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タネから育てた藍の葉で、暮らしのアイテムを水色にする「生葉染め」のつくり方。

天然の植物を活かして、衣類などを染める「草木染め」。グリーンズ読者の中にはすでに体験したことのある方も多いかもしれませんね。

日頃何気なく目にしている木の枝や葉、もしくは花、草、果実の皮などは、一見ただの茶色や緑でしかないのですが、そこから取り出された色素はピンク系やオレンジ系など鮮やかだったりします。

その意外性や柔らかい色合い、また、染め方によって一つずつ微妙な濃淡が出たり、個性的な模様も好きに付けることもできるなど、自分だけのオリジナルがつくり出せるのも草木染めの大きな魅力。

数ある草木染めの中でも、夏の空がそのまま降りてきたような爽やかな水色に染まるのが「藍の生葉染め」です。

生葉染めの達人に学ぶ

藍の生葉染めについて知るために、毎シーズン楽しんでいるという達人を訪ねてみました。山梨県の甲州にて、畑や田んぼのある暮らしを発信する「ひだまり暮らし」の広瀬靖行(ひろせやすゆき)さん花枝(はなえ)さんご夫妻です。

おふたりはご自宅前の畑でタデアイという品種の藍をタネから育てて、夏が来るたびに服や生活用品などを染めて日々の暮らしで愛用していました。

花枝さん 藍染めと聞くと濃紺をイメージする方も多いかもしれませんが、あれは本藍染、または、正藍染と呼ばれるもので、藍を発酵させて染色を繰り返す職人的なスキルが必要になります。一方で、生葉染めは、発酵や煮出すことも必要なく、摘みたての藍の葉っぱを使ってすぐに染められる手軽さがあります。

同じ藍を活かす染めものであっても、「本藍染め」と「生葉染め」は全く違うものでした。本藍染めのかっこいいい紺色は、思わず手に取りたくなる魅力がありますが、それにはプロの技術に裏付けされたものでもあるようです。

花枝さんと靖行さんも、いつかは本藍染にも挑戦したいと思うものの、現在は生葉染めに魅せられているんだとか。

花枝さん 生葉染めを一言でいうなら、藍の葉っぱで水色に染める染めもの、です。水色になるのは決して藍が未熟なわけでもなく、生葉だからこそ出せるきれいな色です。藍の発色のメカニズムは他の植物と異なり、水に溶け出すものではないため煮出す必要ありません。生葉染めのシーズンは真夏ですが、暑い日でも作業がしやすいくて、それも染め物としてのハードルを下げてくれていると思います。

お二人の畑の藍。色素があるのは葉が成長する7月頃から花が咲く9月頃まで、と季節限定でもあり、まさに夏の色。

全ては「ご縁あって分けていただいた藍のタネを畑に蒔いたことから始まった」と言うおふたり。初めて染めた瞬間から強く魅せられて、今では毎年、衣類や生活用品を染めるようになりました。また、その楽しさを周りにも伝えようと、シーズン中には希望者向けにワークショップも開催しています。

靖行さん ひだまり暮らしでは、畑とつながる暮らし方を提案してます。そのひとつに、我が家の暮らしの手しごとを一緒に体験してもらう機会として藍の生葉染めや、味噌仕込みや漬け物などの保存食づくりをしています。

自分の手を動かして、自分でやってみることで、大変だけど楽しいし、職業でやってる人への尊敬や、物に対する感謝も感じられて、それがほんの少しだけ何気ない毎日を豊かにしてると思うんです。実際に僕たち自身が楽しさを実感しているので、よかったら一緒にやってみる? っていう感じで開催しています。

花枝さん 一般的な草木染めは染液をつくるのに時間がかかりますが、生葉染めは水とミキサーがあれば初めてでも自分で染液をつくることができるんです。もちろん私たちもそばでエスコートしたり、疑問に答えたりしますが、基本的には全行程を自分でやってもらうことがとても大切だと思っているので、畑から葉を収穫することもやってもらっています。

初心者でもすべて自分でチャレンジできるって嬉しいですね。早速、生葉染めのプロセスを教えていただきました。

1. 染めるものを決める

定番はTシャツ、手ぬぐい、トートバッグなど。今ならマスクも良いですね。染料はタンパク質に反応することで色素が定着するため、絹や羊毛といった動物系繊維がよく染まります。また、綿や麻などの植物系繊維を染める場合は、色の定着を助ける助剤(じょざい)が必要になりますので、扱いやすい助剤を用意しましょう。

また、ゴムや紐などを使って生地を縛ることで、その部分だけは染液が触れず白い模様をつけることができます。仕上がりをイメージしながら、染めるものを準備しましょう。

2. 水に濡らす

染めるものを用意したら、水に浸けます。事前に満遍なく水を入れることで染色液が入りやすくなります。ゴムで止めた箇所が外れないよう気をつけながらも、むらなく浸します。

3. 葉を収穫

水につけている間に藍の葉を収穫します。水で軽く洗ったあと、染料をつくるための葉っぱだけを取り分けます。

4. 染液をつくる

葉は水と一緒にミキサーにかけて、青汁のような状態にします。ネットでさらに葉を漉して絞り、液体のほうを染液として使います。

ひだまり暮らしの畑は農薬や肥料を使わず籾殻などすき込んでいるため、この絞った葉なども、最後に藍の畑に撒きました

5. 染めるものを浸ける

いよいよ染めです。水を通しておいた染めたい物を、一旦絞ってから染色液の中へ浸します。染めずに模様を出したい部分に染液が触れないように気をつけながら、また逆に、水色に染めたいところは染液の水面から浮いてこないようにしっかりと沈めます。浸ける時間は15分ほどでOKです。

6. 空気の酸化で色素定着

藍は2段階の酸化によって発色・定着します。まず最初の発色は、染液が空気に触れる空気酸化から。15分ほど浸けたら染液を絞り、模様付けのゴムやビニールを外して広げ、満遍なく空気にさらします。染液から取り出した時は緑が強く、それが空気に触れていくことで鮮やかな水色が射してくることを見守る瞬間です。

7. 水中の酸化でも色素定着

続いて2段階目の色素定着は水中での酸化です。先ほど空気に当てたものを、今度は水にくぐらせて、さらに水色が強まる変化の瞬間がおとずれます。生葉染めのハイライトですので、お見逃しなく。

8. 水洗い、乾燥、完成!

最後にもう一度よく洗って余分な染色液を洗い流します。他の洗濯物に色移りなどしないようしっかり最初に洗い流すことで定着。生葉染めの完成です!
藍の発色の性質上、繊維に定着した後は色落ちはせず、多少の日焼けなどで薄くなっていく程度だそう。もちろん翌年以降に染めを重ねることもできます。

生葉染めをしてみて
気づくこと、見えてくるもの

花枝さんと靖行さんは、生葉染めを自分たちで実践し、且つ、周りに伝える活動を通して、大きな意識の変化が起こることに喜びがある、と言います。

花枝さん 生葉染めは、初めてでも楽しそうにとてもいきいきと取り組んでくれる方が多くて、皆さんの表情を見てるだけでも嬉しいのですが、何よりも自分の手で染めることで物に対する愛着が深まり、それが行動の変化にもなるようなんです。

たとえば、自分で水色に染めたエコバッグに愛着が湧くと、自然とエコバッグを使う頻度が高くなります。世間でレジ袋が有料化したから渋々使うのと、自らの意思でエコバッグを持ち歩くのとでは、些細なことだけど日々の喜びは全然違うものですよね。

また、生葉染めをきっかけに繊維や衣類に興味が出たり、綿も藍も畑で育つものだと再認識できます。普段お洋服を買う時に、原材料が畑の土で育ったことを思い出すことはあまりないとは思いますが、その認識をもつことで、化学繊維や農業のことにまで興味を持ち、自ら調べようとするなど、社会課題を自分ごとにするきっかけになるようです。

靖行さん 僕たちはたまたま畑というスペースがありますが、藍はとても強いのでプランターで育てることができます。以前ワークショップがきっかけになってプランターで藍を育て始めた方が、翌年は自分で収穫した藍の葉を持ち込んで一緒に生葉染めをしたり、さらにプランターの藍からタネを取って友達に配りたいと言ってくれる人もいます。

こうした活動を始めた時から、僕らが楽しんでることに共感してくれる人が増えたり、暮らしを変化させ始める人が増えたらいいなぁと願って続けてきたので、そうやって主体的に動き始める人がいるのは僕らにとっても大きな喜びです。

生葉染めは「暮らしを良くすることにつながる手しごと」とおふたりが感じているように、体験者の意識にも良い変容が起こるようです。藍のもつ力がそうさせるのかどうかは分かりませんが、暮らしを変えようとする理由やタイミングは様々なことがきっかけになりますね。

実際おふたりのワークショップで生葉染めを体験すると、多くの方が「来年もやりたい」と口にするそうで、今回わたし自身も「ぜったいぜったい、来年もやりたい!」と強く感じました(笑) なぜなら前日まで捨てようと思っていたTシャツが一気にお気に入りの一枚になったり、この半年ぜんぜん慣れなずにいた新習慣のマスクも、自らつけるのが嬉しく感じたりと、この変化に自分自身が一番驚いています。

「ひだまり暮らし」では、また来春も藍のタネをまき育てる予定とのこと。身近にある植物を活かし、暮らしに旬を取り込む楽しみがこれからもどんどん広がっていきそうです。

(写真提供: ひだまり暮らし)