7/18(木) gdShibuya「住み方の自由を考える」参加者募集中!

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全長121kmの自転車天国! 渋滞世界一の都市ボゴタには、スポーツ嫌いの人も走りたくなる「道」がある。

ここは南米コロンビアの首都、ボゴタ。ふだんは車であふれかえるこの街では、日曜日になるとメインストリートへの車・オートバイの乗り入れが禁止されます。

たくさんの人や自転車が行き交い、沿道にはジュース屋さんやフルーツスタンドが軒を連ね、公園などではエアロビクスのクラスまで開かれていて、ただの日曜日なのに、さながらお祭りのようです。

「さすが南米、休日はこんなに賑やかなんだな。陽気でうらやましい」。
そんなことを思いましたか?

しかし、この光景の裏には、世界中の大都市が抱える大きな問題と、その解決の可能性が秘められているんです。

今回は、ボゴタで45年にわたって行なわれている、オープンストリート(中心部への自動車の乗り入れを制限する取り組み)をご紹介します。

冒頭で見ていただいた画像は、「Ciclovía(シクロビア、「自転車の道」)」というイベントのもの。

毎週日曜日の午前7時から午後2時まで、全長121kmにも及ぶ中心市街地の大通りへの自動車やバイクの乗り入れが制限されます。その間は、自転車やローラースケート、スケートボードなどを路上で自由にすることができます。もちろん歩行者も自由に出入りが可能です。

通り沿いでは屋台が出たり、ダンスなどのパフォーマンスが行われたりと、賑やかな雰囲気。Ciclovíaは、1974年に当時のボゴタ市長の主導で始められた取り組みで、現在では150万人ものボゴタ市民が参加するイベントになっています。

車社会のボゴタが抱える課題

コロンビアというと、最初に思い浮かべるのはコーヒーやチョコレート、サッカーなどでしょうか。旅行先としては、犯罪が多発している治安の悪い国というイメージが強いかもしれません。それも事実ですが、首都ボゴタは発展目覚ましい大都市で、現在は800万人以上が住んでいます。

そんなボゴタの移動手段は自動車が圧倒的です。ふだんは、150万台の自家用車、5万台のタクシー、50万台のバイクがひしめき合っています。

平日のボゴタのようす。人が歩けるのは右の狭い通路だけ。街や道は、人のものか、車のものか。

そしてボゴタは、自動車交通が発達した他の大都市と同じような問題を抱えていました。それが、大気汚染による健康被害と、運動不足です。

ボゴタは、自動車の交通量に見合った道路網の設計がなされておらず、渋滞が毎日発生。さらに、盆地に位置するため風が遮られ、自動車の排気ガスが滞留しやすく、深刻な大気汚染が起きています。

各都市の自動車通勤者が渋滞にかけている時間のランキング。ボゴタは1位になっている。INRIX/Statista

その大気汚染が健康被害をもたらします。実際に、毎年60万人もの5歳以下の子どもが、循環器系の病気で医師にかかっているというデータも。

また、自動車での移動が一般化したことで、運動不足の人が増えました。これは大気汚染に比べれば重要でないように聞こえますが、運動の習慣が減ると、生活習慣病の増加につながります。

これら2つの問題への対策として始められたのが、Ciclovíaでした。

長続きの秘訣はストリートカルチャーにある?

Ciclovíaのような、道路への自動車の乗り入れを禁止して、ウォーキングやランニング、サイクリングを楽しむ人に開放する、という取り組みは「オープンストリート」と呼ばれ、世界中で行われています。

古くは1965年にシアトルで行われており、現在も米国のロサンゼルスや南アフリカのケープタウンで行なわれているオープンストリート。

そのなかでもCiclovíaは、封鎖距離121km、参加者150万人という規模で、毎週日曜日と頻繁に行われており、他を圧倒しています。

Ciclovíaのランナー向けマップ。

Ciclovíaがなぜこれほどボゴタ市民に受け入れられ、45年もの長い間行われてきたのか。その理由には、行政の強力なバックアップや、市民ボランティアの協力などがありますが、私が思う最大の理由は、一般の市民も参加したいと思えるコンテンツが用意されていることです。

Ciclovíaでは、通り沿いにいろいろな屋台が出たり、歌や踊りのパフォーマンスが行われたり、エアロビクスのようなエクササイズをするクラスが開かれたりしています。

ちなみに、日本の「歩行者天国」でも、昔は「竹の子族」やバンドの路上演奏といったストリートパフォーマンスが行われていましたが、近隣住民の苦情などを受けて、現在はパフォーマンスが禁止されているところがほとんどです。また、物品販売なども禁止されています。

市民は、ただ自転車に乗るため、ウォーキングを楽しむためにCiclovíaに参加するのではなくて、自転車に乗って、もしくは歩いて、何かを食べたり、見たりしています。なかには、Ciclovíaに来た理由を「ご飯が食べたかっただけ」と言い切ってしまう人もいるほど。

「環境のため、健康のために車を使うのをやめよう!」と主張するだけではなくて、サイクリングやウォーキングに興味のない、一般の市民も参加したくなるようなコンテンツをつくり、イベントにしてしまう。そうすることで、もともと環境問題や健康に関心の薄い人も巻き込んでいきました。これが、Ciclovíaが長年つづいてきた秘密なのではないでしょうか。

Ciclovíaで街は変わったのか?

Ciclovíaは、運動の習慣をつくることについては効果をもたらしました。2009年の調査によると、Ciclovía参加者の42%が、イベント中に150分以上の運動をしていることがわかりました。また参加者のうち、イベント外で同じく150分以上の運動をしている人はたった12%らしいので、Ciclovíaは週に1日だけでも、ボゴタ市民が運動をする機会をつくりだしているということになります。

ふだんは運動しない人も、屋台やパフォーマンスに惹かれて自然と体を動かしているのです。

街頭で行われるエアロビクスのクラス

それでは大気汚染についてはどうでしょう?

残念ながら、人口増加にともなって自動車の台数が増えていることもあり、大気汚染の直接的な解決には至っていないのが実情です。

ボゴタ市民からはこんな声も聞こえてきます。

Ciclovíaがうまくいっているとは思わないわ。だってみんな日曜日は自転車に乗るけれど、次の日には自動車を使うんだもの。

それでは、まったく意味がないかというと、決してそんなことはないはずです。

たった1日、街の中心部で自動車に乗らなかったからといって、大気汚染には影響はないかもしれません。でも、ふだん使っている自動車という交通手段がなくなったとき、私たちは自然と、他の選択肢を考えるでしょう。

近くのスーパーまで、いつもは車で行っていたけど、意外と歩いても行けるんだな。あのお店まで行くのに、自転車を使えば10分くらいで着いちゃうのか。そういうちょっとした気づきが積み重なって、自分のふだんの行動を見つめ直すようになります。

「移動すること」は生活に欠かせない要素です。ほとんどの人が、なにかしらの手段で、毎日移動しています。

日本でも、最近たくさん起きている痛ましい交通事故や、過疎地域の増加、高齢化などをきっかけに、移動手段についての議論がふえています。

あなたも、自分や家族の移動手段を見つめ直してみませんか。
ひょっとしたら新しい気づきがあるかもしれませんよ。

[Via inhabitat, national geographic, Vox, smartcitiescive, CGTN, The City Paper]

(Text: 橋口創吾)