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雪深いけど“人の温もり”がつながる土地なんです。福島県・磐梯町が目指す、「共創協働」のまちづくりとは #仲間募集

グリーンズ求人での募集期間は終了しました。募集状況は磐梯町役場にお問い合わせください。

みなさんは福島県が、日本で三番目に広い県だということを知っていますか? 一番は言うまでもなく、北海道。二番目は岩手県。そして、三番目が福島県です。

私は横浜市から福島県に移住して今年で丸5年になりましたが、その広さに、未だに圧倒されています。大雑把に言うと、福島県の面積は、私の住んでいた神奈川県4個分。県内に市町村は59もあります。5年住んでいても、行ったことのない地域の方が多いのです。

今回の「グリーンズ求人」の舞台となる磐梯町(ばんだいまち)も、初めて足を運ぶ地域でした。

初めて名前を聞く人が多いと思いますが、いま、この磐梯町で新たなチャレンジが続々と始まろうとしています。そして、その担い手となる地域おこし協力隊を募集します。
まずはどんな町なのか、一緒に見ていきましょう。

縄文時代から、磐梯山の恵みを受けているまち

磐梯町にそびえる磐梯山(ばんだいさん)。福島県にはその名も「会津磐梯山」という民謡があり、夏祭りなどによく歌われます。

福島県は、地形や気候で、大きく3つの地方に分かれています。太平洋沿岸部の「浜通り」、新幹線が通り、県庁のある中央部の「中通り」、そして数年前の大河ドラマ「八重の桜」の舞台になり、新潟県に面した「会津」です。

磐梯町は会津地方に位置し、冬は雪が多い地域。12月下旬から3月上旬までは、家の前から道路までの雪かきを多い時で週に3~4回行います。後述する、除雪はエクササイズであるという考え方「ジョセササイズ」なんて言葉が生まれるほど、雪深いまち。

訪れた日は12月上旬。すでに雪が積もり、美しい磐梯山を望むことができました。

「今日は天気が良くてよかったですね」

渋く艶のある声で話し出したのは、2019年6月に民間から磐梯町の町長となった佐藤淳一さん。佐藤さんの視線の先には、まぶしく陽射しが降り注ぐ、雪の積もったサッカーグラウンドが。なるほど確かに、雪景色を最高に輝かせるのは、青空と太陽の光なのだなぁと納得。

そして、このまちの魅力を「とにかく水がきれいでおいしいこと」と話す、町商工観光課の職員で、「日本ジョセササイズ協会」会長の鈴木孝之さん

今回は、この二人に磐梯町の今とこれからを伺いました。

磐梯町長の佐藤淳一さん(右)と「日本ジョセササイズ」会長の鈴木孝之さん(左)。

取材場所は「LivingAnywhere Commons会津磐梯」。リモートワークのために開かれた場所で、ワーキングスペースや図書室、ドミトリースペースなど、わくわくする空間が広がっています。

もとは企業の保養施設だった施設を町が引き継ぎ、2019年4月から、町民や外部から磐梯町に滞在する人を巻き込んだ場づくりが行われており、今回の求人には、この施設のコミュニティマネージャーも含まれています。

「LivingAnywhere Commons会津磐梯」のワーキングスペース。協力隊員も自由に利用できる。

地元の人に、地元のよさを「発見」してもらうための外部の力

磐梯町には日本名水100選に認定されている湧水があり、その水の恵みはまちを潤しています。

鈴木さん 私は静岡県出身で、約20年前、22歳の時に磐梯町に来たのですが、蛇口から出る水がこんなにおいしいのか! と衝撃を受けました。水に恵まれていることは、本当に幸せだと思います。

磐梯町生まれ・育ちながら、父の転勤や自身の仕事で福島県内各地や東京に住むことも長かった佐藤さんも、「ずっと磐梯町にいなかったことがよかったんですよね」と話します。

佐藤さん でもずっとまちにいると、水がきれいなのも、山が美しいのも当たり前。その価値に気付くことができずに、都会から新しいものを持ってこようとしてしまうんです。

私は高校卒業後、進学・仕事で東京に出た後、1993年に会津に戻り、そのあと磐梯町に家を建ててこのまちに住んでいますが、一度外に出たからこそ、まちの夕暮れの美しさ、四季がはっきりしているところ、しんしんと降り積もる雪の音……。そういったものが素晴らしいものだと再認識できていると思うんです。

地域おこし協力隊として入ってくれる人たちには、まちの人たちに「磐梯町は素晴らしい」ということを発見してもらうための役割も担ってもらえたらと思っています。

一方で、全くのよそから磐梯町に入ってきた移住の先輩である鈴木さんは、まちの人をどう感じているのでしょう。

鈴木さん ほぼ誰も知っている人がいない中でまちに来たので、まちの人たちははじめ警戒心を抱いていたと思います。ただストレートに、まちに入っていこう、まちのよさを伝えていこうという視点を持って行動していくことで、まちの人もあたたかく迎え入れてくれるようになりました。

地縁や地元のコミュニティの結びつきが強い中で、よそから来た人間だからそこに入っていける部分もあるんです。ただ、受け身だと厳しいので、開拓精神を持った人だといいと思いますね。

磐梯町が目指す、「共創協働」のまちづくり

磐梯町ではまちづくりの基本理念を「自分たちの子どもや孫たちが暮らし続けたい魅力あるまちづくり」と掲げ、町民をはじめとする各分野のプレイヤーと連携・協力しながら「共創協働」のまちづくりに取り組んでいます。

佐藤さん 磐梯町は人口が約3500人、役場の正職員も80人程度です。私が2019年6月に町長に就任した後すぐに、正職員全員と面談をしました。

私は、町民一人ひとりが親戚というか身内だと思っているんです。職員は家族ですね。そう職員に伝えて、親戚だと思えば自ずと、役場はその人に合ったサービスが提示できるはずだと思っています。

佐藤さんは長らく「星野リゾート」で働き、地元で「磐梯リゾート開発株式会社」の取締役総支配人まで務めた経歴があります。その後、磐梯町観光協会長、町会議員を経て、町長になりました。そういった経験から、職員にも「質の高いサービス」を求めているのでしょうか。

佐藤さん 「サービス」と言い切ってしまうと、「提供する側=職員」「受ける側=町民」と立場が生じてしまいます。私は、職員も町民も立場は対等だと思っているんですね。

だから、親戚や身内だと思って接することで、縦割りではない、一人ひとりに合った情報を示してほしいと思うんです。職員たちは戸惑っているようですが、昔はそれができていたし、今、こんなに人口規模が小さいまちだからこそ、きめ細やかな対応ができるはずなんです。

その思いは、「共創協働」のまちづくりにも通じているようです。

佐藤さん ここで育った子どもたちが、磐梯町に戻って来てくれる仕組みづくりとして、幼小中一貫教育や磐梯版ネウボラ(※)など、子育てに関しては一貫した制度を敷いています。

それぞれの子どもにカルテをつくり、病院や教育機関などで情報を分断しない、一人の子どもをまちで手厚く育てるということです。これは、人口が少ない、地方のまちだからこそできることで、都会ではなかなかできません。

(※)フィンランド語で「助言の場」という意味で、子どもの義務教育終了まで支援をおこなう制度。

確かに、まちで大切に育てられた子どもは、まちに愛着を持ち、進学や就職で都心に出ても戻ってくる可能性が高くなる気がします。

佐藤さん ただ、戻って来ても、仕事がなければ暮らしていけません。磐梯町は周辺の町と違い、一次産業の農業、「日曹金属」やカメラメーカー「シグマ」の工場があることで工業、そして「アルツ磐梯」をはじめとしたスキーリゾートの観光業と、実は働く現場もそろっているんです。昨今、企業も採用が難しい場面もあるので、そこはまさにまちと企業との「共創」ということになります。

外から来た人に対してはどうなのでしょう。

佐藤さん 正直言って、人口を増やすことは相当難しいです。だから私は、もう人口は維持することに注力して、その代わり磐梯町に関わる人が増えてほしい。

住まなくてもいい、滞在したり、度々訪れたりする人が増えて、まちの人に刺激を与えてくれれば、まちに暮らしている人も楽しくなって、地域が活性化します。新たに入って来てくれる人には、そういったまちの魅力を発見してもらうことを期待しています。

磐梯町で取り組まれている、共創協働の事例って?

実際に磐梯町で取り組まれている共創協働の事例が「ジョセササイズ」です。「ジョセササイズ」とは、「除雪は労働ではなくエクササイズなんだ!」という考え方です。

鈴木さん 磐梯町は12月下旬~3月上旬くらいまで、出勤する前には、家の前から道路まで除雪しないと出かけられない。そんな日々の除雪をエクササイズとして捉える「ジョセササイズ」を思いつきました。

仲間たちと日本ジョセササイズ協会を設立し、自分たちがジョセササイズを楽しむことから始まり、除雪を必要としている年配の方が喜んでくれたり、「ジョセササイズ」をきっかけに雪国に来てくれる人が増えたりと、周りの人を幸せにできるエクササイズになっていきました。

そんなことをやっていたら、メディアに取り上げてもらえて、この活動がまちづくりに生かせた、という感じですね。

日本ジョセササイズ協会のウェブサイトにはウォーミングアップの動画や腰痛にならないためのコツなどが掲載されていて、フィットネススタジオなどの協力や、大手スコップメーカーからスコップの協賛など、まさに共創協働によって進められています。

ほかにも、磐梯町で取り組まれた動きがありました。

鈴木さん 2016年に、和歌山大学経済学部の大澤健(たけし)先生を招いたワークショップを行ったんです。ちょうど、観光のあり方として「観光客がその地域ならではのものを求めてやってくる」という着地型観光の考え方が主流になってきていました。

ただ観光を使ってまちをつくっていくと言っても、まちの人はなんとなく町に無関心な感じだし、まちへの思いを表現できる場もなかった。なので、自分が感銘を受けた大澤先生を呼んで、直にまちの人に話を聞いてもらおうと思いました。

ワークショップの様子。

ワークショップには10代~70代まで、幅広い世代の人たちが多く集まったそう。

鈴木さん その中での、大澤先生の話が痛快で。町主催のイベントなのに、「行政は観光を主導するには最も適さない」と。でもその言葉で、参加した町民は「そうか、やるのは町じゃなくて自分たちなのか」と気づいたと思うので、魔法の言葉だったのかもしれないですね。

そのワークショップから、湧水や坂道、農産物や「シグマ」の工場など、磐梯町の資源を生かした5つのプロジェクトが立ち上がり、4つが動き始めました。

鈴木さん 楽しくなくなったらやめてもいい。やめるもやめないも自由。そういったスタンスで活動を始めました。

佐藤さん 自分たちの力で活動ができているという成功体験、自分たちが楽しいというメリットや自分の思いが自分だけのものではなかったという気付きがあったことなどが、このワークショップの成果だったと思います。

「こうしたい」という思いを生かそう

そんな磐梯町で、ともに町を盛り上げてくれる地域おこし協力隊を募集しています。
職種は下記の6つ。

1. 地域の中と外をつなぐコミュニティマネージャー
2. 磐梯町のファンづくりにつなげる、ふるさと納税のプロデュース
3. 若手農業者たちとともにチャレンジする新規就農
4. 安心して幸せに暮らせる里山をつくる鳥獣害対策
5. 観光客に磐梯町全体を楽しんでもらう 、観光まちづくりコーディネーター
6. 磐梯町駅舎を関係案内所に変える、駅舎の運営
(詳しくはこちら。)

まちとしても、こうした活動に取り組む地域おこし協力隊をサポートしていきたいと言います。

佐藤さん 出る杭は打たれませんよ。むしろ伸ばします。協力隊を一人にさせないよう、来てくれる人の思いとまちの思いを合致させるのがまちの段取りで、まちは完全に裏方です。

なので、来る方も、目的を明確にして「こうしたい」という思いを持って来てほしい。役場の業務をサポートするというつもりではなく、自分のやりたいことを明確にして、来てもらいたいですね。

6つの職種を提案していますが、ほかにやりたいことがあれば、それでもいい。その目的を共有する機会をつくるし、きちんとまちの思いと合致していれば、極端な話、募集要項にハマっていなくてもいいんです。

鈴木さん 募集要項で書かれている情報は限られているので、実際に来てみないとわからないことも多いと思います。どんな目的で何をしたいのか、それがすり合わせできればいいと思います。そうでなければ自身の思いは果たせないし、目的も達成できない。自分が楽しくなければ、まちのみんなの意識を変えることもできないじゃないですか。

なので「こうしたい」という思いがある人に来てもらいたい。そうでなければ、来てからが大変かな、と思いますね。

目的を共有する場と言っても、担当者などを通さずに、直接町長に話す場面なんてあるんでしょうか?

佐藤さん 協力隊の担当課は、役割によって変わりますが、基本的に町長の周りを担当する課になるので大丈夫です。メールでもFacebookメッセージでも、会いに来てもらっても構わない。むしろ、直接ガンガン来てほしい。そしてまちの課題を共有してほしいですね。

まちの人の思いを掬い上げていって、「一緒にやろうぜ」と思ってもらえる人に来てもらえたらと思います。

そうは言っても、町長や役場職員と、実際に町で一緒に活動する町民とは思いが違うのではないか、距離があるのでは、と感じている人もいるかもしれません。

私も横浜市に暮らしていた時は、市役所職員も、ましてや市長なんて遠すぎる存在でしたが、地方都市の小さいまちは驚くほど役場が町民と近い存在で、トップに立つ町長の人柄や思い入れで大きく町政が変わることすらあります。(実際に私は、この取材の直後に佐藤町長にFacebookで友達申請したところ、即承諾。取材から1ヶ月たつ今でも、私の投稿にまめに「いいね!」してくれています。)

そう思うと、民間から行政に転換したばかりの佐藤さんのいる磐梯町は、町長とともにいろいろなことに挑戦できるという、大きな可能性と伸びしろのある地域だと言えるのではないでしょうか。あなたなら、磐梯町で何に挑戦してみますか?

– INFORMATION –

1月19日(日)に東京で佐藤さんと鈴木さん、またfacinate株式会社代表の但馬武さんをゲストに迎えてgreen drinks Tokyoを開催します。テーマは「観光資源を活かしきるまちづくり戦略」。直接、磐梯町について聞けるチャンスなので、興味のある方はぜひご参加ください。

詳細・お申し込みはこちら

(写真: 中村幸稚