりました。実現するのが楽しみですね。

社会課題の解決が企業の利益とイコールになる事業

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ゲストの話が終った後は、おとまちリーダーの佐藤雅樹さんから、改めておとまちの成り立ちやプロジェクトの概要、大切にしていることを共有していただきました。

佐藤さん greenz.jpでも既にご紹介していただきましたが、おとまちは現在、ハード面からのまちづくりを担うディベロッパーやリテイリングなどの企業と協働しています。

ヤマハが今までに築いてきたノウハウを活かして“音楽”をツールとしたソフト面からのまちづくりを提案する取り組みです。これは企業の本業を活かした新しいCSRの形をつくりあげていくことにつながるのではないかと思っています。

おとまちを2009年に立ち上げてから、さまざまな企業やNPOなどで社会課題に対して“自分ごと”として思いを持って行動を起こしている方々と出会ってきました。しかし、やはりまだ日本企業の風潮としてはコミュニティ・デザインなどの“目に見えない価値”に対する投資を積極的に行うという段階までは至っていない、過渡期であるように感じます。

佐藤さんの「企業が一市民として、“世の中にこういうことがあればいいよね”ということに取り組み、それが事業になっていけば素晴らしい社会的資産になる」という言葉に、多くの参加者がうんうんと頷いていました。

社会課題の解決が会社の利益につながる事業を模索している人にとっても、「おとまち」の取り組みは参考となる事例なのでしょうね。
 
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でも、「話を聞く」ことと「実践する」ことの間には大きな隔たりがあります。そこで、後半はフィッシュボウル形式をとり、実践しているからこそ直面する悩みや課題、解決のためのヒントを参加者全員で共有しあいました。

「コミュニティの継続性」「参加者の役割づくり」「お金にならない文化事業をどう継続するか」「お金を上手に使うための提案力」「みんなを巻き込む仕組み」…わずか40分の間にさまざまなテーマが話題にあがり、場は大いに盛り上がりました。

交流会でもその熱は引き継がれ、会場のあちこちで議論のつづきや事業の相談が行われていた様子。ここで得たヒントがブレイクスルーとなったり、今回出会った人同士で何か新たなプロジェクトが始まったりしたら、面白いですね。
 
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イベントを振り返り、佐藤さんはこんな風に話していました。

佐藤さん 今回のパネリストの皆さんとは、今後いろいろな側面でご一緒していきたいと思いました。コミュニティづくりにおいては、音楽だけが鉄板のツールだとは考えていません。人と人とがつながるには様々なきっかけがあり、それがメディアとなってコミュニティづくりやまちづくりに貢献をしていくと思いますし、今回はその相乗効果に改めて気づくことができました。

地域の人と人をつなげるのに「これが正解」といったものはなく、切り口は無限にあること。実践すると課題に直面するかもしれないけど、知恵を出し合えば解決の糸口は見つかること。そして、そうやって地域の人が活き活きと動き出したまちは、とても魅力的だということ…。そんなことに改めて気づかされたイベントだったと思います。

さあ、あなたは地域に対して、どんな一歩を踏み出しますか?

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