受講者募集中!ローカル開業カレッジ 自分の生き方を 表現する商いを始める

greenz people ロゴ

日常の一杯から気候変動を逆転させる。何十年先も美味しいコーヒーを飲み続けるために「Overview Coffee」が実践する“正しい取り組み”

朝の目覚めの一杯、仕事に集中するための一杯、家族や友人とおしゃべりしながらの一杯……。

私たちの暮らしの中に溶け込み、何気ない時間を豊かにしてくれる美味しいコーヒーが、近い将来、飲めなくなってしまうかもしれません。

ワールドコーヒーリサーチの調べによると、気候変動による生産量の減少と需要の増加にともない、2050年にはコーヒーの生産量は現在の半分程度になってしまうと予測されているのです。

そんななか、日常の一杯の選択から、地球環境へポジティブな影響を与え、コーヒーが飲めなくなる未来を変えようとしている人たちがいます。2021年4月、広島県尾道市の瀬戸田町に、一軒のコーヒーロースターが誕生しました。

その名も、Overview Coffee(オーバービューコーヒー)

アメリカ・ポートランドで生まれたこのブランドは、土壌の健康面を考えたリジェネラティブ・オーガニック農法(以下RO農法)で生産されたコーヒー豆を積極的に選ぶことで、環境と生態系に配慮しながらコーヒーを守り、且つ気候変動問題の解決に貢献することをミッションに掲げています。

「一人ひとりの選ぶコーヒーをリジェネラティブなものに変えていけたなら、必ず現状をシフトチェンジしていけると思っています。」

瀬戸田の穏やかな海を見つめながらこう語るのは、Overview Coffee Japan(以下OVC)の代表で、ブランドディレクションから焙煎・クオリティコントロールまでを担う増田啓輔(ますだ・けいすけ)さんです。

日本でOVCを立ち上げてから今年で3年目。増田さんがコーヒーを軸に気候変動にアプローチし続けてきた理由、この3年で少しずつ生み出してきた変化、そしてこれから叶えたい未来について、たっぷりとお話を伺いました。

増田啓輔(ますだ・けいすけ)
Overview Coffee Japan 代表。2010年より有名コーヒーチェーンにてキャリアを開始し、最年少(当時)店舗責任者を担う。その後渡豪し、オーガニックコーヒー農園にてコーヒー豆の栽培方法を学ぶとともに、焙煎補助から抽出に至るまでの過程を習得。帰国後は、都内を中心に複数のコーヒーにこだわるカフェ店舗の監修や立上げに携わった経験を有する。

日常の一杯の選択から、気候変動は解決できる

世界の成人人口において、半数以上がコーヒーを毎日飲んでいると言われる時代。

年々増えていく需要に合わせて大量生産をするため、コーヒー栽培の現場では、長年のあいだ除草剤や化学肥料、農薬を多用した栽培方法が主流となっています。その結果、土壌に及ぼしてきたダメージの大きさは計り知れません。

増田さん 農薬や除草剤を大量に使うことで土壌の有機物が欠乏し、土中の微生物や昆虫の餌もなくなって、さらに農地を耕すことで土中の生態系のバランスが壊れてしまいます。これまでの農法では、土壌は不健康になるばかりで、農作物の持続的な生産を難しくしてきました。

また、健康的な植物の根や土中の微生物には、土中に炭素を貯蔵するはたらきがあるにもかかわらず、耕すことでその炭素が大気中に放出されるため、地球温暖化の原因の一つになっているのです。

この課題を解決すべく、農薬や化学肥料などの不使用によって農地に害を与えないだけでなく、土壌を修復・改善させながら自然環境の再生を目指すRO農法を推奨する動きが、ここ数年でコーヒー業界でも徐々に広まってきているといいます。中でも単一栽培ではなく他植物との多品目栽培と、RO農法の代表格である有機の不耕起栽培は、土壌の生物多様性を高め、炭素を土の中により多く留められると言われており、地球温暖化の解決策としても注目されています。

増田さん まだまだ小さな動きではあるのですが、確実に気運は高まってきていると思います。2022年には、リジェネラティブ・オーガニック・アライアンスの認証のついたコーヒー豆が世の中に初めて出てきました。私たちは、RO農法を実践している農家さんの豆、またはRO農法へ切り替えるための実践を行っている農家さんの豆、さらにオーガニック認証を取得したスペシャルティコーヒー豆を専門に取り扱うロースターです。それらの需要を消費国で高めていくことで、ゆくゆくは生産現場の動きまで変え、コーヒーのマーケットから気候変動を解決していきたいと考えています。

OVCでは、あまり深く焙煎しすぎるとどこの産地のものか分からなくなってしまうため、産地の良さが出る程度の焙煎度合いにしているそう。産地で焙煎した豆を送ってもらうこともできますが、瀬戸田で焙煎することにこだわっているのは、少しでも炭素の排出量を減らすため、この国の水で美味しいと思うコーヒーに仕上げるためだという

OVCが取り扱うコーヒー豆の基準は非常に細かく、RO農法に対する取り組みや、サステナブルな取り組みに対する透明性が見えてくるまで徹底的に調査を行います。

増田さん 基本的には、リジェネラティブ・オーガニック・アライアンスのフレームワークを活用していますが、いつも自分の目で見て疑う余地のないところまで調査しています。オーガニックやフェアトレード認証の証明書は必ず見せてもらうようにしていますし、時には農場の写真を送ってもらって、不耕起や省耕起(機械などを使って土を深く掘り起こさないこと)の実践をしているか、同じ土地で異なる作物を育てることで、土の中の栄養素や微生物のバランスを保っているかなどを確認することもあります。オーガニックの認証は取れていても、それらの取り組みが見られなければ取り扱いはできませんし、逆に認証が取れていなくてもそういった取り組みに透明性を確保することができれば、取り扱う場合もあります。

この日店頭に並んでいた豆は4種類。オレンジ色の袋に入った豆は、ホンジュラスのマルカラでRO農法を実践している農家から輸入したもの

小売にはリサイクル可能な単一素材のコーヒー豆のパックを使用。また、表面に貼られたコーヒー豆についての詳細が書かれたシールには、分別しやすいように弱粘性のものを利用している。出してしまうごみに対しても徹底的に責任を持つ

消費国として誠実に、RO農法を実践する生産者やRO農法への転換を目指す生産者のコーヒー豆を取り扱うことで、一人ひとりの日常の一杯の選択を少しずつ変化させていきたいと話す増田さん。

増田さん 日常のたった一つの消費行動の変化でも、積み重ねれば大きな原動力になっていく。その小さな変化のきっかけに私たちがなっていければと思っています。

横乗りとコーヒーの親和性。渡豪経験が地球環境に対する意識を高めた

増田さんがコーヒーの魅力に気づいたのは17歳のころ。幼いときからの趣味であるサーフィンやスノーボードなど、いわゆる“横乗り”スポーツとの共通点を見つけたことが一つのきっかけだったといいます。

増田さん 横乗りもコーヒーも常に変化していくという部分で同じものを感じました。サーフィンでは常に自然の小さな変化によって来る波が異なるし、コーヒーもその日の気温や湿度、焙煎されてからの日数によって、同じ豆で同じ淹れ方をしても毎日味が変わる。自分ではコントロールできない環境の中で、自然と対話しながらその日のベストを探していくことは、自分の肌に合っていると感じました。

その後、バリスタに憧れ、有名コーヒーチェーン店でアルバイトを開始した増田さん。そこでの経験が、さらに彼のコーヒーへの探究心を高めていきました。

増田さん 微妙な環境の変化でコーヒーの味が変わっていくことに面白みを感じていたのですが、そのときにチェーン店で学べることだけでは、だんだん物足りなくなってきてしまって…。日本よりもよりコーヒーが日常に溶け込んでいる国に行き、専門的なことを学びながら、英語を習得することで、日本語に翻訳される前のコーヒー豆の生産背景の情報を確実にとれるようになろうと、渡豪を決めました。

増田さんがオーストラリアでの活動拠点に決めたのは、海岸沿いの自然あふれるまち、バイロン・ベイのコーヒーショップ。人々と自然との距離がとても近く、暮らしの中で自然を守っていこうとする姿勢がバイロン・ベイでは多く見られたといいます。

増田さん 日常的にプラントベースの食事を選ぶ人が多かったり、同世代の友人たちの間で「これは環境によくないからダメだよね」といった会話が普通になされていたり、ゴミの分別に関してもコンポストやプラごみを出さない取り組みが行われていたりと、まちの中に環境に対する取り組みへのタッチポイントが多かったです。

増田さんもサーフィンをしながらいつも自然と向き合う生活を送っていたため、自分の大切なものをなくさないためにアクションを起こす周囲の雰囲気に自ずと感化され、自然環境を守りたいという意識が強まっていきました。そこから、コーヒーを通して自然環境に対してできることを探し、実践し続けてきましたが、当時は実践できることが少なかったといいます。

増田さん スーパーに行くと、オーガニックの野菜はたくさん置かれていても、コーヒーに関してはそのような品揃えはほとんどありませんでした。オーストラリアで働いたコーヒーショップのうち、一軒のみオーガニックにこだわっているところがありましたが、RO農法というアプローチはまだなかったですね。当時、そういった文脈で最先端だったのは、トレーサビリティーが明確である“スペシャルティーコーヒー”でした。

「これが自分のやりたかったことだ」Overview Coffeeとの出会い

約3年間、オーストラリアでコーヒー豆の栽培方法や焙煎から抽出までの過程を学び、2018年に日本に帰国した増田さん。再びコーヒーショップで働くことも考えたそうですが、環境に対する大きなイノベーションが起きない業界にもどかしさを覚え、もう少し視野を広げてみようと、新規のカフェの立ち上げにコンサルとして携わったり、縁のあったクリエイティブディレクターのマックス・ハウゼガーさんとともに新しいお店やブランドのブランディング業務を始めたりしたといいます。

増田さん 毎年新しい品種や精製方法のコーヒー豆が出てきて楽しいんだけど、スペシャルティーコーヒー、3rd waveという概念以上のものが生まれない。持続可能性だけではなくて、もっと環境や社会にとっていいコーヒーのあり方を自分自身でも探究していたのですが、「これだ!」としっくりくる答えを見つけられずにいました。

帰国後3年ほどはクリエイティブな仕事をメインに続けていた増田さんでしたが、ともに活動していたマックスさんの友人であり、OVCの創始者であるアレックス・ヨーダーさんとの出会いによって、再びコーヒーの世界へと引き戻されることになったのです。

増田さん アレックスは、アメリカ人のプロスノーボーダーなのですが、仕事を通じて世界のさまざまな山を旅するなかで、自然環境が壊れていく状況を目の当たりにし、環境に対する意識が強くなったことがきっかけで、OVCの立ち上げに至りました。

数々のアクションがあるなかで、アレックスさんがコーヒーに目をつけたのは、世界中で消費されているものだったから。その分、RO農法のコーヒーが主流になれば、環境に対して大きなインパクトを残せると考えたのです。

アレックスさんからこの話を聞いた増田さんは、雷に撃たれたような衝撃を覚え、「自分がずっと探してきたのはこれだ!」と感じたと話します。

焙煎機はLoring社のS15を導入。Loring社の特許を取得したガスの内部循環技術が従来の焙煎機と比べて最大75%の消費エネルギー削減を可能にする

増田さん ずっと探してきたけれど、自分では見出せなかった答えだと思いました。これまでは生産者と消費者にとっていいものに焦点が当たってきたけれど、リジェネラティブの概念では、自然環境も人権も動物の福祉も、全方位で守ることができる。これはサステナブルの次の動きになると感じ、「それ、日本では僕がやりたい!」とアレックスに伝え、アメリカのオープンから約1年後に日本1号店の瀬戸田ロースターをオープンしました。

瀬戸田から都市へリジェネラティブをつないでいく

OVCは現在、千葉県一宮町と東京・日本橋にも店舗を構えていますが、最初の店舗を都市ではなく、広島・瀬戸田という地方の小さなまちを選んだのにも、深い理由がありました。

手前に見える建物がOVC。奥に見えるのは、増田さんがブランディングで関わった客室、レストラン、ラウンジスペースを兼ね備えた複合施設「SOIL setoda」

増田さん 僕がコーヒーの仕事をしながら感じてきたのは、バリスタやロースターの仕事には地方での可能性があまりないということ。やっぱり都市じゃないと杯数が出ないので成り立たない。あえて地方に出店することで、コーヒーをやりたい人はみんな都市に行かなければいけないというこれまでの常識を変えたかったんです。地方にもっと面白いコーヒー屋さんができて、面白い人が動けば、文化として成熟していくと思いましたし、パンデミックの影響で都市にこだわらない生き方が広がり始めていたことも背中を押してくれました。

また、自然環境を再生させることを目標に掲げるコーヒーロースターだからこそ、より自然に近いところで挑戦するほうが説得力があるとも思ったそう。

増田さん コーヒーの生産はできないけれど、それ以外の自然に対するアプローチとしては、都市にいるよりできることが多いと思いました。瀬戸田を知ったのは「SOIL setoda」のブランディングを担当したことがきっかけです。良い場所だと思っていたし、縁を感じたので、この場所で1号店をオープンすることに決めました。

オープンから3年が経ったいま、OVCで働きたいといって都市から移住してくる若者が増えたり、地元の農家さんに協力してもらい、お店で出た生ごみの堆肥化やRO農法の実践にも踏み出したりと、小さな波ではあるものの、着実に良い変化が起きていることを肌で感じているという増田さん。

増田さん 近隣の農家さんの畑の一部にキエーロをつくって店で出る生ごみを堆肥化し、それを使ってライ麦とオーツ麦を省耕起栽培で育てる実践を始めています。日本はコーヒー豆の生産ができない消費国だと考えたとき、やっぱりほとんどサステナブル止まりの取り組みしかできなくて、それがすごく歯痒かったんです。コンポストをするまではサステナブルだけど、その土を使って何かを育てることができればリジェネラティブになる。

近隣の農家さんの畑に設置された生ごみ処理器「キエーロ」。堆肥を触るとほんのり温かく、発酵していることが感じられる

畑に堆肥を入れ、育てたライ麦

いずれは育てたオーツ麦でオーツミルクをつくり店舗で使ったり、一宮店に併設しているパン屋でライ麦を原料として使えるようになることを想定しているといいます。

また、ライ麦とオーツ麦はカバークロップ(土壌侵食の防止や土壌への有機物の供給などのために畑の空いているスペースに栽培される作物)としても使えるもの。将来、周辺の農家さんがリジェネラティブな農法に興味を持ってくれたとき、彼らの畑にもカバークロップとしてこれらの麦を植え、地域の農業を変えていくことができるかもしれないと考えているそう。

増田さん コーヒーだけではない、いい影響を周りにも与えられたらいいなと思います。こういった実践は、やはり地方だからできることですよね。

共感できる人とともに少しずつ大きくなりたい

2050年に美味しいコーヒーが飲めなくなると考えたとき、少しずつ店舗を増やしていくスピードでは、到底気候変動を逆転させることはできないと考えた増田さん。あるアイデアを行動に移します。

増田さん 店舗をつくるのには時間がかかってしまうけれど、まずはいろいろな人に知ってもらう方法として、移動型店舗をやろうと思いました。

「OVERVIEW COFFEE TRUCK」と名付け、トラック1台で自然豊かな地域や、ここだったら自分たちのコンセプトを分かってもらえそうだと感じた場所に自ら出店していったそう。

“自然から自然へ” というOVCのアイデンティティと美味しいコーヒーを届けること、そして飲む人との交流を愉しむことを実現するための一つのかたち、OVERVIEW COFFEE TRUCK(画像:Max Houtzager)

増田さん 本当にいろいろな場所に出店させてもらいました。2022年にはパタゴニアが主催するサーフツアーに同行させてもらい全国を回ったり、人と自然が共生する社会の実現を目指すライフスタイルブランド「SANU」の拠点を巡るツアーを開催したり。同じ思いを持ってより理解してくれる人たちと一緒にやることで、広げていきやすいのではないかと思っています。

また、実店舗を展開するとき、千葉県一宮町と東京・日本橋という場所を選んだのも、OVCのコンセプトを理解してもらいやすい場所だと考えたから。

増田さん 一宮の店舗はSANUの敷地内にあり、海に近いためサーファーも多く、自然環境への意識が高い人がたくさん訪れてくれると思いましたし、日本橋は自然エネルギーによる発電事業をおこなう「自然電力」のオフィスの中に入っているんです。ただ単に都市に出したいというわけではなくて、やっぱり親和性のある場所でやっていくことが大切だと思っています。

自然に近いところでアクションを起こすと同時に、人口の多い都市の中でも積極的にアクションを起こしていかなければ、現状は変わりません。「都市では何もできない」ではなくて、「都市では何ができるのかを考えたい」と話す増田さん。親和性のある人たちとともに歩むことで、大きな変化につながっていくのかもしれません。

まずはコーヒーを美味しいと思ってほしい。そこからの気づきで行動は変わってくる

増田さんは、RO農法のコーヒーを広めたいという強い想いを持ちながらも、お客さんに対しては、あえてその想いをあまり強くは伝えないようにしているといいます。それは、飲み手が能動的に動かない限りは、長期的な行動にはつながらないと考えているからです。

増田さん やっぱり商材としてコーヒーを扱っている以上、何より最初に「美味しい」があってほしいんです。そこからOVCの豆を買ってくれたときに、パッケージを見て初めて僕たちの取り組みに気づくような仕組みをつくりたい。自分で気付いて自分で理解しないと行動には移せませんから。

その代わり、コンセプトが書かれた手紙をそっと用意していたり、店舗の本棚には環境にまつわる書籍がずらりと並んでいたりと、知りたいと思ったときに一歩踏み込めば深く知れる仕組みが万全に整えられています。

OVCに置かれた手紙。中を開くとOVCのコンセプトやRO農法の説明が綴られている

増田さん 一瞬だけ注目を浴びればいいというわけではないので。「これをすれば何かが変わるかも」という飲み手の自発的な行動につながっていくことを何よりも大切に設計しています。

一見、浸透するまで時間のかかりそうな取り組みのように感じますが、お客さんから「こんな実践をしてみました!」というメッセージが届いたり、Webサイトの問い合わせフォームからコンポストについての質問が届いたりと、飲み手の反応にも変化が見え始めているといいます。

影響力が増してきた分、正しい情報を正しく伝える努力は怠らずにやっていきたいと最後に話してくれた増田さん。「リジェネラティブ」という言葉が日本よりも早く広まっているアメリカでは、耕さないけれども、従来通り農薬や遺伝子組み換えの種子を使用している「リジェネラティブ農法」が広がりをみせているからです。

増田さん 口酸っぱく、リジェネラティブではなくて「リジェネラティブ・オーガニック」と伝えるようにしています。リジェネラティブやリジェネラティブ農法という言葉だけが先行して、結局2050年に何も環境が変わっていなかったら意味がないじゃないですか。発信できる側にいる人間として、正しい知識を身につけて正しい情報を伝えていく。言葉として消費されるだけにならないようにしていきたいと思います。最終的なゴールは決まっているので、それに向かって今後も正しいことをしていくのみです。

増田さんの話を聞きながら「ゆっくり急げ」というヨーロッパの格言を思い出していました。差し迫った危機に対し、「何かしなければいけない」と焦る気持ちをもちつつ、むやみに動き回るのではなく、目指すゴールに対しての最短ルートをじっくり見極め、正しく行動に移していくことが何よりも重要なのだと。

私たち一人ひとりの暮らしや消費行動は、大きな社会、さらに地球全体とつながっています。一人の力は一見小さく見えますが、これまで私たち一人ひとりが地球環境に及ぼしてきたダメージの大きさを考えれば、反対にポジティブな影響も同じだけ与えられるはず。

この地球で暮らし続けるために、あなたも暮らしの中の小さな選択を変化させてみませんか?


(撮影:小黒恵太朗)
(編集:村崎恭子、増村江利子)