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「シューマッハ・カレッジ」で体験したのは、座って聞くだけじゃない、体から知性を取り入れ、感じたことを動きで表現する授業だった。#ソーヤー海の共生家革命日記

ハロー! ソーヤー海だよ。今回は前回の続きで、「Schumacher College(シューマッハ・カレッジ)」の体験を紹介するよ。前回はシューマッハカレッジのアウトラインやヘレナ・ノーバーグ=ホッジの話をシェアしたけど、今回はそのほかに体験した講義を紹介するね。

今回体験したもうひとつの「経済」のセッションは、ジョナサン・ドーソンのワークショップ。彼は、「何を(what)学ぶか」ではなく「どう(how)学ぶか」に注目する「教育学(Pedagogy)」、つまり、ただ座って授業を聞くんじゃなくて、自分の体全体から知性を取り入れるという教育のあり方を通して経済や人間について研究している人なんだ。

ジョナサンのプログラムでは、経済システムを体感するシアター(演劇)の形式でのワークがあった。僕ら30人のうち、15人くらいが「マーケットを通らない生態系の活動」(例えば、生態系が水を浄化する作用とか、酸素共有、災害防止など)の役になる。10人くらいが「マーケットを通らない人間の活動」(育児やボランティアとか)の役。残りの数人が「資本主義・マーケットの象徴」の役。

この3つのグループに分かれて、頭ではなく体で何を感じるか、静かにゆっくり時間をかけながら、声に出したり、動きで表したりしていくんだ。すると、「生態系」の役のなかには怒りが湧き上がる人がでてきたり、反対に「生態系」役の人が「資本主義」役の人を抱きしめに行ったり、いろいろな反応が出てきた。頭脳とか理論だけではない、とてもパワフルな学びと体感の時間だった。

次にあったのが、ガイア理論を提唱したジェームス・ラブロックと一緒に研究していたステファン・ハーディングの講義。彼とは、海岸沿いの4.6kmの道を散歩しながら46億年の地球の歴史を体感する「ディープ・タイム・ウォーク」というプログラムをやったんだ。これがとても素敵で、計算するとだいたい一歩が50万年くらいになるんだけど、歩く距離を通して生命の進化のスピードを体感できるんだ。

生命も大気もないただの溶岩から始まって、惑星と隕石の衝突で月ができて、地球の回転が整って、さらに無数の小惑星が衝突して、小惑星に閉じ込められていた水が水蒸気となって放出されて雨になり、ついに単細胞生物が生まれて……そこからものすごい進化と多様性がとんでもないスピードが生まれるんだけど、人類が誕生するのは本当に散歩が終わる直前で、一歩もないくらいの距離なんだ。社会や地球の状況を大きく変えた産業革命なんて、ほんの数ミリしかない! 

僕らは、そのほんの数ミリの出来事で気候変動を引き起こして、それまでの自然の長い進化と奇跡の積み重ねをほどこうとしている。そう考えるとショックだよね。どうしたらこの状況を根本的に改善できるだろう?

ヘレナもジョナサンも、現代の状況を引き起こしている主流の「新自由主義グローバル経済」では触れられない、すごく斬新で鋭い視点だった。「そもそも経済学って何?」って、ただの数字や政策ではない経済学のあり方を問う機会になったよ。

それから「歌」の授業もあったんだけど、これは自分をひらいたり人とのつながりを感じるためのワークだった。シューマッハカレッジの元学生のプロミュージシャンがプログラムをやってくれたんだけど、口や手で音を出すゲームからはじまって、アフリカ民族の歌を一緒に歌ったり、全身で喜びを表現する、思考のない開放的な時間だった。

普通はみんな「人前で歌うのは恥ずかしい……」って言うけど、「これはハッピーな曲だからハッピーに踊ろう!」みたいに誘導をしてくれて、緊張しているバラバラな人の集まりから、徐々にみんなが緩んで周りを気にしなくなり、最後は一体感のある笑顔の多い輪に変身したんんだ。それぞれ自分の声を見つけた感じ。みんなもうキラキラしちゃって、ミーティング中とかご飯の時とかに歌い始めたりして(笑)

ダンスのワークもあった。最初はただ手を動かしてみて、そこから手に動かされる感じで体を動かしてみる。次は、ペアになって相手の手に100%寄りかかってその感覚を感じてから、手を離して100%自分で自分の体重を支える感覚を感じる。今度はその中間=支えてもらってるけど自分で自分を支えているのを感じながら部屋を歩き回る……みたいな。

考えてみれば、ずっと自立することを意識して生きている多くの日本人が、誰かに寄りかかって、心地よさや不安を体感して、完全に自立するわけでも寄りかかるわけでもない微妙な間を探りながら踊るわけで、これも結構深い探求だった。やっぱり最初はみんな「人前で踊るのは……」っていう感じだったけど、最後は「こんなに踊る?」っていうくらい踊ってたね(笑)。何十年もずーっと自分を抑えてきたものが取れて、頭の抵抗がなくなっていくんだよね。

歌もダンスも、普段は人前でやらないし、「お酒がないと」とか、消費活動(カラオケボックス、クラブ、イベントとか)じゃないとできなくなったりするよね。上手にできる特別な人がやることに常識がすり替えられたのかもしれない。でも子どもの頃は自然と自由にやっていたわけだし、どんな民族を見ても、お祭りとか公共の場でこそみんな一緒に歌って踊るよね。歌やダンスは、ひとりひとりの本能とか、コミュニティの本来のあり方を思い出すワークだったと思う。

それから、アートのプログラムもあった。シューマッハカレッジの卒業生で、トットネスでアーティスト活動をしている若い女性が先生。粘土を使った授業で、地域で採れた粘土で自分の好きなものをつくるんだ。彼女が言うには、粘土は僕らの働きかけに対して柔軟に形を変えてくれるけど、それと同時に粘土は僕らの柔軟性に働きかけていて、お互いに影響し合っている。

粘土は粒子が小さいから皮膚のなかに入ったりするんだけど(デトックス効果もある)、そうなると自分の指と粘土のどこに境界があるのかわからない。……結構深いよね。そういう、二つの領域の曖昧な境界を探りながら、その間に留まって意識を向ける、というテーマだったんだ。思考から作品を作るのではなく、粘土と自分の中から何が生まれようとしているのかを感じながら、形が現れてくるようなプロセス。

その後、できた作品を森のなかにお供えしてアートショーをやったんだけど、切り株の上とか、葉っぱの下とか、みんなが森のいろいろなところに自分の作品を置いて、みんなで森を散策しながら見つけていくんだ。だからまるで森全体がアートで、森を散歩して楽しみながら、人間が手を加えた形あるものを見ていく。最後には、粘土は溶けていって、掘り出された大地に戻って行く。手放すというか、無常というか、人間の手の加えたものと自然そのものの境界線がなくなっていくんだ。

ほかにも有機農業の素敵なガーデンプログラムでパーマカルチャー的なフォレストガーデン(森林農業・立体農業)にも参加して、豆やいちごを植えてきた。それから巡礼者サティシュと一緒に3日間過ごしたんだ。

みんなで森に入ったり、講義を受けたり、最後の日はみんなでパンをつくって、サワドーという天然酵母のつくり方やその哲学を教えてもらったんだけど、それも神秘的な話だった。100年以上前から育て続けている天然酵母(菌の生態系)を外国のパン職人から分けてもらって、それで僕たちが食べているパンを毎日焼いてくれている。そのパンが僕たちのエネルギー源や体の一部になっている。パンを買う人(消費者)から、パンを育ててつくる人(創造者)という経験は、ただのパンづくり教室とは思えない、生きることについて深みをだすワークショップだった。

こんな感じで、シューマッハカレッジがすごいのは、サティシュだけじゃなくてさまざまな視点を持ったいろいろな人たちが、同じ方向を見ていまの時代を捉えていて、新たな人間のあり方を探っていること。教える人たちはみんな情熱に突き動かされて、自分が大好きなことをやっているんだ。

サティシュはよく「アーティストは特別な人ではなく、みんなが特別なアーティストだ」って言うんだけど、シューマッハカレッジはまさにそれを体現している世界だと思う。日本にもシューマッハカレッジのような学びのコミュニティをどんどん育んでいきたい。僕はすべての人が自分のアートを見つけて、生き生きとその命の波紋を広げて欲しいんだ。そういう世界を一緒に創造してみない?

僕の右隣にいるのがサティシュ。

シューマッハカレッジのエピソードはこれで終わり。次回は僕がとても影響を受けた人物のひとり、サティシュ・クマールについて、もっと紹介しようと思う。お楽しみに!

(編集: 岡澤浩太郎)

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