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ブライトン大学発、資材の約90%をゴミでまかなった「Waste House」が実証するのは、「無駄なものなんてない、ただ間違った場所にあるだけである」ということ。

突然ですが、まずは上の写真を見てみてください。

一見何の変哲も無い家。黒がベースのお洒落な家に見えます。

実は、この家は20,000本の捨てられた歯ブラシと2,000枚の捨てられたカーペットタイル、4,000本の捨てられたDVDケース、そして2,000kgのジーンズを使って建てられました。つまり、ゴミでできた家なのです!

この家は、「Waste House(廃棄物の家)」と名付けられ、2014年4月、イギリスのブライトン大学のキャンパス内に建てられました。建てたのは、建築家のDuncan Baker-Brown(以下、ダンカンさん)。大学のプロジェクトの一環として、建設資源の約90%を、家庭廃棄物(家庭で出るゴミ)と建築廃棄物(建物を建てる時に出るゴミ)で建てました。

「ゴミでつくられた家なんて」と思われるかもしれませんが、なんとこの家はヨーロッパ初の”永久的な建築物”と言われており、実際に建築する際の法的規定もクリアしているのです。

ダンカンさんは

ゴミから小屋や一時的な建築物を建てたプロジェクトはありますが、完全な建築規定やその建築計画が承認を得たのはヨーロッパで初めてです。

と話します。

では、建物の様子を詳しく見ていきましょう!

まずなんといってもこのお洒落な壁。実はこれ、裏返しに向けたカーペットタイル。約2,000枚使われています。

Via dezeen.com

またいたるところにある「小さなのぞき穴の窓」により何が使われているか明らかに。

断熱材がぼろ布からつくられたことを示す「小さなのぞき穴」。 Via BCC

レンガが歯ブラシからつくられたことを示す「小さなのぞき穴」。Via BCC

外観だけでも廃棄物だけでつくられたことに驚きますが、なんと言ってもこの内部! 清潔感があり、広々とした空間があります。

「Waste House」内部の様子。Via dezeen.com

この「Waste House」は、大学でサステナブルデザインなどを学ぶ学生が使用し、持続可能なテーマのデザインワークショップやイベントを開催するためのコミュニティスペースとして利用されています。

ほとんどが廃棄物でできている「Waste House」。ダンカンさんは何故この家を建てたのでしょうか? それは、埋め立てに向けられた材料を使用して、永続的な建物を建てられるかを実証すること。「無駄なものはなく、ただ間違った場所にあるだけである」と証明することでした。

廃棄物や余剰材料といったものは、本当はありません。それは間違った場所にあるだけです。それを再利用することで、そもそも大量の原料を採掘する必要性を減らすことで環境資源を節約します。

と話す、ダンカンさん。

実は、

英国では5軒の家を建てるごとに、廃棄物1軒分が埋め立て処分されます。

のだとか。つまり、家を建てる時に使われる建築資材の中から、20%分が廃棄物となるのです。「Waste House」を通じて、通常は埋め立て処分される廃棄物が建設に使用できることが証明されました。

ダンカンさんは、こう続けます。

この家は全国的にも世界的にも大きな関心を集めており、プロジェクトから学んだ教訓を廃棄物や二酸化炭素排出量の削減、地球温暖化対策のために建設業界で採用できると確信しています。

「Waste House」は、無駄なものなんてないと教えてくれます。行き場をなくした使い捨ての歯ブラシや使い古した服や布団も、もしかしたら何か使い道があるのかもしれない、そう思わせてくれるのです。

自分の家が廃棄物でできる未来はまだ少し先かもしれませんが、環境のために今、私たちにもできることがあるはずです。ぜひこの機会に何ができるのか考えてみてはいかがでしょうか。

[Via YUP, dezeen.com, Brightonwp.com

(Text: 田中絃正)