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消費者が変われば、世界が変わる。CO2排出量で利用制限がかかるクレジットカード「DO CARD」の挑戦

キャッシュレス化が進む昨今。ちょっとした買い物もカードで済ませてしまうという人、多いかもしれません。

そして、忘れた頃にやってくる利用明細を見て、「あれ、こんなに使ったっけ!」と驚いたことがある人も少なくないのでは? 私もクレジットカードを持つようになってから、手持ちのお金が減っていっているという感覚が薄くなって、つい使いすぎてしまうことが増えました。

お金でさえそんな調子なら、お金のさらに向こう、たとえばその商品をつくるために使われた材料や排出した環境負荷なんて、ふだんは意識しませんよね。

買い物をする時に私たちが気にするのは値段やブランド、生産地くらい。しかし実際には、その商品をつくる過程で、たくさんの資源が使われ、大量のゴミやガスが排出されています。環境問題と私たち消費者は無関係ではありません。

今回は、決済ごとに、その買い物の裏で排出されているCO2の量を見えるようにし、その累計で利用制限までかけてしまうという、スウェーデン発のクレジットカード「DO CARD」をご紹介します。

DO CARDは、スウェーデンのフィンテック(FinTec:ITを使った金融サービス)企業DoconomyとMasterCard、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局の3者の協働から生まれたサービス。2019年夏に正式にリリースされる予定です。

DO CARDは、決済ごとに、その買い物で発生するCO2排出量を記録し、利用明細で月ごとのCO2排出量を伝えます。

さらに利用者が希望する場合は、月ごとのCO2排出量に限度を設定することで、クレジットカードの金額利用制限枠のように、CO2利用制限をかけることもできます。

「お取引が拒否されました! お客様はCO2排出量の上限に達しました。」

この排出量の限度は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表したレポートをもとに、2030年までに国ごとのCO2排出量を50%カットするという目標に基づいて設定されています。この削減目標を達成するために市民1人が排出してもよいCO2量を計算し、その値が限度量となるのです。

またDoconomyは資産運用会社とも連携し、インドやアフリカ最貧国マラウイなどの途上国で温室効果ガスの削減に取り組む、国連認定プロジェクトに寄付する機会を利用者に提供。

さらには、提携店でDO CARDで支払いをすると少額の返金があり、利用者はそのお金を国連認定プロジェクトへの支援や、エコファンド/グリーンファンドと呼ばれる環境保護に熱心なファンドへの投資にも使えます。この寄付や投資によって、避けられないCO2排出については「埋め合わせ」ができるというわけです。

さらにさらに、このカード自体は生物由来の素材でつくられており、使用されているインクは空気中から回収された汚染物質(すすなど)からリサイクルされたものという徹底ぶり。一見するとスタイリッシュなブラックカードなのに、その中には環境保護のための斬新なアイデアが詰まっているのです!

カード裏面にはSDGsのマークが。12番は“Responsible consumption and production”(つくる責任/使う責任)。

CO2排出量を集計する仕組み、オーランド指数

でも、ここで気になるのがその仕組み。
そもそも、どうやったら買い物ごとのCO2排出量なんてわかるんでしょうか?

CARDが使っている仕組みは、フィンランド・スウェーデンのBank of Åland(オーランド銀行)が提供しているÅland Index(オーランド指数)というシステム。

この指数は、事前に集められた膨大なデータをもとに作成されており、32のカテゴリーに分けられた支払いシーンごとに、その支払いで1ユーロ使うごとにどれくらいのCO2が排出されているか(1ユーロあたりのCO2排出量)がわかるようになっています。

例えば、パン屋さんで10ユーロ(およそ1,250円)使うとしたら。

パン屋さんの1ユーロあたりCO2排出量は63.34グラムなので、その買い物では633.4グラムのCO2が排出されているということになります。これは自動車で2.3km走った時と同じくらいのCO2排出量です (中部カーボン・オフセット推進ネットワークを参照)。

オーランド指数の計算機能。パン屋、レストランなどの他に、病院、飛行機などのカテゴリーもある。

DO CARDのシステムでは、このオーランド指数を用いて決済ごとのCO2排出量を算出しているのです。

消費者が変われば、世界が変わる

環境への影響を理由に、カードの利用を停止するというDO CARD。

「それじゃあ、環境に配慮してお金を使うのをやめろってことか?」

そんな声に、Doconomyの共同創業者Mathias Wikström(以下、マティアスさん)は次のように答えます。

いえ、そうとは限りません。ただあなたに、少しずつでも理解していってほしいのです。

「気候変動への対策」、「CO2削減のための方策」と聞くと、企業や政府の取り組みが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか? もちろん、目標達成のためには、エネルギーシステムの変革や、都市のコンパクトシティ化といった大規模な変化も必要になるでしょう。

しかし実際には、日本で排出されるCO2のうち、55%は買い物などの消費行動に由来していると言います(Doconomyより)。私たち消費者も、決して他人事ではありません。

DO CARDは、ふだん買い物で意識されることのないCO2排出量を見えるようにすることで、利用者に「消費者としての責任」を意識させます。そして消費者の意識が変われば、企業も変わっていきます。

想像してみてください。もし消費者が私たちのサービスでCO2排出量を気にするようになり、そのことが商品を買うかどうかの基準にもなるとしたら。企業は当然その動きに反応するでしょう。

と話す、マティアスさん。

企業が環境保護を意識した商品をつくるようになり、それが当たり前になれば、環境への負荷の小さい、持続可能な経済構造ができあがっていくはずです。

“Economy”から”Doconomy”へ

資本主義経済が浸透した現代、消費、買い物といった、お金を使うという行為(DO)は、世界中の人が毎日していることです。

DO CARDは、これまではレシートや利用明細書の上で数字だけで表されていた「消費」に、CO2排出量という情報を付加することで、消費者が買い物の向こう側を意識するきっかけをつくります。

それは私たちに、コンビニで何気なく買っているパンや、デパートのセール品の洋服も、すべてがそれをつくる人につながり、そして地球につながっているということを思い出させるでしょう。

世界中の人が自分たちのDOを考えなおし、地球に暮らす1人として責任を持って行動するようになること。
そのような一人ひとりのDOから成り立つ経済“Doconomy”をめざして、DO CARDはつくられました。

いま着ている服や、きょう食べたご飯がつくられるまでに、どれくらいのCO2が排出されているんだろう。
ふつうに生活しているなかで、私はどれくらいのCO2を出しているんだろう。

それが、地球に、私に、私の子孫に、どれくらいの影響を与えるんだろう。

少しだけ立ち止まって、考えてみませんか?
それが私たちにできる最初の“DO”なのだと、私は思います。

[Via Doconomy, FastCompany, Inhabitat, dezeen, Åland Index]

(Text: 橋口創吾)