不便なことを見つけるのは、創意工夫のスタート地点かもしれない。 サンティアゴ発、工事で閉鎖中の道路に出現した巨大アートって?

あなたは街中で工事現場を通りかかるとき、どんな印象を抱きますか? 
「邪魔だな」。
「殺風景だな」。
そんな、あまり好意的ではない印象を抱くことは少なくないでしょうし、通りが通行止めになっていれば、その不便さにいらだつこともあるかもしれません。

今回紹介するのは、そんなネガティブなイメージとは真逆の工事現場です!

2017年12月21日、チリの首都にしてチリ最大の都市であるサンティアゴ市内のバンデラ通りに、全長400ヤード(350メートル強)、3,300平方メートルにおよぶ、巨大でアーティスティックな遊歩道が出現しました!(引用元)

Paseo Bandera(バンデラの遊歩道)」と題されたこの道は、異なるコンセプトで描かれた3つの区画で構成されています。

ひとつめの区画、バンデラ通りとコンパニア・デ・ヘスス通りの交差点、ちょうど「先コロンブス期美術館」がある区画は、ヨーロッパの文化が入ってくる前のチリの歴史がテーマ。

バンデラ通りを南下し、ウエルファノス通りとの交差点を過ぎると、移民により文化が変化し、多様性に富むに至った現代チリの区画に入ります。

さらに南、アグスティナス通りとの交差点から先のモネダ通りに突き当たるまでの区画には、より強い色彩や球体などを用いてチリの未来が描かれています。

Paseo Bandera after pedestrianization (blvckimvges)

これらの巨大アートをつくった立役者は、チリ出身で現在はニューヨークに住むビジュアル・アーティスト、Dasic Fernández(以下、ダシックさん)。

サンティアゴ市当局が地下鉄建設のために5年近くも通行止めになっていたバンデラ通りの広大なエリアに、人びとと活気を呼び戻すためのアイデアを求めていると聞いたダシックさんは、建築家のJuan Carlos Lópezさんに協力をあおぎ、たった3日で提案書を作成します。

やがて市からの委託を勝ち取ると、今度は120人以上の人を動員。地元やラテンアメリカのアーティストたちからなる20のチームを編成して連携しあい、たった30日間で総工費55万ドルの巨大アートを完成させてしまったんです!

それだけではありません。ダシックさんは、遊歩道から見える場所に企業ロゴを配置するという条件で民間企業から資金援助をとりつけ、市民の税金を使うことなくプロジェクトを完遂するという離れ業までやってのけたのです。

学生時代にチリ大学で建築を学んでいたダシックさんは、自らの専門を模索するうちに、都市空間においてアートが生み出すインパクトに関心を抱くようになっていったといいます。

「バンデラの遊歩道」も、造形の美しさを眺めて楽しむだけでなく、空間そのものを楽しむことができる点が大きな魅力。遊歩道には随所に植え込みや駐輪場、そして人々がくつろげるベンチなどが配置されており、人びとは思い思いの時間を楽しむことができます。

とはいえ、もともと地下鉄の建設現場。「バンデラの遊歩道」は期間限定のプロジェクトで工事完了とともに撤去され、元の通りに戻されることになっていました。しかし、サンティアゴ市のFelipe Alessandri市長はこの遊歩道をいたく気に入ってしまい「もし私に決定権があるのであれば、遊歩道を永遠に保存したい」と主張しているほどなのだとか。

とはいえ、話は簡単ではありません。バンデラ通りは交通量が多く、公共交通機関も通るような大通りですから、いつまでも通行止めにしておくと周囲の交通渋滞が避けられないためです。

遊歩道の今後の扱いについては、チリ運輸省が検討して年末までに結論を出す予定。遊歩道が現在のままの形をとどめられるのは、少なくとも地下鉄が開通する今年の8月末までだということです。

工事中・通行止めといった不便な事情を逆手に取り、自らの得意分野と創意工夫で市民に愛される空間をつくり出してみせたダシックさん。

私たちの生活でも不便を感じた時は「どうしたらこの不便な場・物・ことを楽しくできるか」という目でみつめ直してみると、なにか別の可能性がみえてくるかもしれませんね。

[via Citylab, My Modern Met, Americas Quarterly, Emol, Pulso, Disfruta Santiago, fmdo]

(Text: 西川富佐子)

この記事は「作文の学校」卒業生を対象に行なった「アイデア記事コンペ」への応募作品です。