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『プラスチックの海』というタイトルが示す現実。映画で世界中の海を目の当たりにした私たちは何ができるだろうと考えてみた。

レジ袋の有料化も始まり、多くの人がプラスチックごみの問題が身近に迫ってきた感覚を持っているかもしれません。けれども、プラスチックごみが具体的にどれだけ広がり、地球にどんな影響を及ぼしているか、はっきりと認識している人はまだまだ少ないのではないでしょうか。

私たちの手から離れたプラスチックは、長い距離を越え、広い海へ影響をもたらします。

映画『プラスチックの海(A PLASTIC OCEAN)』は、いま地球の海が向き合っているプラスチックの問題を雄弁に物語る作品です。70以上の国で上映され、昨年は短縮版が国連総会でプレミア上映されるなど、世界で注目を集めました。

子どもの頃からシロナガスクジラに憧れ、世界中の海を訪れていた映画監督、クレイグ・リーソン(Craig Leeson)は、プラスチックごみによる海の汚染を調査するため、専門家らと世界の海を調査し、撮影していきます。

海岸に大量に打ち上げられたり、陸から遠く離れた一面の海で漂うプラスチックごみも衝撃的ですが、特に印象深いのは、人間が出したプラスチックにより苦しみ、ときに死を迎える動物たちの姿です。

海鳥の体内からは234個ものプラスチックの破片がみつかり、ウミガメなどの海洋生物も餌を食べたり、自由に動いたりする行動をプラスチックによって妨げられています。

自然界には決してあるはずのない、人間が生み出したプラスチックのために、野生の動物たちは悲鳴をあげています。その声は、地球上で大きな顔をして生きている私たちの心に響いているでしょうか。映画を観ていると、彼らの声なき声を無視してきたからこそ、ここまでプラスチック汚染が進んだのだという現実が迫ってきました。

さらに人間の身体にも、プラスチックは入り込み始めているようです。マイクロプラスチックと呼ばれる5ミリ以下の小さなプラスチック片を5ミリグラム、量にしてクレジットカード1枚分を、私たちは毎週摂取していると言われています。映画では人間の身体に及ぼす影響について調査する様子も、目にすることができるのです。

世界の海は日本につながっている。いま動き始めた変化を後押しすれば、海は変わる。

ただし、映画には日本での状況にはいっさい触れられません。使い捨てのプラスチック容器やペットボトル、レジ袋など、スーパーで少し買い物をするだけでたくさんのプラスチックをごみとして生み出してしまう日本も、この問題を悪化させている張本人です。

日本のプラスチック問題の現状について、国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」のプラスチック問題担当、大舘弘昌さんは、「日本からもプラスチックごみは海に流れ出していますが、それだけではありません」と言います。

大舘さん 日本をはじめとする先進国は、リサイクル処理のためにプラスチックごみを途上国などに毎年大量に輸出しているんです。

根本にあるのは、多国籍企業による大量生産・大量消費に依存したビジネスモデル。その結果、世界中に使い捨てプラスチックがあふれ、最終的に先進国から出されたプラスチックごみが途上国に押し付けられています。中にはリサイクルに適さない「汚れたプラスチック」が多く含まれ、それが原因となって環境や人々の健康を脅かしてもいるんです。

映画では、アメリカのリサイクルの一例が紹介されています。日本で暮らしている私たちは、きちんと分別して、リサイクルに出しているから問題ないはずと思っている人もいるかもしれません。分別を心がけているのですから、そう思っても当然です。では、その実態はどうなっているのか、大舘さんに尋ねてみます。

大舘さん 日本で排出される廃プラスチックは年間900万トンほど。2018年のデータによると、そのうちの56%が熱回収として焼却されました。燃やしてその熱を利用する形で回収されているわけです。モノからモノに変わるマテリアルリサイクルされているプラスチックは23%です。プラスチックごみのほとんどは燃やされています。

日本国内で燃やしたり、途上国へと輸出したり。私たちは、目の前から消してしまって、上手く処理したと思い込んでいないでしょうか。次から次へと便利な使い捨てプラスチックを使用し続けた結果が、世界の海の現状です。“海のプラスチック”ではなく、『プラスチックの海』という、この映画のタイトルに込められた重い意味と私たちは向き合う必要がありそうです。

この映画は、問題の深刻さを声高に叫ぶのではなく、美しい海の光景とそこに暮らす動物たち、世界中で問題に取り組む専門家、そんな姿を真っすぐに映し出すことで、力強いメッセージを静かに訴えてきます。

では、私たちは今から何ができるでしょうか。「私たちにできることはたくさんあります」と大舘さんは言います。

大舘さん 大事なのは、「脱使い捨て」を社会全体でめざすことです。使い捨てプラスチックをなるべく減らし、リユース(再利用)やリフィル(詰め替え)を生活に取り入れることで、プラスチックごみは減らせます。たとえば、裸売りの野菜や果物を購入したり、容器を何度も使用したり(リユース)、購入するときに自分の容器に詰め替えたり(リフィル)、使い捨てプラスチックをなるべく減らす方法はあるのです。

そしてもう一つ、とても大事なことがあります。それは問題の根源にある、大量生産・大量消費の社会システムそのものを変えるために、企業や政府・自治体に積極的に働きかけることです。

直接声を届けたり、地域で協力して活動したりもできますし、グリーンピースなどの環境団体に参加して一緒に変化をつくっていくこともできます。私たちにできることは本当にたくさんあるのです。

マイバッグやマイボトルを持つこともすぐ始められる行動のひとつです。

駅のホームなどにあった、直接口から水を飲むものでなく、最近ではマイボトルに水を汲み入れるための給水器が増えています。全国に給水スポットを広げるための取り組みをしている「Refill Japan」では、全国給水スポットマップを作成しているので、スマートフォンで簡単に調べられ便利です。

10月1日には、新宿御苑にボトル給水器が設置されました。公園では、国内初めてのことです。

まだまだ、日々たくさんの使い捨てプラスチックを使用しているのが現実で、その結果がこの映画に映し出される海です。けれども、少しずつ現実に気づく人が増えて、気をつける人がもっと増えていけば、海をこれ以上汚さずにすむはず。

そんな気づきの第一歩に、そして行動に踏み出す背中を押してもらうために、ぜひ『プラスチックの海』を見てみませんか? 

– INFORMATION –

『プラスチックの海』

2020年11月13日(金)アップリンク渋谷・吉祥寺・京都ほか全国順次ロードショー
監督:クレイグ・リーソン
原題:A PLASTIC OCEAN
配給:ユナイテッドピープル
宣伝:スリーピン
100分/イギリス・香港/2016年
https://unitedpeople.jp/plasticocean/