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「すれ違い」で終わらせない。通行人とホームレスの間に「つながり」をつくりだすアプリ「Samaritan」とは?

駅前で行われている、殺処分犬保護のための募金活動。
市役所やスーパーに置いてある、被災地支援の募金箱。
そして、街中で支援を求めるホームレスたち。

「協力したいけど、今は時間がない…」
「募金したお金は、どう使われるんだろう?」
「本当に、誰かの役に立つのかな?」

支援をしたい気持ちはあるのだけれど、時間がなかったり、持ち合わせがなかったりして、結局素通りしてしまうという経験、心当たりがありませんか?

今回は、ホームレスへの支援を、より手軽に、的確に、そして安心して行えるような取り組み「Samaritan」をご紹介します。

「Samaritan」は、支援を必要としているものの、それを伝える手段のないホームレスと、支援したい気持ちのある通行人をつなぐ、スマートフォンアプリです。このアプリは、近くにいるホームレスのストーリーや必要なものを通行人に知らせることで、通行人が支援したいホームレスに直接寄付することを可能にしました。

ちなみに、「Samaritan」とは「サマリア人」という意味で、キリスト教の新約聖書に登場する、困っている人に親切な「善きサマリア人」をモチーフにしています。

「Samaritan」の利用を希望するホームレスは、提携する病院やカウンセラーのもとで、小型の発信機を無料でもらえます。アプリ利用者(支援者)がホームレスに近づくと、アプリは発信機からの信号をキャッチし、その人が必要な支援内容や、どうしてホームレスになってしまったのかがわかるのです。

アプリ利用者は、その情報を見て、アプリ経由で寄付ができます。寄付されたお金はホームレスのアカウントに入金され、「Samaritan」が提携する飲食店や食料品店、美容院などで使うことができるのです。

この寄付システムにより、ホームレスは必要なものをはっきりと伝えることができ、支援者も、安心して、しかも手軽に寄付をすることができるようになりました。

しかし、ここで気になるのは、「お金や物を支援することが、本当にホームレスの社会復帰につながるのか」というところ。

寄付が集まりやすくなったら、それで満足してしまうのでは?
当然そのような疑問が湧いてくるでしょう。

実は、ホームレスがもらえる発信機は30日おきにバッテリーが切れるように設定されています。続けて使いたい場合は、カウンセラーなどのソーシャルワーカーのもとへ行き、バッテリーを交換してもらう必要があります。この仕組みがあることで、ホームレスは定期的にカウンセリングなどの社会復帰支援を受けるようになり、それが継続的な問題解決へとつながっていくのです。

シアトルの街角(「Samaritan」facebookページより)

「Samaritan」が展開されている米国のシアトルは、全米屈指のホームレスの多い都市です。人口73万人の都市に、1万2千人ものホームレスがいます。住民の約61人に1人がホームレスということになります。

そんな現地で、2016年から2年間にわたってシアトルで行われてきた実装実験では、1万人が「Samaritan」としてアプリに登録し、500人に発信機が配られ、その半数以上が毎月カウンセリングなどに通っています。なかでも42人のホームレスは、「Samaritan」のおかげで人生が好転した、と言っているのだそう。

そのうちの1人、DV被害と薬物中毒を経てホームレスになったメリッサさんは、「Samaritan」に参加して数ヶ月間支援を受けたのちに、カウンセラーの協力で住まいを見つけることができました。メリッサさんは次のように言います。

私は、地域コミュニティからのケアを受けることができました。誰かがたった1ドルくれたとしても、私には百万ドルと同じくらいに感じられるのです。

メリッサさん(Samaritan公式webサイトより)

日本のホームレスは、平成29年度でおよそ5千人いると言われています。平成15年度の調査では2万5千人以上ということなので、その数は大きく減っているということになります。(厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査」)

しかし、いまだに駅前や河川敷でホームレスを見かけるという方も多いのではないでしょうか。また、ネットカフェや漫画喫茶などの普及により、ホームレスが見えにくくなっているという状況もあります。

「Samaritan」では、一人ひとりのストーリーをインターネット上で見ることができるようにし、また定期的にカウンセリングなどに行く機会を提供することで、一人ひとりにあった形の社会復帰を支援する道をつくりました。

ホームレスに限らず、社会課題の当事者たちは、人によって悩みも違えば必要なものも違います。通り一遍の支援策ではなく、困っている人たち一人ひとりを見て、適した支援をしていくことが、大きな課題の解決へとつながっていくのではないでしょうか。

[Via: Samaritan, The Seattle Times, The Spoon]

(Text: 橋口創吾)