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「わたしたちの暮らしを守るエネルギー」って? 生活者のために学び考え続けてきた「生団連」とグリーンズが始める”探究の連載”がスタート!

生団連(せいだんれん)」、という団体を知っていますか。

正式名称は「国民生活産業・消費者団体連合会」。少しお堅い印象がする漢字ばかりの団体名ですが、一言で言うならば、国民の生活について考え、守るために活動する企業や団体の集りです。

グリーンズと生団連は、このたび「わたしたちの暮らしを守るためのエネルギーってなんだろう」という問いをテーマとし、共に探究する15本の記事と3回のイベントで構成される共同プロジェクトを始めることになりました。その連載第1回目となる今回は、生団連がどんな団体なのか、どんな連載になるのか、生団連の事務局で働く3人のインタビューを通してお伝えします。

田中賢了(たなか・けんりょう)
生団連事務局長。生団連の重点課題や団体運営全般を担当。横浜国立大学卒業後、2004年キリンビール株式会社(現キリンホールディングス)入社。入社来一貫して営業畑を歩み、2014年より同社広域流通統括本部にて大手量販企業を担当し、2018年より同部署の部長としてマネジメントに携わる。2021年4月から生団連事務局へ出向中。最近アクアリウムにハマり中。家庭では4歳の長男と1歳の長女の子育てに奔走している。
室井脩平(むろい・しゅうへい)
生団連事務局、業務部マネージャー。「エネルギー・原発問題」委員会担当。一橋大学卒業後、2016年株式会社髙島屋に入社し、日本橋店の婦人靴売場、婦人洋品売場での仕入・販売・催事企画などに携わる。2021年3月より生団連事務局へ出向し「エネルギー・原発問題」に関する調査・研究・提言活動を行っている。趣味はカメラ・写真。一眼レフカメラを手に街にくり出す日々を送る。
小坂有以(こさか・ゆい)
生団連事務局、業務部マネージャー。「エネルギー・原発問題」委員会担当。東京海洋大学海洋生命学部卒業後、2008年イオンリテール株式会社入社。イオンリテール店舗水産担当の経験を経て2014年よりイオン本社勤務し、2021年4月から生団連事務局へ出向中。趣味は絵を描くことで、年に1回の個展開催に向けて作品制作を行っている。

特定の企業や利益のためではなく、国民・生活者のために考え行動していく

まずは、生団連の成り立ちを簡単に紹介しましょう。

生団連が発足したのは、2011年。きっかけは、その年の3月11日に起きた東日本大震災でした。ライフコーポレーション株式会社の創業者である清水信次氏が、このような緊急事態に国民の生活を守ったり、声をあげたりする民間の団体がないのではと考え、さまざまな企業の経営者などに声をかけたところから始まりました。


完成したばかりの生団連の活動を紹介するビデオ

今では、571もの企業や団体が会員となっています(2021年12月時点)。会員一覧を目にすると、流通やメーカーなど、多くの人が知っている有名企業が名を連ねており、その団体名からも経済団体と思われがちだそうです。けれども、事務局長の田中賢了さんは、「そうではないんですね」と柔らかい口調で説明してくれました。

田中さん 生団連には、企業だけでなく、消費者団体やNPO団体も加盟しています。それは、生団連の使命が、特定の企業や業界の利益を求めることではなく、国民の生活、生活者のためを考えて行動していくことだからなんです。

品川の生団連オフィスで仕事中の田中さん(左)

「国民の生活のため」とは何とも壮大ですが、いったいどのような活動をしているのでしょうか。生団連は、現代の日本社会に山のようにある課題の中から5つの重点課題を選んでいます。

1. 新型コロナウイルスの感染拡大防止と医療提供体制の改善
2. 「国家財政の見える化」の実現に向けて
3. 生活者としての外国人の受け入れに向けて
4. 「エネルギー・原発問題」の国民的議論に向けて
5. 「生団連災害支援スキーム」の構築

田中さん この5つの国民的課題に対して、会員団体から構成される委員会を設け、その場で話し合ったうえで、情報発信をしたり、政策提言を行ったりしています。

たとえば、エネルギー問題に関して言うと、2021年12月に、「原発問題~『ファクト』集」を作成し、公開しました。生団連では「エネルギー政策に関する提言~エネルギー基本計画の見直しを見据えて~」といった形で、政府が定めるエネルギー基本計画に対して独自の提言も行っています。

ファクト集は印刷されたパンフレットだけでなく、ウェブより閲覧することもできます。国民的議論が続いている原発問題について、実のところ何がどう問題なのか、その事実(ファクト)が詳しくまとめられています。

このように、問題について研究を深め、情報を提供し、議論のうえで発信を続けているのが生団連の主な活動です。それを支えているのが、8名の職員からなる事務局。そのメンバーから、田中事務局長に加え、「エネルギー・原発問題」委員会を担当している室井脩平さんと小坂有以さんに事務局の業務について説明してもらい、生団連の活動を探っていくことにしました。

情報を集め、整理し、資料化。生活者のために勉強しつづける。

取材当日、東京・品川にある生団連の活動拠点を訪れると、5名のスタッフが仕事中。日々このオフィスでどのような仕事をされているのか伺いました。

小坂さん 事務局は、委員会で議論するための資料を作成したり、提言をするための準備をしたりしています。そのために新聞を読み込んで情報収集したり、発電所などの現場に赴いて取材をすることもあります。

出勤すると、その日の新聞に目を通し、各事務局員が担当している分野の記事をチェックし、スクラップしていくことから始まるのだとか。取材当日にお邪魔すると、大量の新聞が積み重なり、分野別にさまざまな本が並んでいるのが目に入りました。

コウタ 僕が編集者として取り組む仕事と共通点が多いですね。勉強し続けて得た情報を収集・整理して提供する。生団連のスタッフのみなさんは、全員”勉強家”だなと思い、とても共感しました。

とは取材に同席した、副編集長・スズキコウタの言葉。

情報収集の際に心がけていることを伺うと、小坂さんは「オフィスには本もたくさんありますが、出版から数年経つと情報として古くなってしまいます。最新の客観的で信頼できる情報を集めることが大事です」とおっしゃってました。

このように、国民的課題に向き合う生団連を、縁の下の力持ちとして支えているのが事務局なのです。ただし、国民的課題と言われても、自分とは関係のない問題のような気がする人も少なくないはず。でも、それも仕方がないのかもしれません。なぜなら、この取材の場にいる3人も、「実は…」と本音を打ち明けてくれたからです。

社会課題を知っていても、最初から自分ごとだったわけではない

田中さんは、生団連で働くまでは民間企業に勤務しているビジネスパーソンでした。社会人の常識としてニュースに触れてはいましたが、何かがあったとしても政治家や行政が対応してくれるだろうと、「どこか他人ごとだった」と口にします。

田中さん 生団連で働き始めると、本業で忙しい企業の経営者や消費者団体の代表の方が、真剣に国民的な課題に向き合っているのを目の当たりにしました。

それに今は、4歳と1歳の子どもがいるので、ふたりのためによりよい社会を残してあげたいなと思うんですね。そこで、誰かがやってくれるだろうと思っている側ではなくて、自分で考えて動いてみる側になろうと考えるようになりました。

父親として子どものことを思う気持ちは、共感できる人も多いはず。そんな我が子を思う親と、社会全体を考えて動く企業や団体のトップの人たちも、目指すところに違いはないでしょう。

生団連で働くことが、問題について考えるきっかけになったというのは、室井さんです。

室井さん 問題があることはわかっていても、自分ごととして考えるところまでは至っていなかったと思います。

生団連で働くようになって、その業務が考えるきっかけになりました。きっかけがあると日常でも考えるようになって、自分ごとにつながっていくんですよね。国民的課題は、もちろんわたし自身のためでもあるし、身近な人のためでもあるんです。それが仕事に向かうモチベーションになっています。

国民と考えると、顔の見えないのっペらぼうの集団のようなイメージが広がってしまうかもしれません。けれども、そこにいるのは、わたしであり、あなたであり、わたしの大切な人であり、あなたの大切な人。そのことに気づけば、自分ごととして考えられるようになるまでは、あと少し。

そして、多くの読者同様に、生団連で働くまで団体について何も知らなかったという小坂さん。今、いわば“中の人”になって、「何をしているのかがわかる団体にしたい」と思っています。

小坂さん 生団連で働くようになってから、違う職場の友達とプラスチック問題の話が出たんです。こういう問題が起きていて、こういうことが言われているんだよねっていう話ができたのは業務で調べていたからだし、生団連の活動を通してわたしができたことでした。こんな風に問題を知る人が増えればいいなと思うんです。

生団連で働くようになって意識が変わった3人。今では仕事として国民的課題に向き合っていますが、一個人としてはそれぞれ異なる問題意識を持っています。

たとえば田中さんは、「コロナ禍で有事での対応の重要性を痛感した」と言います。日本に多い災害を含め、有事は生活や生命に直結する問題にも関わらず、企業のリスクマネジメントに比べると、国や自治体レベルでは十分ではないのではないかとコロナ禍で感じたそうです。

規模が大きく非常に困難であると理解したうえで、「国家として有事に対応できるようにもっと体制を整えるべきではないか」と話す田中さん。

大学で環境経済学を専攻していた経験のある室井さんは、エネルギー問題や環境問題に関心を示しつつ、その取り組み方へ言及します。環境経済学という点では、問題を数式で表したり、モデル化することで解決への道筋を図ったりしますが、それだけではなく「課題に関わる人たちに寄り添いながら考えていきたい」と、日々の業務に取り組んでいます。

小坂さんが気になる社会課題として挙げたのは、使い捨て社会そのものでした。

小坂さん プラスチックもそうですが、ファストファッションが流行って、衣類をワンシーズンで捨てるようなことが多いと言われていますよね。

多くの人が、自分が買っているものがどんな風につくられて、捨てたらどこに行くのか知らないために、そういうことが起きると思うんです。モノの上流と下流を知れば行動は変わるんじゃないかと。エネルギーも地産地消が言われていますが、そういう風に変わっていってほしいです。

ふだんの何気ない会話で「もったいない」と口にすると、「そんなケチらなくても」と返されることに違和感があるという小坂さん。私はその気持ちに強く共感しました。

生団連の事務局として、国民的課題に向かい合う会員団体らを支え、日々の業務に携わる3人も、それぞれに問題意識を持ちながらも、日常では葛藤したり、迷ったりしている生活者です。そんな一面を垣間見て、生団連という存在が少しずつ近くなってきました。

読者のあなたも、共に考え探究する主人公になる連載

今回の共同プロジェクト「わたしたちの暮らしを守るエネルギー」の始まりは、生団連からグリーンズへ何かできないかと提案があったことがきっかけでした。そもそも生団連としては、どんなことをグリーンズとのコラボレーションに期待しているのでしょうか。

小坂さん わたしたちにはやはり企業人という側面があるので、消費者団体の方とやりとりをするときなどに、消費者目線を忘れずにいることの必要性は感じていました。そして、これからの未来を考えていくにあたって若い生活者の声を拾うことが重要だと考えています。

そのためにいろいろな団体やメディアにアプローチするなかで、グリーンズに目を止めたそうです。それは、グリーンズの記事が問題を丁寧に紐解き、読者に投げ掛けている点を評価してのことでした。

確かにグリーンズでは、声高に社会課題を批判するよりも、課題に取り組んでいる人物を丁寧にすくい上げたり、解決のためのユニークな取り組みを紹介したりする記事を多く公開しています。それは、課題について知ることそのものを楽しんだり、知ることで課題に積極的に関わり、解決への一歩を踏み出したりすることを目指しているからです。

そんなグリーンズだからこそ、生団連との連載で伝えられることがありそうです。

ただ個人的には、生団連とグリーンズの連載が始まると知って、少なからず違和感を感じたのも事実です。生団連の代表や役員のメンバーは企業や団体のトップの人たちばかり。つまり現在の日本ではスーツを着た年配の男性がほとんどだからです。

率直にそんな印象を告げると、田中さんは苦笑いしつつ理解を示しながら、この連載に寄せる期待を教えてくれました。

田中さん 今のわたしたちに足りていないところや、自分たちの視点ではわかっていなかったことが、連載を通して発見できるのではないかと期待しています。賛同いただくだけでなく、どんなリアクションをいただけるのかを知りたいです。

小坂さん 今までは、わたしたちはこう思う、多くの生活者はこう思っているはずだと考えて活動してきましたが、“あれ、こんな風に見えているのか”という発見があるんじゃないかと思っています。それをすごく期待しています。一方的に発信するのではなく、さまざまな人たちの声をタイムリーに拾っていきたいですし、それを活動に直結させていきたいんです。

室井さん 連載に期待するのは、読者の方に国民的課題を身近なものだと感じていただいて、自分ごとにするきっかけになることですね。その課題がどんな風に自分の生活に影響があるのか知っていただければうれしいです。

国民的課題といっても、その課題に対する考えは人それぞれです。田中さんが、「誰にとっても見ている世界にはそれぞれのバイアスがかかっているし、これから先の人生の長さが違えば課題の捉え方も変わってくる」というように、多様な意見があって当たり前です。

もちろん、そんな課題に対して考えも意見もないよ、という方も心配には及びません。

グリーンズだから、そしてグリーンズの読者だから、これまで生団連が接する機会の少なかった視点や考えを届けられるかもしれない。メディアの一連載という枠を越えて、国民的課題に向き合うテーブルにさまざまな人が会する場になる可能性もありそうです。

ひとりでも多くの読者に記事を読むことを通して「主人公」として参加してもらえるコラボレーションに。グリーンズのコアスタッフにも、どんな試みを展開していくのか聞いてみました。

正太郎 国内でも再生可能エネルギーの普及が加速していますが、豊かな自然を残す里山がメガソーラー発電所のために切り拓かれてしまったり、風力発電の計画が地域住民に十分な説明なく進むなど、新たな問題も生み出しています。

今、このタイミングで「暮らし」という視点からエネルギーについて考え直すことはとても大切なことです。この連載を通じて、読者のみなさんと『わかりやすい正解』のない問いについて一緒に考えていくことを楽しみにしています。

コウタ 僕が心から共感できるのが『生団連としての正解のアピールではないことをしよう』ということ、そして『記事をきっかけに生団連もグリーンズも読者のみなさんも考え、手を動かしていこう』というアティチュードです。

そこで、ただ先進事例を取材するだけでなく、エネルギーについて自分ごとになる暮らしのレシピや、独自の視座を持つ専門家の方々に学ばせていただく記事など、さまざまなバリエーションを準備しています。

「当たり前」にあるものについての簡単に答えの出ない問い。

生団連とグリーンズと読者の連載だからこそテーマにしたいと考えて決定したのが、「わたしたちの暮らしを守るためのエネルギーってなんだろう」という問いです。とても重要ですが、簡単に答えの出ないこの問いに、3人はどんな風に向き合っているのでしょうか。

田中さん エネルギーは生活や生命の隣にある存在ですけど、普段の生活ではほとんどの人が考えていないですよね。あることが当たり前というか。

でもこれから、気候変動をはじめエネルギーの問題は非常に重要で、産業や実生活が必ず影響を受けてくると思っています。そこで、エネルギーによって生活がどんな風に助けられていて、どんなマイナス面があるのか、一人ひとりがまずは知って考えて、行動するのが大事かなと思います。

室井さん エネルギーには、安定供給やコストなど、生活に与える要素がいろいろありますけど、現時点では全ての面で優れたエネルギーはないのではないかと。だからバランスをどうするのかが議論になっていますし、長所と短所を考えれば、地域によって違ってくると思うんですね。それぞれの状況を踏まえたうえで考えることが大切だと思います。

小坂さん 一番は供給の問題ですね。どこか遠いところで大量に電気を使ってそれを大都市で消費するのではなく、自分が使うものは自分でつくれるようになればいいですよね。

やはり大規模な発電はどんな形でも環境への影響が大きかったり、原材料になるものを海外から調達したりすることになるので、適切な単位で需要と供給が回るといいのかなと思います。

「自分も含め、エネルギーを使う側が、もう少しだけでも省エネを普段から心がけられるといいのかなと思います」

3人からもそれぞれ異なる考えが聞けたように、エネルギーに対する考えはそれぞれ違って当然です。

たとえば、大都市で暮らす人と地方で暮らす人。
火力発電所の近くで暮らす人や原発の近くで暮らす人。
大量の電気を必要とする企業と個人。
戸建て住宅に住む人と集合住宅に住む人。

少し想像すれば、異なる考えが生じそうなことはわかります。

もちろん気候変動は喫緊の課題であり、悠長に向き合うほどの時間的余裕があるわけではありません。それでも、読者のみなさんと一緒にこの問いへの答えを求めていくことで、たくさんのものに気づき、考えていきたい、そう思います。

国民的課題やエネルギー問題など、大きな話が続きました。けれどもすべて、わたしたち一人ひとりの日々の暮らしと深いつながりのあることばかり。わたしたちはそれらに向かい合い、さらに行動に移すことができます。そのことを心に留め、何ができるのか、どうすればいいのか、これからじっくりと考えていきましょう。

(撮影: 関口佳代)
(編集・企画: スズキコウタ)