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今度、高速道路で待ち合わせしない? 撤去できない建物をアップサイクルした、「人と人とをつなぐ」パブリックスペース。

自分の住んでいるまちが、この先の未来、どのように変化していくか想像したことはありますか?

「昔ここは、たくさんの人が行き交っていたんだよ」
過疎化や高齢化が進む地域に行ったとき、おじいちゃん・おばあちゃんからよく耳にする話だと思います。活気のあるまちが、この先ずっと変わらないという保証はないのかもしれません。

そこで今回は、都市空間を再生することによって、まちを将来の世代へと受け継いでいる事例を紹介します!

ロードアイランド州プロビデンス地域で行われたのは、川にかかる大きな高速道路を歩道橋に再生するまちづくりです。この高速道路は、一度撤去されることが考えられていたものの、道路を支えている巨大な柱を取り除くのに多額の費用がかかることが判明。そこで、高速道路の柱をそのままいかす形で、歩道橋への改修工事が行われました。

橋を設計したInform Studioの代表Cory Lavigneさんは言います。

高速道路の広いスペースをいかした歩道橋によって、まちと川の周辺地域にアクセスしやすくなりました。

この歩道橋は、単に渡るための橋ではありません。

人々が仕事をしたり。
あるいは、小さなイベントを主催したり。
まちの景色を眺めたり、ともに時間を過ごすことができるスペースがあります。

もちろん、ひとりの時間を過ごすために、水辺のベンチでゆっくり過ごしてもいいでしょう。橋の上での過ごし方は、それぞれの自由です。

この歩道橋により、周辺地域へのアクセスがスムーズになったことはもちろん、地域住民のコミュニティをつないだり、市民の活動も活発になりました。Inform Studioの、Michael Guthrieさんは言います。

この開発で一番大事なのは、場所と場所をつなぐ機能ではなく、その公共空間が人びとの行き先になることでした。

どの都市も空間開発の課題を抱えていると思います。その解決案を探るとき、このように人びとをつなげるような場をつくるアプローチをできたらどんなに素敵なことでしょう。

公共空間の再開発が進むと、当初は工事費用に莫大な投資が必要になるものの、周辺地域の土地利用や住宅建設が進むことによる経済的メリットもあるのだそう。ミルウォーキーで高速道路を取り壊し市道を建設した際には、2500万ドルの工事費用がかかったものの、それによって生まれた24エーカーの土地を活用し、4倍の1億ドルの投資を集めたこともあったといいます。今回のプロビデンス地域の事例も、工事費用を5〜6年で回収できるのではないかと試算されています。

近年の都市開発は、建物が不足する時代から余る時代になったいま、スクラップアンドビルドではなく持続可能な方法が求められています。そのため、建築物の有効活用や長寿命化を目的とした施設の再利用やリノベーションが世界各国で見られるようになりました。

もしかしたら、理想のまちの未来を追い求めたとき、それを叶える方法のひとつに、施設の再利用やリノベーションがあるのかもしれません。効率化や経済性ばかりを優先させた開発よりも、わたしたちの次の世代へ継承できるまちづくりをこれから考えていきたいものです。

[via INFORM Studio,FASTCOMPANY,公共施設等のリノベーション・コンバージョン,コンバージョンが街を面白くする]

(Text: 亀山咲)