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社会課題の解決策は、遠いところではなく、実は身近なところに潜んでいる? 自転車先進都市アムステルダム発、路上駐車場を乗っ取って生まれたポップアップ駐輪場とは?

みなさんは普段の通学通勤や、週末のお出かけで自転車を利用した際に、停めたい場所で駐輪場が見つからなくて困ったことはありませんか?

現在は大幅に改善されたものの、特に東京や大阪などの大都市では駅前の歩道に自転車が放置され、歩行者の通行の妨げとなることが未だに問題となっています。

今回はそんな駐輪場不足問題に対して、自転車先進都市であるアムステルダムで生まれ実施されたプロジェクトを紹介します!

そのプロジェクトとは、駐車場を「乗っ取る」ポップアップ駐輪場「BIKERS FIRST」です!

Bottega VenetaとGUCCIといった高級ブティックの間に止まる「BIKERS FIRST」

このプロジェクトを思いついたのは、現地オランダの自転車ブランドUnionのマネージャーであるHugo Velthuis(以下、ヒューゴさん)と、クリエイティブエージェンシーNetwerkのメンバーたち。

彼らは街中の駐車スペースを利用し、車1台分のスペースに8台の自転車を収容できる簡易な駐輪場を設置したのです。駐輪場は、自転車1台につき1時間4ユーロで貸し出しました。

人の移動には使えそうにありませんが、その簡易なポップアップ駐輪場は小さな車輪が4つとナンバープレートを付けており、車として駐車スペースに止める分には法律に違反していないんだとか!

僕たちは法律の小さな抜け穴を見つけたんだ。

時にはことを運ぶために、少しクリエイティブにならないといけないときがある。自分が信条を持ってやることならなおさらね。

自転車に関する公共施策がかなり先進的な印象があるオランダですが、意外にもヨーロッパの中で最も環境汚染が進む国の一つだそうです。2020年までに1990年比21%の二酸化炭素排出量削減の目標が掲げられているそうで、政府は様々な方法でその目標を達成しようとしています。

例えば、2018年末には、今後3年間で20万人以上の人が自転車で通勤し始められるよう、3億9000万ドルを自転車通勤のためインフラに投資することを発表しました。

それだけでなく、2025年末までに市内の駐車場約1万2000台分を削減し、自転車で通勤通学する人や歩行者、公共交通のためのスペースとして利用することを決めたのです。

Via Unsplash

土地をどのように交通手段に活用しているか、それは都市ごとに大きく異なるようです。車社会として知られるロサンゼルスでは、なんとサッカーコート1,400面分という必要以上のスペースが駐車場として存在しているのだとか。

自転車フレンドリーな都市として知られているシアトルでさえも、1軒の家に対して5台以上、アイオワ州デモインではなんと1軒の家に対して19台以上の駐車場が存在する計算になるそうです。

日本の都市部では、駐車場の少なさと電車やバスなどの公共交通が発達していることにより、車で通勤通学をする人は少ないかもしれません。それでも最初に書いたとおり、駅前の放置自転車が歩行者はもちろん、ベビーカーや車いすなどの通行の妨げになることに悩む自治体も未だに多いかもしれません。

今回ヒューゴさんとNetwerkのメンバーが実施したのは、身近な余っているもの(場所)を活用し、既存のルールの中で住民全体に関係する問題を解決したプロジェクト。

問題が発生した際、私たちは無意識のうちに「新しい」何かをつくることでそれを解決しようとしているかもしれません。しかし今回のプロジェクトが気づかせてくれたのは、実は身近なところに改善策はあって、少し視点を変えるだけ問題解決に近づくかもしれない、ということ。

もしかしたら、私たちが普段街で目にしたり耳にしたりする課題も、実は近くに解決方法があるのかも。新しい視点で、明日から世の中を見渡してみませんか?

[Via Fast Company, Forbes, Web Urbanist, Fleet Europe, CNN, Reuter]

(Text:桝井菜々子)