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自分にとっての当たり前は、みんなの当たり前じゃない。17歳で半身麻痺になった“momoちゃん”が幸せそうな理由

「動画の撮影は初めてだったので緊張しました」

年相応に明るくやわらかく笑うmomoちゃん。麻痺のある左半身と付き合いながら、“いまやりたいこと”を全力で楽しんでいる女の子です。

佐賀県内の約700件(2019年1月時点)のバリアフリー情報を紹介・発信するWebサイト「さがすたいる」とgreenz.jpの共同連載も3回目を迎えました。

今回は、先月完成したばかりの「さがすたいる」のPR動画に“momoちゃん”の呼び名で出演し、「さがすたいる」のリポーターとしても活躍する彼女に、これまで歩んできた人生やリポーターとしての想いなどを、ありのままに語っていただきました。お話をうかがった場所は、PR動画の撮影地でもあるユニバーサルデザイン思考の飲食店「BAR-B-QUE FACTORY NUTTERS」です。

“あの日”から突然始まった、新しい人生

小さい頃からキャビンアテンダントになりたいという夢を抱き、まもなく高校3年生に上がろうとしていた春休み、突然の脳出血でmomoちゃんの人生は大きく変わりました。

大学で上京していたお姉さんの部屋で、頭痛を訴え倒れたのは、2015年4月3日のこと。「脳動脈奇形による破裂」という病気により脳出血を起こし、「あと10分か15分病院に運ばれるのが遅かったら亡くなっていたかもしれない」と医者に言われるほど、切羽詰まった状況だったそうです。

一命をとりとめたmomoちゃんがはっきりと意識を取り戻したのは、倒れてから1カ月が経った頃。計4回にわたる手術と入院・リハビリの日々は1年にも及びました。倒れてから4年が経過した今でも、リハビリのため定期的に通院しています。

ただ、momoちゃんからは、左半身に残る麻痺に憤ったり、キャビンアテンダントという夢を諦めることになったといった悲壮感は感じられません。

「なんで私が」とは全然ならなかったですね。記憶がない期間が1カ月ほどあって、その間は泣いたりいろいろわめいたりしていたみたいなんですが、意識がしっかりして、麻痺のことを受け入れてからは、泣いたりはしなかったです。起きてしまったことは仕方ない。新しい人生が始まったんだ、って。

高校3年生だったので、これから進学をどうするかとか、恋愛も普通にしていたし、メイクやおしゃれのことなど、本当に普通の女子高生が考えているようなことしか考えませんでしたよ。

私が通っていた高校は、半年以上休んでしまうと留年してしまうと言われたので、入院中に通信制の高校に転校しました。高卒の認定資格を取り、その年に大学を受験しました。中学生の時に1年間アメリカに留学していたり、英検の2級を持っていたので、AO入試(自己推薦)を受けることができたんです。

「それだけ重い病気だったのに、留年もしなかったんですか?」と尋ねると、momoちゃんは「大学には浪人などもせずに進学しました」と、あっけらかんと返答。生死をさまよいつつ、頭蓋骨の開閉を伴う手術とリハビリの入院生活をしながら進学までとは、月並みな言い方ですが、「すごい」としか言えません。

しかも、それが必死で頑張っているというより、とても自然体で、さらりと自分の身体と向き合っている様子がうかがえ、「自分だったらこんなふうにできるだろうか」とついつい考えてしまいます。

どんな時も笑顔で。その想いを一冊の本に

お姉さんの勧めもあり、momoちゃんは2016年に立命館アジア大平洋大学(大分県別府市)に進学しました。現在は休学中で、地元の佐賀市内でリハビリに専念しつつ、ウェブデザインを学んだり、SNSで発信したり、モデルの仕事をしたりと、将来できることを探しつつ、充実した日々を送っているそうです。

「ここ最近は本の出版で忙しかったです」と言って見せてくれたのは、momoちゃんが満開の笑顔で表紙を飾るかわいらしい本。病気になってから綴ったブログを元に、これまでの経緯や出会った人のこと、恋愛のことなど、その時々に感じた想いが素直に丁寧に綴られています。タイトルにもなっている「Keep your smile」は、普段からmomoちゃんがよく使う言葉だそう。

momoちゃん初の著書『Keep your smile』(文芸社刊)。インターネット書店や全国の紀伊國屋書店などで販売中。

嫌なことがあってもとりあえず笑っておけば、周りの人は不快になりませんよね。自分がブルーだからって周りの人に伝えなくていいんじゃないかと思うんです。笑顔の大切さをアメリカに行ってから特に実感しました。病気になってからはなおさら「Keep your smile」と言うようになりました。

そういうこともあって、病気っていうのがわからないような本にしたかったんです。他の闘病の本などを見ると悲しい感じが多かったので、そういうことがないように心がけました。同世代だと圧倒的に健常者が多いけれど、同世代にも健常なのが当たり前じゃないことをわかってほしいです。病気になる前日までは、私もディズニーシーで遊んでいましたし。だれがいつどうなるかなんてわからない。そういうことも伝えたくて本を書きました。

確かな情報を届ける「さがすたいる」との出会い

現在は「さがすたいる」のリポーターとしても大活躍中のmomoちゃん。その出合いは、これまたお姉さんだったとか。

姉は大学を卒業して佐賀で就職したんですが、イベントなどにもよく参加する好奇心の塊のような人で、ウェブマガジンの「EDITORS SAGA(エディターズサガ)」のライターでもあります。その姉と「さがすたいる」の担当者の安冨さんが知り合いで、そこから「さがすたいる」の存在を知りました。

「さがすたいる」のリポーターは、自分がしてみたいと思っていたことだったのでうれしかったです。大学の志望動機にも「まちづくり」と書いていたので、「まさに!」という感じでしたね。自分が当事者として感じたことを発信していきたいという想いも強くて、自分で発信もできることと、まちづくりにも関われるところが良かったです。

食べることが大好きなmomoちゃんは、行った先のお店について、「さがすたいる」にレビューをよく書いているそう。

リポーターとして活動するのは、自分に無理がなくてすごく楽しいです。友達と行ったところでも気軽に投稿できるし。自分が病気になってから、いちいち「この場所は大丈夫なのかな」と電話して聞くのも面倒だったりして、こういうサイトがあったら便利だと思っていたものが載っているのがありがたいです。

例えば、階段に手すりがあるのかといったことだって、当事者が変われば目線が全然異なりますよね。半身麻痺だったり、車椅子だったり、目が不自由だったり、高齢の方だったり、それぞれ違います。そういった人の感想が集約されていくサイトになればいいなあ、と思います。

「さがすたいる」では、担当者が必ずそのお店を訪れ、現地の状況やお店の方の人柄などを確認してから掲載するという、ある意味アナログで地道な活動を行っているのですが、momoちゃんは、それがとても「安心」だと言います。

「さがすたいる」のサイトで調べて行った場所でなくても、あのシールが貼ってあるとほっとします。ここ取材してるんだ、とかOKしてくれてるお店なんだと思えますから。それは、担当の方がしっかり現地を見てくれているということを知っているからでもあります。ちゃんと実際にそのお店のことを確認したうえでお店が掲載されていることをもっと多くの人に知ってほしいですね。

協力店には「さがすたいる」のシールが貼られています(photo:安冨喬博)

当事者が発信することでも、世の中は変わる

「さがすたいる」では、その存在をもっと多くの方に知ってもらうために動画を制作し、2019年2月14日に公開しました。「さがらしい、やさしさのカタチ」をわかりやすい映像で表現しています。

少々硬い大昔の国営放送のようなナレーションは親しみやすく、さまざまな障がいを持つ方や高齢の方、ママたちなど、すべての人がいろいろな場所で無理なく楽しむためには、設備面というより気持ちの面で寄り添う対応が大切だ、ということを感じさせてくれます。

1分18秒からmomoちゃんが登場。若い女性ならではの「インスタ映え」を気にする様子が描かれています。

momoちゃんも出演したこのPR動画。撮影を終えた感想を聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

動画だったので表情づくりなど、演技みたいなものもあって緊張しました。ちょっとオーバーにしたり、表情をつくるのが難しかったです。それも楽しかったからいいんですけど(笑) 撮影で初めてこちらのお店を知ったんですが、ステーキ美味しかったです!

持ち前の前向きさで、現在はいろいろなことにチャレンジ中のmomoちゃんですが、正直、福岡などに比べて、佐賀はまだまだ暮らしづらいと言います。

福岡は一人でも行動しやすいです。歩道がしっかりしていますし、車椅子の時も押してもらいやすかったです。ですが、そういった設備面でかなわなくても、「さがすたいる」がもっともっと一般的になっていくことで、きっと変わっていくと思います。当事者として発信をすることでも、きっと世の中は変わるはず。そのために、今後も「さがすたいる」に関わっていきたいです。

「さがすたいる」PR動画の撮影風景(photo:安冨喬博)

「やってもらって当たり前」と思わない

「さまざまな人が変わっていくためには、障がいを持つ当事者自身もきちんと自分のことをわかってもらえるよう伝えることが大切」とmomoちゃんは話します。

momoちゃん自身、杖をついていても手の麻痺はわかりにくく、フードコートなどでトレイが持ちづらかったりする様子に、理由がわからず戸惑う店員さんもいたのだとか。そんなとき、momoちゃんは自分から「左半身麻痺で持てないので運んでもらえますか」と自分の障がい特性を伝えて助けてもらい、「ありがとうございます」としっかり感謝を伝えることにしているそうです。

お姉ちゃんだったか、友達だったかに「たまにイラっとする」「手伝ってもらえるのが当たり前だと思わないほうがいい」と言われたんです。なにかしてほしいんだったら、「お願いします」「ありがとう」とかの言葉をちゃんと言ったほうがいいって。

病気になってからは、みんなすぐに手を貸してくれるようになって、それが当たり前になっている自分がいたんです。たまに「(障がいがあることに)気づいてもらえない」とおっしゃる方がいますが、やっぱり言わないとわからないですよね。「やってもらって当たり前」というふうになるのも、ちょっと違うんじゃないかと思うようになりました。

momoちゃんは、すべてのバッグに「ヘルプマーク」を着けているそうです。援助や配慮を必要としているけれど、見た目ではわかりにくい人のためのマークで、2年ほど前から東京都で取り組みが始まり、去年から佐賀県でも導入されました。最近ではテレビCMも流れ、認知度が上がっています。そういった物も使いつつ、自分から意志や想いを伝えることが、人と人が近づくきっかけになっていくのではないでしょうか。

自分の病気や障がい特性について話すことが、恥ずかしいと思ったことはありません。毎回聞かれると面倒臭いことはありますけど(笑)

病気になってから一番変わったことは、何かをすることが怖くなくなったことです。「できないかも」ってブレーキがなくなったし、「どうにかなるかな」と思えるようになりました。チャンスがあればなんでもしたいですね。

「ヘルプマーク」。東京では、地下鉄の駅などでも入手が可能で、佐賀県では県の保険福祉事務所などで配布されている。

「身体の自由は半分奪われたけれど、心はその何倍も自由になった」。帰宅してからいただいた著書を開くと、そんな言葉が目に飛び込んできました。この一冊にも、取材ではしばしから感じられた、momoちゃんの前向きさや明るさ、しなやかな強さが全開でした。

私たちは、いつの間にか毎日を変わらない、「当たり前」だと思って過ごしがちです。でも、どんなに同じように見えても「同じ日」はありません。
いつ、なにが起こるのかわからないから、肩肘を張らず、素直に「今を大切に生きる」こと。自分の「当たり前」と誰かの「当たり前」の違いに気づくこと。
大切な人を想いながら、「今」「ここ」にいる幸せを感じてみませんか。

(photo: Koichiro Fujimoto)

– INFORMATION –

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