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目指すのは、誰もが希望を持てる社会。NPO支える中間支援から“社会のモデルチェンジ”を支援するNPOサポートセンターの挑戦 #求人

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ときに希望を抱くことさえも難しいと感じる時代に、より良い社会、希望が持てる社会に一歩一歩近づけようと、実直に、戦略的に、ぶれない志と情熱を持ち、日々仕事に向き合う人たちに出会いました。

それが、NPOサポートセンターのみなさんです。

「特定非営利活動法人NPOサポートセンター(以下、NPOサポートセンター)」は、全国のNPOに伴走しながら、事業や組織の運営をサポートする中間支援組織です。1993年に誕生し、国内のNPOの黎明期から、その活動をあと押ししてきました。

「どんな課題も放置されず、解決への希望が持てる社会」

NPOサポートセンターは中間支援を通じて、そんな社会を目指しています。

この30年の間に、日本はもとより世界も大きく変化しました。
社会が変われば、それに対応するNPOも変わり、中間支援組織がすべきことも変わります。そして、その変化のスピードはどんどん速くなってきています。

NPOサポートセンターはそうした変化に対応し、ときに困難に直面しながらも、新たな事業を生み出し、しなやかな組織づくりに取り組んできました。

より良い社会を独自の立ち位置から築こうとするNPOが社会に不可欠な存在なら、中間支援組織はその社会基盤を支える縁の下の力持ち。

そんなNPOサポートセンターの取り組み、変容する社会で求められる中間支援組織やNPOの役割について、代表理事の松本祐一(まつもと・ゆういち)さん、事務局長の小堀悠(こぼり・ゆう)さん、スタッフの槇歩美(まき・あゆみ)さんにお話を聞きました。

NPOが直面する課題の最前線に向き合う

NPOサポートセンターのオフィスは、東京・港区の大通りからほど近いビルの4階にあります。フロアは、NPOサポートセンターが運営するNPO向けのシェアオフィスとして複数の団体が利用しており、NPOサポートセンターの部屋はその一番奥。現在、フルタイムのスタッフが12人、非常勤のスタッフを合わせて18人が働いています。

日本で初めてとなる民間発のNPOの中間支援組織、NPOサポートセンターが設立された1993年は、NPO法人制度がまだなかった時代です。制度が施行された1998年にまだ存在しなかった認証法人数は、2024年時点で約4万9,000まで増えています。(参照 「認証・認定数の遷移」内閣府NPOホームページ

創設時から掲げるミッションは、「多様な市民活動の発展に向けた基盤整備を推進し、NPOによる新しい社会システムの構築をめざす」こと。

2019年に設立者の山岸秀雄(やまぎし・ひでお)さんから代表理事を引き継いだ松本さん(多摩大学経営情報学部教授)は、中間支援についてこう説明します。

「国境なき医師団」の日本事務局創設当初に学生ボランティアとして関わったことで、現場で動くプレーヤーだけでなく、裏方である事務局の方にも熱いドラマがあることを肌で感じたという松本さん

松本さん 中間支援は、「中間」という言葉の通り、市民やNPO、企業、行政等の間に立って活動を支援すること。NPOを市民や企業、行政とつなぎ、市民活動やソーシャルセクター全体がさらに大きく、より良くなっていくために何ができるかを考え、さまざまな取り組みをしています。そのなかでも、私たちは特にNPOの経営や事業を進化させる支援を中心に行っています。

松本さんも学生時代に、国際NGO「国境なき医師団」の日本事務局に携わった経験があります。その際、医療従事者が現地で活動できるよう支援する「裏方」の仕事の重要性に気づいたと振り返ります。

松本さん 社会全体を見ても、目の前の困っている人を直接助けたい人は多いと思います。NPOサポートセンターのような中間支援組織は、地味で目立たない部分がありますが、そういう人たちがいないと、最終的にソーシャルセクター全体が広がっていきません。だからこそ、裏方として下支えをしたいという思いが非常に強いです。

中間支援と一口に言っても、さまざまな段階にいる団体への支援があります。なかでも、NPOサポートセンターが担うのは、活動や事業がすでに形になり、まわっている事業や組織が、より効率的に、大きな成果を出せるようにする運営支援です。

松本さん 「ITを活用する」とか「マーケティングや戦略を導入する」といったように、組織・事業の運営で必要な新しい考え方や仕組みを普及、啓発していくことが多いですね。

支援の方法は大きく3つあるといいます。

NPOサポートセンターが行う支援の3つの柱(提供:NPOサポートセンター)

NPOのモデル(メンタルモデルとビジネスモデル)チェンジ支援
戦略づくりなどのコンサルティング、事務局運営を効率化するバックオフィスサポート、トレーニングプログラムの提供。

協創のプラットフォームづくり支援
NPOをはじめとする社会課題の解決に取り組むさまざまな組織がつながり、協創する仕組みづくり。

NPO支援のマーケットづくり
NPOを支援する企業や個人、ツール・サービスが集まり、つながる場(マーケット)をつくる。

NPOサポートセンターはこの3つを柱としながら、NPOの中間支援の最前線に立ち、NPOが新たに直面する課題の解決や挑戦を支援することに力を入れています。

小堀さん NPOを取り巻く事業環境も5年ぐらい経つと状況が結構変わります。私たちが取り組んできた支援事業であっても、その間に他の中間支援組織や企業が対応できるようになっていれば、そちらにお任せすることもあります。そうすることで、私たちは次の新しい支援事業へシフトしていこうという考えです。

NPOサポートセンターに入職して15年目という小堀さんは、常務理事を務めるほか、事務局長として現場業務をマネジメントする立場にあります

サポートしているNPOは首都圏の団体を中心に、近年は北海道から沖縄、さらに離島にまで全国に広がっているそうです。各NPOが取り組む分野も、国際協力、教育、環境問題、人権、福祉、まちづくり、文化・芸術など、多岐にわたります。

自立した経営が、NPOを支える盤石な基盤に

NPOサポートセンターの事業の内訳は、自主事業(研修事業やバックオフィス支援などのサービスやコンサルティングなど)が全体の約7割を占めます。のこりの約3割は行政からの委託事業、政策づくりの支援などです。

しかし、今のような事業内容に至るには、さまざまな試行錯誤がありました。

もともとNPOサポートセンターの事業は行政からの委託事業が約9割を占めていました。特に、小堀さんが入職した2009年以降、NPOサポートセンターの運営はそれまでの行政からの受託事業に依存した運営が徐々に行きづまり、2013年度にはついに赤字になったといいます。苦境のなか、小堀さんは専門知識や経験をいかし、セミナーやコンサル事業など自主事業の割合を増やそうと力を尽くします。

小堀さん 危機的な状態だったので、逆に新しいことを加速させようという雰囲気があり、チャレンジすることができました。

中間支援を持続可能な事業体にする。それは小堀さんが思い描いていた中間支援の形でもありました。

小堀さん 海外では公的な機関が中間支援組織に積極的に資金を投入しています。個々の団体を支援するよりも中間支援組織を支援したほうが効果的だとわかっているからです。しかし、日本の中間支援組織が置かれている状況は少し特殊で、公的な支援が受けにくいとされています。

そんななか、まずは私たち自身が持続可能な状態でなければ、いろいろな団体さんをご支援していくことができません。組織の継続性をきちっと担保しながら、なおかつ必要とされることに確実に取り組んでいくという、両にらみで事業をつくりたいと思いました。

こうして、2010年頃から、当時はまだ理事だった松本さんや小堀さんなどが中心となり、事業構造の転換を少しずつ進めていきました。

移行期間を経て、松本さんが代表理事に就任したのが2019年。国内でもSDGsが広く浸透しはじめ、企業が事業を通じた社会課題の解決を中長期目標に反映するようになった時期でした。

NPOも中間支援組織の役割も新たな局面に差しかかるなか、NPOサポートセンターではこれまでのビジョンを捉え直し、翌年に「VISION2020」を発表。自主事業を軸とした中間支援を進めることを打ち出しました。

「社会のモデルチェンジを支援する」として「VISION2020」発表時に打ち出したビジョンマップの図(提供:NPOサポートセンター)

“モデルチェンジや協創に取り組むNPOを「事業」という側面から支援し、多様な参加を通じて社会課題を根本的に解決するプラットフォームを構築します。”

NPOサポートセンターは、この「VISION2020」の実践を通して「どんな課題も放置されず、解決への希望が持てる社会」を実現しようとしています。

松本さん 現実的には、社会課題が完全になくなることはないと私たちは思っています。おそらく人間がいる以上は何か問題が起きるでしょうし、ある問題が解決されてもまた違う問題がでてきます。

そうしたなかで、NPOは、行政や企業の支援、社会の関心が行き届かない社会課題にまで目を向け、解決に取り組む、社会においてかけがえのない存在です。

困っている人や苦しんでいる人が「やっぱりそばにNPOがいてくれるおかげで生きていける、希望を持てる、自分たちも何かできる」と思えるような社会が私は必要だと思います。そういう社会を目指して、NPOのためのいろいろな環境づくり、仕組みづくり、サポートをしていきたいです。

話し合いを大切に。みんなで働きやすい職場をつくる

NPOサポートセンターで働くスタッフは、企業や行政機関、NPOで働いた経験のある人たちで、ほとんどがボランティアや前職などでソーシャルセクターの活動を経験しているといいます。

左から、松本さん、小堀さん、槇さん。小堀さんと槇さんはともに学生時代にソーシャルセクターに携わり、一般企業で働いたあとにNPOサポートセンターに入職した経歴の持ち主です

松本さん みんな、良い意味で結構マイペース(笑)。それぞれ興味を持っていることがあり、「こうしたい」、「こう働きたい」、「またはこういうふうにソーシャルセクターに関わりたい」という考えを持っています。

個人的にはそのマイペースさをすごく大事にしたいです。がっつりやりたい人も、ある程度の距離感を持ってやりたい人もいるだろうし。

それに、いろいろなタイプの人がいることで、私たち自身が団体さんと関わる時に「こういう関わり方もあるよね」ということが理解できます。

この言葉に頷くのは、スタッフで入職3年目の槇さん。

大学でソーシャルビジネスを専攻し、知的障がい者の働く場を研究したという槇さん。障がいがある方が当たり前に働ける世の中にするにはどうすればいいか。そう考えるなかで、槇さんは社会課題を解決する組織づくりや事業づくりに興味を持つようになります。

卒業後は、企業で総務や経理、労務などのバックオフィス業務に就き、自動化やWebデータベースを用いた業務改善の仕事に携わりますが、その間も、社会課題の解決への思いは色あせることがなく、働きながら社会教育系のNPOでボランティアをしていたそうです。

槇さん NPOサポートセンターでは、自分の興味や関心、解決したいテーマに、仕事でもプライベートでも関わって、“働く”と“生きる”を分けることなく、良いバランスで働いている人が多いです。

そんな現場を率いるのが小堀さんです。大学生のころに、環境団体やまちづくり団体の立ち上げ・運営に携わった小堀さんは、「組織経営やマネジメントなど、より広いテーマに関わりたい」との思いを持ち続けていたそう。

専門は、NPOのマネジメントや資金調達の支援、システムを活用した業務の改善、支援者データベースの導入・活用。前職では、システムエンジニアとして、企業や組合などの課題をシステムで解決する業務に従事していました。

チームづくりでは、アイデアを自由に考え、提案できる職場環境をつくることを大切にしています。

小堀さん 新しい事業や解決策は、自由に考え、提案をして、まずはやってみようというスタンスです。

新しく入職したスタッフからは「思っていたよりも自分でやっていいことの幅が大きく、信頼して任せてくれることに驚いた」と言われます。

働き方は、それぞれの業務の内容によって異なります。場所を選ばない業務を担当するスタッフはリモートワークの比率が高いといいます。

現在、スタッフは30〜40代が中心で8割が女性。育児中の時短勤務や育休制度など各種制度も備えており、「柔軟で働きやすい職場づくりに努めています」と小堀さん。

小堀さん ルールはありますが、もっとこうだったら働きやすいよねという意見があれば、変えていこうという話をしています。でも、それを誰かに押し付けるのではなく、みんなで考えます。どのようなルールだったらみんなが働きやすいか、全員で話しながら決めるようにしています。

全員で話し合って物事を決めるというのは、NPOサポートセンターの組織文化でもあります。

松本さん 経営陣が勝手に進めないようにしています。「こんなことを今考えているんだよ」とか、「こういうことをやりたいと思っているんだよ」といったことはスタッフと共有をして、意見をもらいます。

理事会にもスタッフにオブザーバーとして出席してもらっています。理事たちが何を考えて、どういうふうに方向性が決まっていくか、計画ができあがっていくのかを見てもらいたいからです。事業計画も、基本的にはスタッフ側でつくったものを理事会に上げていく形をとっています。

信頼してもらうことと、アンテナを張ること。より良い支援をするために

日々、業務を通じてNPOの方々と接するという小堀さんと槇さんのお二人。NPOサポートセンターのスタッフとして重要な心がけとは何かを尋ねました。

小堀さん 「信頼してもらうことがすごく大事です。

私たちが仕事をするNPOの方々は、日々現場や当事者の方に寄り添って問題を解決しようと、一生懸命に活動している方々です。いかに、その方たちから「一緒にやろう」と思ってもらえるか。

それぞれの団体が取り組んでいることに共感し、パートナーや仲間として受け入れてもらえるように、私たち自身が真摯に向き合い、信頼してもらう。そういう意味でのまじめさは大事だと思います。

一方で、実務ではNPOと同じ目線になるのではなく、状況を俯瞰することが必要になるそうです。

小堀さん 相手と完全に一体化してしまうと、課題の解決のために逆にお役に立てなくなってしまいます。現場の視点と、一歩引いた外からの視点の両方を持つことがとても重要です。スタッフはそのあたりの切り替えがうまいかもしれません。

槇さんは、サポートの質を高めるためにも、スタッフとして日々アンテナを張って生活することの重要さを語ります。

槇さん 今その団体さんがどういう状況で、事業としては何に注力しているのか、メルマガに登録したり、SNSでフォローしたりして常に動向をチェックするようにしています。例えば、クラウドファンディングを始めただけでも大きな変化です。活動がニュースで取り上げられれば、NPOへの寄付額が増える場合もあります。

変化があった時に、どういうご支援が必要なのか。団体さんの業務をただ代行するだけでなく、より良い提案ができるように、担当の経理の方やファンドレイジングの方の状況をチェックするようにしています。

「B-SAPO(NPOバックオフィスサポート)」の事業では、会計などの正しい知識が必要。よりよい支援につながるように、自己研鑽するスタッフも多いといいます。

「顔の見える一人」のことをどれだけ想像できるか

組織の設立から30年以上が経ち、ここ数年、NPOサポートセンターが力を入れて取り組んでいるのが「NPOの事業継承・代表者の世代交代」です。

「NPO事業承継サミット」の様子。イベントには100名近くの人が参加した

内閣府が2019年に発表した調査によると、約6割のNPOの代表が65歳以上で、高齢化しながらも世代交代ができていない状況があるそう。より良い形で世代交代をすることがソーシャルセクターの発展につながると、松本さんは考えています。(参照:「特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査」

NPOサポートセンターは事業継承・世代交代を経験した当事者として、さらにこの問題を世の中に提起する意味でも、2020年と2023年に「NPO事業承継サミット」を主催しています。

このほかにも、槇さんが実施しているのは次世代のNPOの担い手を増やす「10代と20代のためのNPOキャンパス」という部署を横断した事業です。

槇さん 受講生のみなさんは気候変動やフードロス、ジェンダーなど特定のテーマをきっかけに、幅広く社会課題とその解決に関わる仕事を学ぶために来ていただいている印象です。社会課題解決への関わり方自体も多様になっているので、そのなかで「NGOやNPOでがっつり働きたい」とか、「企業で働きながら専門スキルをいかしてボランティアをしたい」とか、自分らしい関わり方を見つけてほしいんです。

若い人たちがこれからの社会をつくっていくと思うので、彼ら・彼女らへ学びの機会を提供するだけではなく、次の時代のNPOに必要なことを私自身も彼ら・彼女らから学んでいる感覚ですね。

「サザエさん症候群(日曜日の夕方から夜にかけて感じる、月曜日からの仕事への憂鬱な気持ち)になったことがない」と明るく笑う槇さん。情熱を注ぎ、全力投球できる仕事に就いたいま、槇さんの表情は充実感にあふれていました

さまざまな組織が社会課題の解決に取り組む時代において、NPOの役割とはどんなものでしょうか。最後に、松本さんにお聞きしました。

松本さん いまは「ソーシャルインパクト」という言葉があるように、どれだけ社会にインパクトを与えられるかみたいな話が多くなっています。

もちろん成果を意識することは重要ですが、どうやってもソーシャルインパクトが短期的には出ないような領域もあります。インパクト志向が行き過ぎると、取り残されてしまうような課題が今後は増えていくのではないかと危惧しています。

NPOに大切なのは、「顔の見える一人を想像できるかどうか」です。「その一人がどうなったら幸せになるのか」「その人らしくいられるか」という視点を持ち続けられるかどうか。ある程度のインパクトは意識しながらも、そういった想像力を持っていることが大事だと思うんです。

私たちはそうしたNPOのみなさんが、自分たちがやっていることに誇りを持って活動できるような支援していけたらと考えています。

途中、槇さんから「私たちの存在意義は、必要とされることを健全に続けていくこと」という話がありました。サポートするNPOの取り組みや、その先にいる人たちのことを心に留めながら、根気強く、地道に、広い視野を持って、支援の役割に徹そうとする様子に、だれかのために奮闘するからこそ生まれる、人間の強さがあることを実感しました。

そうした姿こそが、社会に希望をともし、社会を変えていくのだと思います。

(撮影:廣川慶明)
(編集:岩井美咲、山中散歩)

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