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そのマスク、海の藻くずとなって…消えません! 身近で気軽なごみ拾いのススメ

レジ袋有料化から1年が経ち、エコバッグ姿が日常の光景になりました。たくさんの企業や個人が使い捨てプラスチックの消費を減らそうとがんばっています。みなさんの周りでも、この1年でいろいろな変化が起きているのではないでしょうか。

しかし一方で、コロナ禍によるマスクやテイクアウト容器などの使い捨てプラスチックは増えてしまいました。減らす努力に加えて回収する努力も続けないと、半世紀以上かけて自然界に蓄積してきたプラスチックごみの総量を減らすことは不可能でしょう。

プラスチック製品を大量生産してきた企業や政府が大規模なプラスチック回収をリードしてくれるのが理想ですが、それを待っているわけにもいきません。そこで今回は、微力だけれど有効な、誰でも今日から始められる「ごみ拾い」のお誘いです。

ごみ拾いをエンタメに

全国には、ごみ回収に取り組むたくさんの素敵な団体があります。多くはローカルで小規模な活動ですが、中にはプロスポーツチームや有名人とコラボして、大規模に展開している団体もあります。その筆頭が、神奈川県・江ノ島を拠点に活動するNPO法人「海さくら」です。

代表の古澤純一郎(ふるさわ・じゅんいちろう)さんは、船の道具屋さんを代々営む家に生まれ、愛する海をきれいにするために2005年に「海さくら」を立ち上げました。「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」というスローガンの通り、従来のイメージを払拭するような面白い企画で、ごみ拾いボランティアのすそ野を確実に広げてくれています。


向かって右が海さくら代表の古澤純一郎さん。YouTube「海さくらチャンネル」より

たとえば、「ブルーサンタ」というイベントには、毎年、さまざまな年齢の500人を超える人たちが県外からも集まります。2020年のメイン会場・江ノ島では、ステージにお笑い芸人やレンジャーが登場。砂浜にはイルカのサンドアートも現れ、子どもたちが目を輝かせていました。

海さくらのヒーロー、「海洋戦士シーセーバー」も参上。右端が古澤さん。

海さくらのイベント会場には、ごみに触れずに済む柄の長い特製トングが用意されています。ごみ袋も支給されるので手ぶらで気軽に参加できます。

海さくらが貸してくれるトングは先がぴったり合う高品質な新潟県燕三条産。トングがあると腰が楽ですし、割れものによる怪我も防げます。

年に一度のブルーサンタの日は、全国各地でブルーサンタの衣装や青いアイテムを身に着けたボランティアたちがごみを拾い、SNSでハッシュタグ #ブルーサンタ を付けて成果を報告し合って盛り上がっています。

2020年は新型コロナウイルスの影響で12月まで延期されたため、写真のサンタたちは厚着ですが、ブルーサンタは本来、「海の日」恒例の夏のイベントです。(※2021年の開催は7月22日。事前申し込みも定員となったようです。来年以降の開催は6月頃に告知予定ですのでご注目ください)

海さくらの16年間の活動の結果、海ごみ拾いは地域の習慣のようになり、古澤さんによると、近所の浜では「毎日、誰かが拾ってくれている」状態。逆に言えば、その頻度で掃除をしていても、ごみが尽きることはないということです。

古澤さん 本当に果てしないですね。いくら拾っても、強い風が吹くたびに、川辺や海底にたまっていたごみが流されてきて、海岸にドーンと打ち上がる。その繰り返しです。このあたりで多いプラスチックごみは、ペットボトルやたばこのフィルター(吸い殻のプラスチック素材の部分)、人工芝、ビーズクッションの中身、それから、粉々になって元の製品が分からないものとか。海ごみの8割は陸からと言われる通り、ほとんどが身近な生活ごみです。

と古澤さん。観光客が多い地域なので、夏は特にごみが増えるそう。なかなかキレイにならないのは辛いはずですが、海さくらの企画は常に陽気でポジティブです。なぜ、古澤さんは「楽しいゴミ拾い」をモットーにしているのでしょうか。

古澤さん 環境に興味がない人たちや街の人たちに伝えないと、何も変わらないからです。ごみが細かくなっちゃって拾えないな、困ったな、とか、一度でも体験すれば「自分ごと」になりますよね。でも押しつけがましいと、誰もごみ拾いになんて来てくれません。とにかく海に足を運んでもらって、潮の香りをかいでもらって、海の快適さや楽しさを一緒に味わってもらえたら、と思って企画を考えています。

2020年のブルーサンタ当日は、SUPボードを漕ぎつつ海の方からSUP隊がやってきて、江ノ島周辺で拾ったホースや釣竿、そして「しょっちゅう拾う」という古タイヤを参加者たちに見せてくれました。また江ノ島に停泊していた帆船「みらいへ」からは船長さんがやってきて、ガラス瓶入りの「横浜港でひとすくいした」海水を見せてくれました。水面にはカラフルなプラスチックごみがたくさん浮いていて、砂浜にいながら海の中の汚染も想像できました。

「きれい」に見える砂浜も実はプラスチックだらけ

2020年のブルーサンタ当日は、しばらく雨が降っていなかったこともあり、会場(江ノ島・東浜)は開始前から拍子抜けするほど「きれい」でした。あまり拾うものも無いなぁと歩いていたら、砂浜に座り込んでいたグループが目に入りました。手に手に金網や「ざる」を持っています。ごみ拾いイベントは、こういう面白い出会いがあるのも魅力なのです。「何をやっているんですか?」と聞いてみると……

ひもで1m四方に区切った中の砂をすくって、ふるいにかけて、小さなプラスチックを拾っているんです。潮の流れや地形の影響で、同じ江ノ島でも浜によって量が違うんですよね。ここは少ない方です。同じ色の細かいプラスチックが散らばっている時は、明らかに大きなごみがその場で砕けたんだな、と分かります。

と、髙田誠一さんが教えてくれました。名刺をいただいたら、湘南クリーンエイド・フォーラムという団体の副代表理事さんでした。そして、もう一つの肩書は「10000ピースプロジェクトチームリーダー」。1万ピース? どういうプロジェクトなのでしょうか。

髙田さん ずっとビーチクリーンをやってきて、砂の中までプラスチックだらけなのは見ていました。無数にあってキリがないから、ある程度にしてそのまま帰るわけですが、いつも気持ちが引っかかっていたんですよね。それで、1m四方は取り切ろうと決めたんです。これを「1ピース」とカウントしてSNSで「#10000ピースプロジェクト」とみんなにシェアして、まずは一緒に1万ピースを目指しましょう!という活動を始めました。

湿った砂はふるいにかけにくいので、掘る深さは、乾いている表層ぐらいで十分。ひもやざるも必須ではなく、だいたい足4つ分を一辺とする正方形の中を手ですくえばOK。「自分が『取り切った!』と納得できたら終わり」という気軽なプロジェクトです。

髙田さんのお仲間には茶漉しや味噌漉しを手に作業している方も。茶漉しサイズなら荷物にもなりませんし、使い古しが家にある方も多いでしょう。この日は、海さくらがいくつも用意してくれていた金ざるを借りました。さっと足元の砂を軽くひとすくい。振るうと、たちまちプラスチックの破片が姿を現しました。砂浜全体を考えたら、とんでもない量です。

手でふたつかみした程度の砂の中に現れた異物は、ほとんどがプラスチックでした。

目が慣れてくると、ごみ発見率が上がってきました。貝殻や木片などは自然界に必要なものなので放置が正解。レジ袋のかすなどプラスチックらしきものを選んで拾いました。しかし、見えないようなサイズのマイクロプラスチックは、当然ながら拾えません。

マイクロプラスチックの実態は謎に包まれていますが、日進月歩の研究によって、不都合な真実が明らかになってきました。衣類のちり、タイヤのかす、あらゆるところから発生した微細なプラスチックが地球を包み、北極から南極まで、どうやら大気も海洋もプラまみれなのです。海のマイクロプラスチックが大気中に巻き上がって陸に舞い戻ってきている可能性もあるそうです(参考文献:栗岡理子『プラスチックごみ問題入門』)。とにかくプラスチックは、細かくなると手に負えません。

目に見えるごみは少ない日でしたが、約1時間で可燃ごみ41袋、不燃ごみ46袋分のごみが回収されました(写真はごみの一部)。その後、神奈川県一帯で行政区域を越えて海ごみを回収してくれる「公益財団法人かながわ海岸美化財団がわ美化財団」の協力で処理されたそうです。

川でも街でも、拾えるうちに拾うのが鉄則

いろいろな行事やイベントがストップしたコロナ禍ですが、皮肉にも、海に来るプラスチックごみの動きは止まりませんでした。むしろコロナ関連ごみが増えたということで、海さくらは、首都圏に緊急事態宣言が出て定例のごみ拾いができなかった2020年の7・8月に「EVERY DAY ゴミ拾い」を実行。有志と一緒に毎朝、江ノ島の浜に通ったそうです。

毎日拾っても朝の20分間で、マスクと除菌シートがこんなに(海さくら公式ブログより)

首都圏がコロナ第3波に襲われた2020年の冬には、海さくらは初めて「ZOOMごみ拾い」を開催しました。各自が好きな場所でごみを拾ってからオンラインで集合する企画です。海なし県に住む私は、近所を20分ほど掃除してから参加しました。

この日に歩いたのは往復で1.5km程度ですが、いくつかコンビニがある影響でしょうか、いくつも容器包装のプラスチックが落ちていました。放っておいたら排水溝や川に入って、海まで流れたかもしれないごみです。

マスク(右上と右下)を落とした人はうっかりさんかも。でも、人家の植木にプラごみ(左上)をねじ込んだ人は確信犯でしょう。短時間で、こんなに拾えました(左下)。衛生面が不安なご時世なので、トングは必携。きちんと密閉して捨てることも大事だと思いました(筆者撮影)

ポイ捨てはそんなにないと信じていたのですが、排水溝を狙って投げ捨てられたと思われる吸い殻や、植え込みの中やフェンスの向こうに隠すように捨てられたごみも多くて、なんだか落胆。自分の街を愛する人がクリーンアップに精を出す理由が分かった気がします。

Zoomにつなぐと、江ノ島で回収されたばかりの大量のごみと参加者の様子をリアルタイムで見ることができました。「全国各地の海がライブで見れる楽しさ」を語る古澤さん。ごみ拾いの新たな可能性が垣間見えた瞬間でした。

楽しく無理せず持続可能な活動を

海さくらのようなエンタメ系から、科学者がリードする調査研究系まで、近年ますますごみ拾いイベントの選択肢が増えてきました。いずれにしろ強制されてやるものではないので、仲間との出会いを楽しみながら、ぼちぼちやるのが長続きのコツではないでしょうか。

海さくらの「BLUE SHIP(ブルーシップ)」サイトでは、最寄りのごみ拾い活動を簡単に探せます。自ら主催者となってイベントを登録するとトングが支給されるので、ごみ拾いチームを率いる方は要チェックです。

海さくらのほかにも、いろいろなごみ拾いプラットフォームや団体・個人のサイトがあるので、最後に、そのリンクの一部をご紹介します。ごみ拾いは基本的に地域密着ですから、きっとみなさんの地元にも、独自の魅力的な活動があるはず。ぜひ探してみてくださいね!

●海ごみ拾いプラットフォーム「海ごみゼロウィーク」 
(春と秋を中心に通年募集中)
●一般社団法人JEAN「クリーンアップキャンペーン」 
(活動は春と秋。秋は「国際海岸クリーンアップ(ICC)」という世界規模の海ごみ調査に参加できます)
●ごみ拾いボランティアSNS「ピリカ」 
(2021年末まで日本自然保護協会の「全国砂浜ムーブメント2021」と連動中)
●NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム 個人・グループ向け「クリーンエイド」
●NPO法人green bird(グリーンバード)による、主に街のごみ拾いのスケジュール
●全国水辺のごみ調査「水辺のごみ見っけ!」 
(2021年は11月30日まで)
●人工知能で浜辺や水辺のごみを自動識別「PicSea」 
(現在の調査エリアは瀬戸内海)
●NPO法人OWS「海洋ごみプロジェクト」 
(イベント募集時に案内が掲載)
●ごみ拾いをパフォーマンスに昇華した「ゴミ拾い侍」公式YouTubeチャンネル
●愛媛の岩田功次さんのホームページ
(離島のすさまじい海ごみの量に圧倒されます)

2020年のブルーサンタ会場で、ごみ拾いイベントの合言葉「海にゴミは行かせない!」を唱和する参加者たち。「感染予防のため心の中で!」と掛け声があり、みんなでサイレンス唱和をしてお開きとなりました。

(撮影: 横田みゆき)