greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

たくさん読んだら次の誰かにどうぞ! 街を子どもたちの本棚にする、隠すのも探すのも楽しい“本の宝探し”

みなさんは、子どものころ大好きな本はありましたか?

絵本?
冒険もののファンタジー?
人気キャラクターのシリーズ?

かつて胸をワクワクさせて読んだ、懐かしい物語が思い浮かんだ人もいるのではないでしょうか。

親に読んでもらったり、友だちに勧められて手に取ったり、本との出会い方もきっとさまざま。でも、もしそれが、自分が”発見”した本だったら、なおさら思い入れが強いかもしれません!

街中に隠された本を探せ!

今回紹介するのは、街の中に隠された本を見つける宝探し「Hidden Books」。オーストラリア南東部にあるブレードウッドという小さな街で、Samantha Dixon(以下、サマンサさん)が2019年から始めました。

5人のお子さんを持ち、さらに5人の里親でもあるスーパーお母さんのサマンサさん。[ABC News: Jessica Clifford]

サマンサさんは、自分の住むオーストラリア南東部で、ペイントした石を隠して子どもたちに探してもらうアクティビティが広まっているのを目にして、この活動に思い至ったそう。

家の本棚は、読み終わった子どもの本でいっぱいになっていました。そこで、隠すものを”石“ではなく、“本”にしたら、もらった子どもたちにとっても役に立つし、素敵だと思ったんです。

本の“宝探し”の仕組みはシンプル。
隠す本とメッセージを、ジッパー付きビニール袋に入れて、街の中に隠します。

隠し場所のヒントや見つけた子どもたちの様子は、Facebookのグループページでお知らせされています。
(Braidwood Hidden Books Facebookより)

隠し場所は公園や歩道、植え込み、お店の窓枠など。

子どもたちは街を探検し、隠されている本を探します。本を見つけたら、もらって帰ってもいいし、その場で読んで、今度はその本を自分が隠してもOK。

街の中で本を見つけた子どもたち(Braidwood Hidden Books Facebookより)

本と一緒に入っているお手紙にはこんなメッセージが書かれています。

この本を見つけたあなたはラッキーです!

宝探しを楽しんだら、ぜひこの本を読んで、そして、誰かのために隠してみて。
そのときはまたこの袋を使ってください。

表紙の裏にはあなたの名前をサインするのも忘れずに。
どれだけの人がこの本を見つけられるかな!

本とメッセージを袋に入れた“宝物”セット(Braidwood Hidden Books Facebookより)

決められた日時に集まったり、事前に申し込んだりする必要もなく、いつもの公園や道で偶然本を見つけたら、すぐに“発見者”になれるオープンさも魅力。子どもたちの日常の中に、そっとあらわれる“宝探し”なんです。

さらに、表紙の裏に自分の名前をサインするところがあり、その本を探し当てた“発見者”の名前が増えていくのも、つながりを感じられる楽しい仕掛け。

見つけた子どもたちの表情から、本探しの楽しさが伝わってきます!
(Braidwood Hidden Books Facebook)

家の本棚に眠っていた本がまた読んでもらえることも、子どもたちがテレビやタブレットの画面の前ではなく、外に出かけて本を見つけていることも、とてもうれしく思っています。
なにより、子どもが本を見つけたときの笑顔は最高で、魔法みたいな瞬間!

と話すサマンサさん。3年の活動を経て、読み終わった本がまた隠されたり、新たに本を隠してくれる人も出てきたりして、持続的に活動が続くようになっているそう。

街の中に本を届ける活動は、イギリスやアメリカ、ニュージーランドなど、ほかにもいろいろな場所でも行われているようです。大規模なものから地域ベースのものまで、それぞれの活動がお互いに影響を与え合いながら、各地に広がっています。

ニュージーランドのKāpitiでのプロジェクトを始めたイボンヌさん。隠す大人も楽しそう!(Y’vonne Miller hiding a book at Waikanae Park. Photo / Rosalie Willis)

気軽に始められそうなシンプルな仕組みと、何より、宝探しや本を通してのつながりにワクワクする気持ちは世界共通なのかもしれません!

物語をシェアして誰かとつながる

子どものころに夢中になった物語は、今でも鮮明に覚えていたりするもの。大人になっても、考え方のベースになっていたり、人生のふとした瞬間に影響を与えていたりするかもしれないと思うと、出会う本や、本との出会いかたは大切だなと思います。

私はちょうど先日、小さいころ好きだった『モモ』(ミヒャエル・エンデ著)を自宅の本棚で発見して懐かしくなり、毎日少しずつ子どもたちに読み聞かせを始めたところ。子どものころの自分と同じ物語を共有できることに、不思議でうれしいつながりを感じています。

ページは茶色くなり、スピンもちぎれてだいぶボロボロの『モモ』。「6歳にはちょっと難しいかな?」「言葉だけでは飽きてしまうかも?」と思いながら読み聞かせていましたが、夢中になって聞いている様子に、子どもの想像力のたくましさを実感。

子どもたちに、いろいろな本に出会うきっかけを与えてくれる“本の宝探し”。自分の思い入れのある本をほかの誰かが楽しんでくれたり、思いもよらない一冊に出会えたりするのは、大切な体験になりそうです。

[via GOOD NEWS NETWORK,ABC News, New Zealand Herald, Braidwood Hidden Books Facebook]
[Top Photo: Braidwood Hidden Books Facebook]

(Text: 片岡麻衣子)
(編集: スズキコウタ、greenz challengers community)