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♪許してほしい 君は僕の人生そのもの♪ ペルーの女性たちを魅了した大ヒットラブソング、その歌詞に秘められた悲劇とは。「A LOVE SONG WRITTEN BY A MURDERER」

もう黙っていられない。

そんな思いで女性たちが声を上げ始めたムーブメント「#Me Too」は、セレブたちの勇気ある告白が続いたこともあり、世界中で勢いを増しています。男性からの応援があれば、もっと心強いはず。そう思っていたら、ペルーでひとりの男性ミュージシャンが熱いラブソングで世界を変えようとするアクションを起こしていました。

家父長制や男性優位の文化が根強く残っているペルーでは女性への暴力が後を絶たず、行き過ぎた暴力により命を失う女性も少なくありません。ドメスティック・バイオレンスは愛憎が複雑に絡み合うパートナー間で起こることでもあり、被害者の中でも愛と暴力の境目がわからなくなるという難しさもあります。

傍目には気づかれにくいドメスティック・バイオレンスを終わらせるためには、被害を受けている本人が問題意識を強く持つことが解決の糸口に。心理的にも支配下におかれがちな被害者に、どうやって気づきのヒントを与えることができるのか。

女性の人権保護に取り組む団体「VIDA MUJER」は、その解決のためにペルーで大人気のシンガーソングライター、ディエゴ・ディボスに協力を求めました。

ディエゴは、新曲のラブソングをリリース。その曲には、こんな愛のメッセージが込められていました。

どう書いたらいいか、
どう話し始めればいいか、僕にはわからない
どう消し去ればいいか、
どう説明すればいいか、僕にはわからない
君を苦しめる痛みのことを

君は僕が愛する人だから
いつもいっしょ
ずっといっしょにいてくれるよね
君は僕の愛する人だから
二人を分かつものはこの世にはない

愛する人、君は僕の人生そのもの
二人の愛を、誰とも分かち合いたくない
私はこれから、君とも誰にも会えない
許してほしい、愛する人よ
君を幸せにできないことを
プライドが邪魔して話せないことを

甘い歌声が心に響くこのラブソングは、リリースから1週間で大ヒット。それを受け、ディエゴは国中でライブを開きました。そして、この曲が国民的な話題になってきたタイミングで、ディエゴは歌詞に隠された秘密を公の場で発表しました。

実はその歌詞は、ディエゴの創作ではなく、実際に起きた殺人事件の犯人が書いた手紙をもとにしたものだったのです。殺人犯は、夫。殺されたのは、妻でした。暴行した夫は妻に、「もう傷つけたくない」「許してほしい」という思いを綴った手紙を送っていたのです。それを読んだ妻は夫を許しました。が、6日後に彼女は夫により惨殺されることに…。

ディエゴはこう訴えました。

もし男性があなたを殴ったり、暴力を振るったりしたら許してはいけない。二度とチャンスを与えてはいけない。

愛という甘い言葉に隠された悲劇を、もう二度と起こしてはいけない。そんなディエゴのメッセージはSNSを通して820万人以上の人に届き、「VIDA MUJER」は1カ月で3,000人以上の女性を支援することができるようになりました。

ドメスティック・バイオレンスのような当事者の複雑な心理が絡み合った問題の場合、直接的なメッセージで変化をつくることは難しくなります。エンターテインメントとして届け、時限爆弾のようなかたちでメッセージを響かせる。一流のミュージシャンだからこそ成功したアクションだとも言えますが、社会的なメッセージこそ、工夫に工夫を重ねることが大切だと実感させられました。

(翻訳協力: Akiko Tsuchiyaさん)

こちらの記事は「greenz people(グリーンズ会員)」のみなさんからいただいた寄付をもとに制作しています。2013年に始まった「greenz people」という仕組み。現在では全国の「ほしい未来のつくり手」が集まるコミュニティに育っています!グリーンズもみなさんの活動をサポートしますよ。気になる方はこちらをご覧ください > https://people.greenz.jp/