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いつでもトマトが楽しめる。ホールもピューレも、「自家製トマト缶」のつくり方

パスタにピザ、カレー、リゾット、煮物にスープ、と幅広く大活躍するトマト缶。忙しい時にキッチンの片隅に見つけて「助かった!」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。ジューシーなトマトが蓋を開けただけですぐに使えるなんて、便利ですよね。

食品流通がグローバル化した近年では、便利さや人気の陰に様々な社会問題が隠れていることがありますが、トマト缶も様々です。

誠実なメーカーもある一方で、過度な品種改良や原料の産地偽装、不当労働、児童労働、食品添加物など、本やドキュメンタリー番組などで見聞きした方もいるかもしれません。買う時は選択基準を決めて選んで買う、またそれと合わせて、トマト缶も自作してみるのはいかがでしょうか。

買うことに比べたら手間はかかりますが、慣れたら簡単だし、それに格別においしく感じるはずです。「家庭菜園でトマトがたくさん採れた」とか「農家さんがおすそ分けしてくれた」あるいは「お買い得トマトを見つけた」という時にぜひお試しください。

まずはホールトマト

<使うもの>
・トマト(保存瓶のサイズに入るくらいの量)
・耐熱性の保存瓶(スクリュー式の蓋)
・塩水(3〜4%を目安に塩を水に溶かしておく)

1. トマトを湯むきする

ホールトマトは水分の中で保存するものなので皮をむいておく方がきれいに保存ができます。日本のトマトは大抵どの品種も皮が比較的薄いため、湯むきするかしないかはお好みですが、いずれの場合もヘタは事前に取っておきます。

湯むきは、トマトの先に十字で切れ目を入れてから、沸いたお湯に3秒前後浸します。すぐに氷水に入れ、めくれてきた一部から全体の皮を剥きます

2. 保存瓶に収める

煮沸消毒した保存瓶に湯むきしたトマトを詰めます。大きい場合は1/2にカットしたりミニトマトと混ぜるなどして程よく収めましょう。

3. 塩水を注ぐ

保存瓶の9割ほどを目安に塩水を注ぎ、蓋をします。2〜3日以内に食べる予定なら冷蔵保存で大丈夫ですが、長めに保存したい場合は後述する脱気処理をします。

もうひとつ
トマトピューレのつくりかた

<使うもの>
・トマト(つくりやすい量、1kgくらいがおすすめ)
・土鍋または(アルミ以外の)鍋
・フードプロセッサーまたはミキサー
・耐熱性の保存瓶(スクリュー式の蓋)
・塩 ひとつまみ

トマトピューレは、潰したトマトを煮詰めて水気を飛ばした、濃縮トマトのこと。今回は特別に、以前ブラウンズフィールド中島デコさんに教えていただいた、煮詰める時間を短縮して、味も色も生トマトに近いままにできる方法をご紹介しましょう。フードプロセッサーを使います。

1. トマトの下準備

トマトはよく洗い、ヘタをとって水気を拭き取ります。保存瓶の煮沸消毒も済ませておきましょう

2. トマトを鍋の中で潰す

ちょっと大胆ですが、手で潰します。火を入れた時に破裂しないよう、そして水分がよく出るように、鍋の中で軽く握りつぶします。土鍋を使うのがおすすめですが、ない場合は、アルミ以外の蓋ができる鍋を使ってください。

デコさんに教わった時の様子。潰す時にトマトが飛ばないよう片手で覆うようにします。(画像提供/ The CAMPus)

3. 火入れ

潰したトマトがすべて鍋に収まったら、浸透圧のために塩をひと振りして、蓋をして火にかけます。最初は中火、蒸気が出始めたら弱火にして15分加熱します。一般的な煮詰めてつくる方法だと、水分を飛ばすためにコトコト長時間かかるので、この15分は大変画期的です。

火入れする前。手で潰した大玉トマト1kg分。塩をふりかけて蓋をし、火にかける

15分後。蓋を開けるとしっかり水分が出ていました

4. 濾す

下にボウルを置いてザルに上げ、水分をよく切ります。この工程により、長時間煮詰めることなく、ピューレのためには余分な水分を除くことができる。ザルを斜めにしたりトマトの位置をずらしたりしながらしっかり水分を切ってください

この時のボウルに取れた水分は、ピューレにこそ不要ですが、でもとてもとてもおいしいトマトのエキスですので堪能しましょう。デコさんは寒天などでジュレにするとのことでしたが、カレーやスープの水分として使ったり、冷やしてそのまま飲むのもおいしいです。煮詰めてつくる方法だとこの水分のおいしさも手放していたことになるので、とってももったいない気持ちになります。

フードプロセッサーにかける

水分をきったトマトを10秒ほどフードプロセッサーに掛ければトマトピューレの完成です。

煮詰める時間がない分、トマトの赤みがとってもきれいなままです。冷めてから瓶詰めしてください

脱気の方法

数日以内に使う場合は冷蔵保存で大丈夫ですが、長期間、常温で保存したい場合は、瓶ごと加温して内圧を上げることで空気を抜く、「脱気」処理をしましょう。

<脱気の方法>
用意するもの:
・ホールトマトまたはピューレを9割強ほど詰めて蓋をした瓶
(※蓋は、空気の抜け道のためにきつく閉めず、指先で閉めて軽く止まる位のところまでゆるめにしておく)
・お鍋
・お湯
・ふきん

手順
1) 瓶が安定するようにふきんを敷いた鍋に、瓶を入れる
2) 上記の鍋に、瓶の蓋よりも下の水位までお湯を注ぎ火にかける
3) 15〜20分ほど火にかけてから、火傷しないように取り出して、すばやく蓋をきつく締める
4) 冷ます。冷めていく過程で内圧が下がるので、脱気に成功していれば、冷めた後は蓋の真ん中がほのかに凹んだようになる。

大変熱いので鍋つかみやタオルなどを使って火傷しないように注意してください。(画像左はトマトではなく玉ねぎです)脱気した瓶も直射日光などは避けて保存し、半年ほどを目安に食べきりましょう

買うよりは手間が掛かりますが、この時間をもつことでトマト缶の製造過程や、食の現状を考えるきっかけができ、家庭ゴミも減らせます。そして何よりも特筆すべきは、夏の完熟トマトのおいしさを閉じ込めておくことで、冬の楽しみがつくれること。これまで、トマト缶があってよかった、と思っていた気持ちから「夏につくっておいてよかった!」と自分を誇らしくも思えるはずです。