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ライターは責任重大で、けっこう大変。でも、めちゃくちゃやりがいがある。私が改めて考える「書く仕事」。

こんにちは。海ライター・海洋ジャーナリストの瀬戸内千代です。greenz.jp編集部とは、かれこれ8年ほどのお付き合いになります。

普段は主に、フリーランス記者として雑誌記事やウェブニュースを書いたり、各種媒体の編集やライティングをしたり、海関係の財団やNPOの編集作業をお手伝いしたりしています。最近は、やや報道寄りの仕事が多めです。今回せっかくの機会をいただきましたので、改めて、「書く仕事」について考えてみました。

2013年冬、自転車で三浦半島を取材。あの日の空気感を思い出すだけで幸せに。

レンタサイクルで気ままな三浦海岸めぐり。ワンコインで一日楽しめる「みうチャリ」
https://greenz.jp/2013/12/08/miuchari/

いま、コンピューターに「かくしごと」と入力したら、「隠し事」と変換されました! しかし、書く仕事ほど隠し事ができない仕事はないと思います。

なぜなら、知識不足も無知も、文章を書くと、恐ろしいほど露呈するからです。冷静で客観的な記事を書いているつもりでも、情報を取捨選択している時点で、わずかながら私情が入り込みます。自らの不勉強や偏見を隠せない、明け透けな仕事なのです。だから、どこまでいってもゴールはなく、しばしば、生きる姿勢まるごとが問われているように感じます。

2017年秋、ファシリテーターの芝池玲奈さん(左)にお時間をいただきインタビューしました。greenz.jpから同行してくれた飛田恵美子さんが、いつの間にか撮ってくれていた貴重な1枚。

変化はコミュニティの分断を越えた人のつながりから生まれる。イノベーション・ファシリテーター、芝池玲奈さんに聞いたまちづくりの秘訣
https://greenz.jp/2017/09/29/shibaike_rena/

この仕事に就いて10年、今でも私は、これは人様にお見せして良い文章なのか、どこかにミスが隠れていないか、提出前に何度も躊躇します。何十回も推敲を重ね、悩みに悩み、締め切りが立て込むと、身も心もすり減ります。

そんななかでgreenz.jpは、思い詰めずに書ける貴重な媒体なのですが、それでも「楽ちんに書けちゃった!」という回は一度もありません。少し会っただけで、その方の大切なプロジェクトや生き方を広く発信するわけだから、その責任は重大です。

ライターとして独立する前、結婚式場で、ブライダルアルバムの編集をしていた時期があります。greenz.jpは、ライターがカメラマンを紹介することもウェルカムというおおらかな媒体なので、当時の仕事仲間たちと一緒に仕事する機会も。この2016年の記事の撮影は、カメラマンの伊月亮太君。上手なので、後日、取材先の鈴廣の広報さんから「写真を社内報に使わせてください」とご連絡がありました。

ふるさとは未来からの借り物。「鈴廣かまぼこ」副社長・鈴木悌介さんが始めた経営者たちのエネルギー改革
https://greenz.jp/2016/12/21/suzuhiro_enekeikaigi/

でも辛いかと言うと、これが、「やりがい」しかないのです。会う方どなたにも魅力があり、体験からにじみ出る宝物みたいな言葉をくれます。そして、書いたものは媒体に残り、場合によっては何年も見ず知らずの誰かに何かを届けることができるのです。

ライターになる人は、ある程度、書くことに自信がある人が多いと思います。でも、だからこそ、扱うテーマは慎重に選ぶ必要があるのではないでしょうか。発信力があるなら、なおさら、方向を間違うと危険です。ヘイトスピーチのような有害な読み物を世に出すぐらいなら、書かないほうがいい。私は本心から、そう思います。

時としてライターは、頼まれるままに書いてしまうこともあると思いますが(過去の反省も込めて)、書き手として働く以上は、自分の中に柱を立てたほうが良いと思います。ちなみに、私の場合は、大げさなようですが、続く世代の幸せにつながるかどうかが判断基準です。

こちらも、2016年に旧知のプロカメラマンを誘って取材。多摩まで来てくれたのは、カメラマンの横田みゆきちゃんです。明るい彼女のおかげで撮影中も笑いが絶えず、その雰囲気が伝わったからか、なんとこの記事がきっかけで、3年後の今年(2019年)下記の本が誕生しました!

森と人の仲介役として生きる。東京・奥多摩っ子の土屋一昭さんが、ふるさとで始めた「森の演出家」という仕事とは?
https://greenz.jp/2016/01/26/mori_no_enshutsuka/

昭和29年創業の京都の老舗出版社「化学同人社」から間もなく発刊となる『「森の演出家」がつなぐ森と人~五感を解き放つとっておきの自然体験』。主人公の土屋さんはパソコンをやらない「野生児」キャラのため、改めてのロングインタビューを経て、私が代筆しました。担当編集者さんがgreenz.jpの上記の記事を読んで、お声がけくださって実現した本です。グリーンズに感謝!

あと、どんな人が書き手に向いているか、と言えば、自分は向いていないのを承知で書きますが、読むのが速い人は有利だと思います。何かを書くとなると、調べなくちゃいけないことや、読むべき本が山積みだからです。私は読書が遅いし、しつこく推敲するタチなので、寝る時間を犠牲にしがち。めちゃ好きな仕事だけど、この点は、おすすめできません。フリーランスなので全ては自己管理次第ですが、まだまだ私は修行中です。

10年ほど前に独立してから、私の名刺の肩書はライター、環境ライター、海ライター、海洋ジャーナリストと脱皮を続けています。大学生の頃までは、活字と同じぐらい好きな海の生き物と向き合う時間が長く、海洋動物学者を目指していました。その余韻で、書き手としても海へ、海へと、にじり寄っているわけです。そして最近ようやく、仕事で2つの夢がドッキングする至福の瞬間が増えつつあります。

ホタテペーパーでつくった最近の名刺と、パスケースに入れてお守りにしている25年前の鍋田湾(静岡県下田市)の写真。大学時代に1年間、海辺の実験所に住み込みでナマコの研究の真似事をしました。そのころ目の前に広がっていた光景です。

あと、ジャンルに関わらず、これまでの取材で出会えた人や思い入れのある土地とのつながりを、細く長く保ち続けたいという野望も持っています。全国各地に出かけられるこの仕事は、旅好きにはたまりません。ただ、自主的な取材には旅費が必要なので、目の前の仕事は地道に頑張らねば。怠惰な自分にムチ打つ日々です。

瀬戸内海に浮かぶ伊予大島の海。この島が、今は亡き祖母のふるさとです。私の心のふるさとでもあります。

今回は僭越ながら「作文の学校」の「講師」という役目をいただいたので、これから書く仕事を始める方に、何かをお渡しできたらと考えました。そして思い浮かんだのが、「鳥肌」です。鳥肌、それは感動です。魂の震えです。なんか笑えますけれど、この生理反応、結構、ポイントではないでしょうか。

みずみずしい感性があれば、取材先の一つ一つに没頭できます。疲れ過ぎていたり、感性が鈍っていたりすると、目の前に良い素材が転がっていても拾えません。心身を大事にしましょう。これまた自戒を込めて。

ライターは、感謝と感性と、少しの技術が備わっていれば、誰にでもできる仕事だと思います。見たところ需要はかなりあるので、書く仕事に興味がある方は、迷わず進んでいただきたいです。字数が尽きました。続きは「作文の学校」で語り合いましょう!

瀬戸内千代(せとうち・ちよ)
https://namako.jimdo.com/about-me/

– INFORMATION –

2020年1月18日(土)よりスタート。瀬戸内さんもゲスト講師として参加! greenz.jp副編集長による文章力アップゼミ「グリーンズ作文の学校」

月間30万人が訪れるgreenz.jpの副編集長スズキコウタによる「グリーンズ作文の学校」。greenz.jpに掲載する全記事の校正に関わる副編集長が講師をつとめる本ゼミクラスは、これまで全期満員御礼、総受講者数100名突破、地方から開催要請もある人気ぶり。この度、豪華ゲスト講師を迎えて、第5期の申し込みをスタートします! お申込みはお早めに!
http://school.greenz.jp/class/sakubunzemi/