電力会社の供給網に頼らずに、太陽光などから電力を自給する「オフグリッド」。みなさんはご存知ですか?
ソーラーパネルで発電したり。
薪ストーブでお風呂を沸かしたり。
不便だけど、自然とつながる豊かな暮らしの実践例を、グリーンズでも過去にいくつも取り上げてきました。
わたしは、ストレスを発散したいときにキャンプに出かけますが、その裏にはオフグリッド体験をしたいという欲求があるのかもしれません。
けれど、毎日がキャンプのような生活は想像しにくい…。私がそう感じるのは、冷蔵庫の代用品が思い浮かばないからです。クーラーボックスでは、長時間を凌ぐことは難しいでしょう。夏場の猛暑日に、食品を保存したり、冷たい飲み物を準備するためにも欠かせません。
そんなモヤモヤを抱える中で見つけたのが、電力がなくても使うことができる冷蔵庫「Koolboks」です。
太陽の力で氷を生み出す!?
太陽光で電気をつくるオフグリッド冷蔵庫「Koolboks」を開発したのは、フランスに本社があるスタートアップ企業。Koolboksの大きな特徴は、冷蔵庫と冷凍庫のふたつの機能を備えていることです。
ソーラーパネルで発電した電気で使うことができ、コンセントにつなぐ必要はありません。
太陽が出ている昼間は太陽光エネルギーで氷をつくり、太陽が沈んだ夜間は、蓄電したエネルギーでKoolboksの内部を冷やす、氷蓄熱方式を採用。さらに、太陽が出ていなくても4日間連続で冷凍庫として使うことができ、その秘密は長時間一定温度を保つことができる「アイスバッテリー」という機能にあるのだとか。
フタの内側についているアイスバッテリー機能によって、Kookboksを冷たい温度で維持できるのだそう! また、本体右下には発電した電気でスマホが充電できるUSBポートも搭載しています。
これは、まさにわたしが求めていた冷蔵庫!
さっそくキャンプ用に購入しよう!
そう思ったのもつかの間。実は残念ながら、現時点ではアフリカのみでの展開。わたしたちには買えないのです。
誰もが冷蔵庫を使える世界を目指して
Koolboks社は、将来的にはサブサハラ全土への拡大を目指していますが、現在はそのエリアの主要成長国であるナイジェリアに注力しています。アフリカでの展開を見据える理由は、電力供給率の低さにあります。

サブサハラとは、サハラ砂漠より南の地域の国々のこと。
サブサハラには約11億人が暮らしていますが、半分にあたる約6億人が電力供給を受けられず、電気はおろか冷蔵庫が使えない状態にあります。(出典元)
気温の高い夏場は食材を腐らせてしまうこともあるでしょうし、毎回食べ切れる量だけを買いに行かなければいけないので、それだけでも一苦労。また、飲食店では保存できないために食品が廃棄されているのだそうです。
冷蔵庫を購入する場合には最低でも300ドルが必要で、平均月収の78ドルと比べるとかなり高価。さらに冷蔵庫を動かすための発電機や燃料が必要で、冷蔵庫を持つことができない理由にコスト面でのハードルがあげられます。
そこで、Koolboksは使った分だけを支払うPAYGO(Pay as you go)システムを取り入れ、月10ドルから使える仕組みを実現しました。
電力会社の送電網につながっていない状態を意味する「オフグリッド」は、しばしば自給自足やサステナブルの文脈で語られることが多いように感じていました。けれど、Koolboksはオフグリッドを手段として、サブサハラで暮らす人びとに冷蔵庫が使える未来をつくろうとしています。
食卓に並ぶ前に廃棄されていた食糧も、Koolboksがあれば食品ロスの解決につながるでしょう。買い物の手間が減ることで、家事をする女性の負担も削減できると思います。また、飲食店を営むひとならば、冷凍保存によってメニューの幅が広がり、利益が生まれる可能性もあります。
オフグリッドな生活は、環境にやさしいという利点だけでなく、電気が使えない人たちの困りごとを解決できる手段を秘めていることに気づきました。
[via Koolboks, Koolboks Instagram, Koolboks Twitter, SPACE IN AFRICA, Unsplash]
[Top Photo: via Koolboks Twitter]