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人間のみなさん、あなたたち自分のことばっかり考えてない? 浜松市の”食べられる森”に足を運んで得たのは、暮らしの新しいまなざしでした!

こんにちは。インターンのくみちゃんです。

NPOグリーンズが新たに掲げている”いかしあうつながり”。
でもそれって一体どういうことなの?

頭ではなく体感として知りたいと思った私は、3月から「いかしあうデザインカレッジ(通称: いでかれ)」で学んでいます。

「いでかれ」はパーマカルチャーデザイナーで共生革命家のソーヤー海さんと、NPOグリーンズ代表の鈴木菜央が2021年3月にはじめた「”関係性”を通じた地球一個分の暮らしと社会のつくりかた」を学ぶオンラインコミュニティ/学びの場。わたしたちの根っこにある考え方・あり方を「共に生きること」に変えて、自分自身、人と人、人と自然の「いかしあう」関係性をつくりだすデザイン手法=「いかしあうデザイン」を学ぼうとスタートしました。

このカレッジの目標は、「いかしあうデザインを実践できる人になる」。そこで、私たちは数多くの”いかしあう”を実践している先達の事例をオンラインで学んでいます。今回は、その中からパーマカルチャーデザイナーとして活動する大村淳さんから学んだことをご紹介します!

大村さんは、静岡県浜松市の住宅地の一角に残る750m2の農地と2500m2(約968坪)の耕作放置林を拠点としています。7年前から手をかけて、少しずつ現在のようなガーデンになってきました。

フォレストガーデンの全景(画像提供: 大村淳)

フォレストガーデンのほかにも、地元公立中学生へのSDGsの出張授業や地元の湖・佐鳴湖の生態系の保全メンバーなど、幅広く活動されています。

(画像提供: 大村淳)

講座のあと、”実際に現地に行きたいね”という声が受講生の間でわき起こり、見学ツアーが実現。私も足を運んだのですが、大村さんに教えてもらいながら、自然のいかしあうつながりを体感する、とても贅沢で感動に満ちた時間を過ごしました。

そしてオンライン講座をきっかけに新たな動きが生まれ、それがまた次の収穫につながるという流れがとても豊かで、そこも「いかしあえている」‥‥。そんな経緯をお伝えしつつ、現地での豊かな時間をみなさんに少しでも感じてもらえたらうれしいです!

実際に足を運んだメンバーのほかにも、オンラインで各地から参加した人もいてハイブリッドな時間となりました。(撮影: Romy)

大村淳(おおむら・じゅん)

大村淳(おおむら・じゅん)

静岡県立大学 非常勤講師/未来づくりフェロー、菊川西中学校 ESD教育特別講師/Permaculture Design Lab.共同代表
▶︎Permaculture Design Lab
▶︎フォレストガーデン

フォレストガーデンとは?

まずは”パーマカルチャー”や”フォレストガーデン”といった言葉に耳馴染みのない方にご説明しましょう。

パーマカルチャーとは、パーマネント(永続的な)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を合わせてつくられた造語のこと。永続可能な農業をもとに、自然と人がともに豊かになるようなデザイン手法を意味します。(パーマカルチャーデザインラボHPより)

一方、フォレストガーデンとは、自然の中にある若い森をモデルにして、暮らしに必要な食べ物や実りを持続可能な方法でより多く手に入れるための森のデザイン手法のことです。(フォレストガーデン富塚HPより)

森をモデルに草木を9つのレイヤーに分け、どう重ね合わせるとお互いを最大限にいかせるかをデザインします。それによって、農薬や肥料、化石燃料を活用することなく、生産を管理する労力とコストを近代農業の20分の1、年間10日程度にできるのだそう!

つまり、自然と人がともに豊かになるように手を加えたガーデンとフォレストを、大村さんはつくろうと尽力されているわけですね。

フォレストガーデンの9つのレイヤー 

森の観察

フォレストガーデンの第一歩は観察から始まります。手を加えたくなるのをグッとこらえて、太陽がその場所をどの方角から照らすのか、風がどの方角からどちらに向かって吹くのか、元々の土地には何があったのか、水はどこからどこに流れていくのかなど、ガーデンのまわりの環境をじっくりと観察します。

フォレストガーデンのある浜松は主に西風が吹き、天気が悪い時だけは東風が吹きます。現在のガーデンの場所は長年除草剤が撒かれ放置された土地で、大村さんはこれらの情報も元にフォレストガーデンをデザインし少しずつ手を加えていったのだそうです。

それではツアーを始めましょう。森の中に足をすすめると、樹齢200年の榎(エノキ)がお出迎え。長野から静岡を流れる天竜川が長い年月をかけてつくった粘土質の地形も観察できました。

(撮影: Romy)

高木、中高木、低木などが木。地を這う草類。木に巻きつく蔓(つる)性の植物。フジなど他の木を痛めるほど強く絡む蔓性植物は剪定することもあります。

(撮影: 河合千尋)

斜面の切れ目からは地下水脈が吹き出て湧き水が出ていて、ここにわさびを植えたそう。太くなって美味しいわさびに育つのを心待ちにしている大村さん。わさびに興味津々な参加者の子どもたち。大人と子どものワクワクが共鳴した一枚。

(撮影: Romy)

森の中の湿潤環境で育ったキノコを見つけました。私たちが普段「キノコ」として認識しているものは、花で言うと花びらに当たるそう。その下に茎や根に当たる菌糸が広がり、落ち葉を分解して栄養を吸収するのだとか。知らなかった!

(撮影: 河合千尋)

枯れ技を原木にして、しいたけ、えのき、しめじ、なめこ、キクラゲなどを育てている。西風に運ばれて、どこかからキノコが顔を出してこないか密かに楽しみにしているとか。

(画像提供: 大村淳)

こちらはウラジロの葉。葉は瓦屋根のように地面をガードし、茎も地中の水を調整するそうです。それにより横の高木が育つのが守られるのだとか。

お互いの関係性の中でウラジロが瓦屋根のようになったのか、それとも”自分が屋根のようになって木を守りたい”と思ったのか。木と草の関係性を見ながら、「どっちだろうねー?」と、大村さんを交えた他愛のない会話にも慈愛が満ちているのを感じました。

(撮影: Romy)

台風などで土砂崩れが起きた森の一部。土壌の崩落や浸食を防ぐ”しがらぐみ”という方法は水と養分をキャッチする天然のコンポストになる。光が届かず土砂が崩れた場所も、人の手が入ることで日光が届き、新たな芽が顔を出していた。しなやかな復元力がすごい!

(撮影: 鈴木菜央)

続いては畑の観察

畑でも低木、草木類、地覆類など複数のレイヤーの植物を観察することができました。ミツバチが受粉しやすいように巣箱があったり、鳥が木の実を運んできて新たな芽が出ることもあって、植物同士の関係や鳥が媒介となり豊かなフォレストになっています。農薬を加えるのではなく、これらの関係性をアシストするのが人間の役割なのかもしれません。

(画像提供: 大村淳)

栄養を多く必要とする果樹の木の近くにはグミなどの窒素固定植物を。アブやハチが好む植物を植えると害虫も食べてくれるので、結果的に植物を守ることに。病気に弱い梨などを育てるときはその下にレモンバームなどの抗菌作用のあるハーブを植える。お互いがお互いをいかしあっている。

(撮影: 鈴木菜央)

2つの素焼きポットを合わせてセメントで固定し、水を入れた瓶をポットの穴に立てると、土中でじわじわと水が滲み出して水を供給する。この仕組みで2週間程度潤う状態が続くので旅行にも行けちゃうそう。こちらは砂漠の国のパーマカルチャーのアイデア。

(画像提供: 大村淳)

フォレストガーデン脇にある雨水タンク。大気中の汚染物質を含む初期雨水を地面に流したあと、雨樋の中で水が満ちると中にあるボールが浮いて地面に流れる方の道を塞ぎ、タンクに水が流れる仕組みになっている。水道が通ってなくても自然の力の借りればこんなにも頼もしい!

(画像提供: 大村淳)

森の先にある、緑地保全地区の畑です。写真左下は落ち葉のコンポスト。写真右上の木の落ち葉や写真正面の畑の枯葉などが堆肥になり、それがまた新たな作物をつくるのに使われます。ここにも、パーマネント(永続的)な循環を発見!

(撮影: Romy)

大村さんの優しいまなざしに触れ、草木たちが、

おーい、人間のみなさん! あなたたち、自分のことばっかり考えてない? 自分がどう思われるとか、自分だけがいい思いしようとか思ってない? それは一見いいように見えても、それじゃ生きていけないんだよ。森も畑も人間だって、他(者)とつながって生きているんだよ。そのことを忘れないで!

と語りかけられているように感じました。

大自然育ちの私にとって、森や木や畑は当たり前にそこにあるもので特別に感動するものではありませんでした。今回フォレストガーデンに行かなければ、これから先も特に気にすることなく暮らしていたかもしれません。

でも、大村さんの解説を聞いて改めて自然を見渡すと、植物と鳥と虫と菌ってこんなにもつながりあっていてそれぞれをいかしあっているんだ! すごい! っていう感動があったし、学生時代に習った食物連鎖って実はピラミッド型ではなく、本来は循環型なのかもしれないという発見もありました。

そして後日、、、収穫祭のはなし

収穫祭と称しこのツアーで得たものをオンラインで分かち合いました。今回のいでかれメンバーには映像作家もいて、動画にもまとめてくれました。


(動画提供: 常井美幸)

大村さんのフォレストガーデンにインスパイアされて、自分の庭やベランダで小さく始めたい人、田畑付きのシェアハウスの庭を改良しようと意気込む人、保育園や学校で取り組みたい人まで、実際にやってみよう、その経過を応援し合おうとみんなで大盛り上がり。

他にも、植物の多様性に触れ、自分の関わる教育や医療の業界の視座を深める人、人生観が変わって新たな一歩を踏み出そうと意気込む人も。

講義のあとに自発的な見学ツアーが生まれ、写真を撮る人、動画や文章でまとめる人がいて、それぞれの暮らしでのネクストアクションをシェアしていく。コントロールすることがなく、それぞれの自発性が調和をもたらし新たな流れになる。この一連のプロセスがなんとも豊かでした。

”いかしあうつながり”とは、物事や人間関係をつながりのまなざしでみられることなのかもしれない。ツアーを終えて、私はそのように感じています。今回、自然の動植物たちからたくさんのメッセージを受け取って、人と人のつながりもいかしあうつながりのレンズで見ることができたら、これまでと違ったものが見えるのではないかとワクワクしています。ぜひ、日常の暮らしの中の再発見を見つけてみてくださいね。

(Text: 山崎久美子)

– INFORMATION –

共に生きる幸せをデザインできる人になる。いかしあうデザインカレッジ

「共に生きる」生き方とそれを実践する学びの場づくりを追求してきたソーヤー海(共生革命家)と、鈴木菜央(greenz.jp編集長)がタッグを組んで、コロナ後の人生と暮らしのデザインをオンラインで学ぶ場「いかしあうデザインカレッジ」が参加者を募集しています。不明確さと迷いに満ちた時代で、新しい時代の生き方を模索したい人、自分も家族も地域も地球も豊かになれる暮らし方、仕事の仕方、社会のつくり方を学びたい人は、ぜひ参加してください。https://school.greenz.jp/class/ikashiau-design-college/