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伝えたいのは、時間とともに忘れられていたかもしれない物語。ブルックリン出身の女性アーティストがヴィンテージの布で鮮やかな肖像画を織る理由。

最新のスマートフォン、シーズンごとに変化するファッションスタイル。私たちの毎日の生活は、どんどん出てくる新製品でめまぐるしく更新されていくかのようです。

時代遅れのものより、最新の流行のものを持っている方がかっこいい! そんな風に思う方も、きっとたくさんいるはず。

そんななか、今回はとてもクールなテキスタイルの作品を見つけました。早速ですが、このアートワークをちょっと見てみてください。

“Black Star Family, first class tickets to Liberia”

“Anaya with Oranges”

どうですか? 目がさめるような鮮やかな色彩の布で描かれた人の力強い瞳が、まるで私たちになにかを語りかけてくるかのようですね。
なんと実は、この美しい作品たち、古い布を縫いあわせてつくられているんです!

もう一度使われている布の色や質感をじっと感じてみてください。

“Les Sapeurs”

このアートワークの作者は、ニューヨークのブルックリンで活動しているテキスタイルアーティスト、Bisa Butler(以下、ビサさん)。彼女は、ヴィンテージの生地を使って、カラフルな肖像画の布のタペストリーを制作しています。

でもどうして、ヴィンテージの生地を使うのでしょう?
それによってビサさんが表現したいこととは?

それには、彼女自身のストーリーと深く関わっているんです。今日は、古い布とアートの物語をみなさんにちょっとだけみなさんにご紹介したいと思います。

Collector House Interview

私はいつも肖像画に惹かれてきました。祖母の隣に座り、古い家族写真アルバムを見せてと頼む小さな女の子でした。写真の裏側にあるすべての物語を聞きたかったのです。この好奇心は今も私の中にあります。私は白黒写真から作品を始めることが多く、その物語を語ることができます。

ビサさんは、自身もルーツがあるアフリカのヴィンテージのレースやサテンを使って、人々の肖像画のタペストリーを制作しています。白黒の写真に映っている人々が生きてきた人生の物語を、色鮮やかな古い布をいくつも組み合わせ、縫い合わせることによって表現しているんです!

“The Tea”

そもそも、ビサさんがキルティングのスタイルで作品の制作を始めたのは、子どもが生まれたことがきっかけだったといいます。

ハワード大学で美術を学んだビサさんは、もともと、絵に布を取り入れた作品をつくっていました。しかし、その時使っていた塗料は、人体に有害な物質が含まれていました。ビサさんは、子どもを有毒な煙から守るために、また自身が健康に制作を続けていけるように、布を縫い合わせてパッチワークのように作品を制作するスタイルに転向したのです。

私のストーリーは生地、組み合わせた質感、そして新しい構成を生み出す色で語られています。

私の肖像画は、時間とともに忘れられていたかもしれない物語を語っています。ヴィンテージレースと熟成サテンは、過ぎ去った時代の繊細さと洗練の物語を、アフリカの印刷された綿と泥布は、私の先祖の故郷の物語と文明の発祥地を、色とりどりのオーガンザと層状になっている網目は、カラフルで多面的な誰かの物語を伝えるのです。

“The Princess”

ビサさんが、選んでいる古い布。実はこの布ひとつひとつにも意味があるのです。時代を超えてきた布は、その分、物語を持っています。ビサさんは、そうしたヴィンテージの布を縫い合わせることによって、個人が生きてきた人生の物語を超えて、その布に織り込まれた歴史や多様性など、様々な意味を私たちに語り掛けようとしているのです。

また、ビサさんの作品は、もちろん環境に配慮されている側面もあります。本当であれば捨てられてしまったかもしれない布に、もう一度命を吹き込んでいるのです。

世界には十分なものがあります。すでに持っているものを何度も再利用しましょう。


ビサさんの作品は、instagramでも見ることができます。気になった方は、ぜひビサさんの所属しているギャラリーの紹介ページや(https://www.claireoliver.com/artists/bisa-butler/)、instagram(https://www.instagram.com/bisabutler/)にアクセスしてみてくださいね。

いかがでしたか?
長い間使われてきたものは、そのもの自体がたくさんの物語を持っているんですね。
なんでも新しいものに変えてしまうのではなく、古いものが持っている味わいやそれが持っている物語に耳を傾けてみることで、楽しみながら、持続可能なライフスタイルを私たちは豊かに味わうことができるのかもしれません。

まずは、いまあなたの身の回りにあるものが持っている物語にそっと耳を澄ませてみませんか?

[via treehugger, thisiscolossal, claireoliver gallery]

(Text: 荒田詩乃)