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自らの体験を世界で語り、正しい裁きを訴える、ノーベル平和賞受賞者の足跡を追って。映画『ナディアの誓い - On Her Shoulders』で知る21世紀の悲劇とひとりの女性の生き様

2018年のノーベル平和賞受賞者は、まだ23歳のナディア・ムラドさんでした。彼女は、高等教育を受けた専門家でもなければ、国を代表するような政治家でもなく、イラク北部の小さな村で、将来は美容室を開きたいと夢見ていた女性です。

そんな彼女がノーベル賞を受賞するまでにいたった背景にある悲劇と、その活動を追ったのが、ドキュメンタリー映画『ナディアの誓い - On Her Shoulders』 です。この映画からは、平和な日本の遠くで起きた、目を背けてはならない現実だけでなく、世界中の女性にとって地続きの哀しみや憤りが伝わってくることでしょう。

(c)RYOT Films

カメラは、カナダやギリシャ、難民キャンプや国連本部へと、世界中を旅し、さまざまな人から見つめられる中、自らの体験を語るナディアの姿を追いかけます。

秒単位で時間を計り、スピーチの練習をするナディア。そこで語られるのは、彼女の性奴隷としての経験、家族や友人たちが捕えられ殺された、重く苦しい過去です。

ナディアたちヤジディ教徒は、ISIS(イスラム国)によってジェノサイド(大量虐殺)されました。ヤジディ教徒はイラク北部などに暮らし、民族宗教のひとつであるヤジディ教を信仰する少数民族です。ISISは、ヤジディ教を異端とみなし、多くの男性や老人を殺害し、女性にはイスラム教への改宗を迫り、性奴隷として売り買いし、戦利品としたのです。

映画には、実際に被害の様子を映し出す映像はありません。それでも、ナディアの表情やヤジディ教徒の人たちを映し出す映像からは、たくさんの人が取り返しのつかない傷を負い、今もその苦しみのさなかにいるのが伝わってきます。

(c)RYOT Films

(c)RYOT Films

ISISから逃れ、ドイツに渡ったナディアは、性奴隷被害の当事者として、人権活動家として活動を始めます。映画の中では、凛々しく正義を訴えて活動する彼女の姿と同時に、ゴールまでの遠い道のりに、変わらぬ状況に、疲れ切った姿も映し出されます。

被害者としてその傷も癒えていないまま、それでも、「武器としての性暴力」の実体を告発し、根絶を訴え、正義を求めて立ち上がり続けるのです。

(c)RYOT Films

日本で、性奴隷が話題になる機会の多くは、平成も終わる今となっては昭和の歴史上の出来事といった感さえあります。けれども、21世紀の現代に、世界には性奴隷として想像しがたい苦痛を味わっている人たちがいるのです。

さらに21世紀に入ってから、世界には膨大な数の難民が溢れています。2017年末時点で、ヤジディ教徒だけでなく、シリア、ミャンマーといった国々から逃れてきた難民は、6000万人以上とも言われています。(UNHCR発表

また、日本のような先進国でも、性暴力やセクシュアルハラスメントなど女性の人権を踏みにじるような事件は後を絶たず、女性というだけでその尊厳が守られない現状があります。

映画『ナディアの誓い - On Her Shoulders』 から、情報や知識をもとに想像を広げ、考えを深めることで、さらに大きな、もしくは身近な問題への関心が深まるかもしれません。

ナディアの体験やその心の痛みは、想像を絶します。けれども、それを悲劇として遠い日本から眺めてかわいそうと涙を流すだけではなく、そこで自分に何ができるのか、何をすべきなのか、改めて考えるきっかけにできるはずです。『ナディアの誓い - On Her Shoulders』はそれだけの力を持った映画であり、ナディアの訴えは人権や尊厳という普遍的な価値に対する願いなのです。

– INFORMATION –

映画『ナディアの誓い - On Her Shoulders』 は、2019年2月1日(金)アップリンク吉祥寺ほか、全国順次ロードショー

ノーベル平和賞2018の受賞者、ナディア・ムラドはISIS(イスラム国)による虐殺と性奴隷から逃れた23歳のヤジディ教徒だ。彼女は、普通の女の子のように生きたいと思う時もある。しかし残された同胞のため、国連などの国際的な表舞台で証言を続け、やがては同郷の人々の希望の存在となっていく。
監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
配給:ユナイテッドピープル
原題:On Her Shoulders
95分/ドキュメンタリー/2018年/アメリカ
http://unitedpeople.jp/nadia/