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こんな人とつながると、きっと人生おもしろくなる。世界ふぐ協会理事もやる“変態パン屋さん” 追崎雅賀さんがつくる「つながる場」

東京都世田谷区、祖師ヶ谷大蔵の商店街から一本入った道沿いに、「笑恵館(しょうけいかん)」という民家を改装した交流施設があります。そしてその中にある「せたがやブレッドマーケット」というパン屋さんの店主・追崎雅賀(おいさき・まさよし)さんは、greenz peopleでもあり、世界ふぐ協会の理事。そしてまわりからは「変態パン屋さん」とも呼ばれているんだそう。

どうして交流施設の中でパン屋をやっているのか、世界ふぐ協会とは何なのか、どのへんが変態なのか、など数々の謎を解き明かしていって見えてきたのは、「人がつながる場」の大切さでした。

ビジネスコンテストから生まれたパン屋

まず、追崎さんはどうやって「せたがやブレッドマーケット」をやるようになったのでしょうか。

もともと福岡でチェーンのパン屋で店長をやっていたんですが、冷凍生地だったのでパンの理屈理論はわからなくて、3ヶ月間だけのつもりで東京に勉強しに来たんです。それがやってみたら面白くて、たまたま通っていた研究所の助手の席が空いていたので就職してしまいました。

研究所で様々な材料で製パン試験などを行って、パンの「理屈理論」を身に着けた追崎さんは、その後、定時制の高校に通いながら東京障害者職業能力開発校の製パン科で講師として働くようになり、さらに油メーカーに勤めるなどしたのち、自分でパン屋をやろうと考えるようになったのだそう。

東日本大震災もあって、自分のやりたいことをやろうと思い、パン屋を立ち上げる準備をはじめました。とは言ってもどうしても初期費用がかかるので、計画を立てながらお金を稼いでいました。

そんな時に、笑恵館のオーナーとの出会いがあったのだそうです。

せたがやソーシャルビジネスアワードというのがあって、2013年に私もパンのアイデアで出たんですが、そこに大家さんも出ていたんです。

その時は面白いおばちゃんがいるなくらいに思ってたんですが、本気でここ(笑恵館)をやりたいとミーティングを始められて、僕もそれに参加するようになりました。それで意気投合して、ここでパン屋をやることになったんです。

笑恵館」はオーナーの田名夢子さんが自宅の1階と隣のアパートの一部を会員制のシェアオフィス兼食堂兼レンタルスペースとしたもの。

追崎さんはその立ち上げに設計段階から関わり、2014年にせたがやブレッドマーケットとともにオープンさせました。現在は、パン屋の隣のスペースやアパートの一室で民間学童の活動など、いろいろな教室が行われているそうです。

そして、このようにイベントでの出会いをきっかけに、地域の施設にパン屋をつくるというのが、追崎さんのあり方の謎に迫る一つの鍵になるのです。

面白そうなところにはとりあえず行く

「せたがやソーシャルビジネスアワード」もそうですが、追崎さんはさまざまなイベントに参加するのが好きなのだそう。

面白そうなイベントがあれば、なんでも行きます。以前は、FabCafeやロフトワークのイベントによく行っていました。単純にイベントを楽しみに行くこともあれば、参加者で面白そうな人がいるから行くこともあって、そういうイベントで出会った人たちと仲良くなって、別のイベントが立ち上がったりすることもありました。

今は忙しくてあまりイベントに行けていないのが悩みだそうですが、以前は本当に何でもどこへでも行っていたそうです。

面白いと思ったら即行動で、イベントで知り合ったら次の休みには遊びに行ったりもしていました。以前、世田谷区の職員さんの紹介で(新潟県十日町市の)松代の人たちと知り合ってすぐ次の休みに行ったこともあって、その時に稲刈りなんかもやらせてもらえてすごく楽しくて、それからちょこちょこ行くようになったんです。

それで、松代の民家をまわっておもてなしを受けるっていうイベントがあった時にも行って、外国人と知りあって、「今度遊びに行きます」って言われたんですけど、本当に次の週くらいに来たときに「本当に来たの?」って思って。「ああ、自分もこう思われてるんだな」と気づきました。

それからは考えて行動しようと思ったんですけど全然できてませんね(笑)

こんな感じで色々なイベントに参加し、すぐに行動することで、いろいろな人とつながりができていったのだそうですが、その”つながる”秘訣を聞くとこんな答えが帰ってきました。

自分がつながりを持てたのは、うまくコミュニケーションがとれる場があったというのが大きくて、そういう場が自分の中にあればつながっていくと思います。だから興味あるものに飛び込んじゃうんです。なにか楽しそうなものがあれば何でも参加してやろうと。

自分が上手くコミュニケーションを取れる場を見つけることが重要で、追崎さんの場合はそれがイベントの場だったと言うのです。そして、そうやって何にでも飛び込んだ結果、いつの間にか「変態パン屋」と呼ばれるようになります。

最近は体がもたないのであまり参加できてないんですが、以前は12時くらいまでイベントに参加して2時間くらい寝て朝3時からパンをつくるなんてこともやってました。そんなふうにしてたら、みんなから「変態、変態」って言われるようになって。

変態と言われるくらいの行動力があったからこそさまざまなつながりをつくる事ができたのだと思いますが、実は追崎さんに「つながりたい」という気持ちはあまりないのだそう。

自分がつながりたいというよりは「人をつなげたい」がメインなんです。面白い人とかモノとか場所があったら紹介したいと思うし、この人とこの人つなげたら面白いんじゃないかと考えるのが好きなんです。

自分がつながるのではなく、人と人をつなげるという視点は意外なものでした。でも、考えてみれば自分でつながろうとするよりも、誰かにつないでもらったほうがスムーズにつながれることってありますよね。しかもそういうときのほうがその場が盛り上がり、コミュニケーションもうまく行き、つながりが強くなるような気がします。

追崎さんも参加したイベントに「つなげるのが得意な人」がいたことで、「うまくコミュニケーションを取れる場」に身をおくことができた経験から、「自分もそういうことがやりたい」と思うようになったのだとか。

出会いから生まれる変態パン

さて、追崎さんが変態パン屋と呼ばれる理由の一つは、変態のようにどこにでも顔を出すからということですが、実はもう1つ理由があります。それはつくるパンが「変態パン」だから。

「変態パン」というのは、一般的にはあまりパンには使わないような食材をパンと組み合わせてつくるパンのこと。酒粕や醤油、味噌など日本の伝統的な食材を使ったり、醤油とクリームチーズのように意外な食材を組み合わせたり、そんな変態なパンをつくっているのです。

うかがったときは「今日は変態パンはあまりない」ということで意外と普通のパンが並んでいました。ちょっと残念。

そして、そんな変態パンをどうやって発想するのか聞くと、これまた変態的な答えが帰ってきました。

だいたい居酒屋です。居酒屋で出会って意気投合した人が日本酒の蔵元さんで、その人から酒粕をもらってパンにしたり、あとは「このおつまみの組み合わせ面白いな」と思ってパンにしてみるとか。

普段から「こういう材料があったら面白いんじゃないか」というリストはつくっているものの、自分から探すのではなく、持ってる人がいて話して面白かったら「そういえば欲しかったんです」って聞いてみるのだそう。

そうしていると、向こうから「海苔使ってつくってよ」と言われたり、思いもしない材料を提案されることもあって、それも楽しみながら新しいパンを日々つくっているのだそうです。

ある意味では、これもパンと何かを「つなげる」行為なわけで、追崎さんは人でなくてもつなげるのが好きなんだなぁと思ったわけですが、それなら、イベントでもパンのためのアイデアやつながりを得ようとしているのかと思いきや、「基本的には関係ない」そうで、興味があればパンとは関係なくどこにでも行くのだとか。

パンでフィルターをかけてしまうと、偏ったり、狭い中で考えたりしてしまうので、基本的にはパンと関係なく、興味があれば行ってそこで刺激を受ければいいと思っています。

それでも、そういう場で知り合った蔵元や醤油蔵からいろいろな材料をいただいて、それで変わったパンができて「あそこは変態なパンしか並ばない」って言われるんですけど、美味しいならいいと思うんです。

追崎さんの考え方はとにかく面白ければいいとか美味しければいいとか単純明快で、それに行動が伴うことで新しい面白いことが周りでどんどん生まれていくのだと感じました。

世界ふぐ協会

そして、そんな中で出会ったのが「世界ふぐ協会」で、パン以外で今一番力を入れている活動なのだそうです。

駒沢でシェアオフィスを借りていた時に、世界ふぐ協会の会長と知り合ったんです。

2012年に東京都が条例を改正して、毒を取り除いた「身欠きふぐ」であれば飲食店が自由に使ってよくなったんですが、会長のお父さんは千葉で飲食店をやっていて、ふぐを出したいと思っていたので、「東京だけずるい」と思ったようで。盛り上げていけば千葉でも条例が改正されるんじゃないかと世界ふぐ協会をつくったそうです。

私は出身が福岡で、福岡ではスーパーで普通にふぐを買って食べられたのに、東京に来てからはなかなか食べられなかったので、ふぐが食べられるならいいなと思って参加しました。

ふぐの調理や販売に免許が必要なことは知られていると思いますが、「身欠きふぐ」について東京都では免許がなくても販売や提供ができるようになったというのは本当に知られていないと思います。せっかく条例を制定したのにあまり普及していないのです。世界ふぐ協会は「世界で唯一の消費者団体」としてその普及に取り組んでいるわけです。

具体的には、色々なレストランに声をかけてふぐを使ったメニューを提供するイベントや、参加者に「てっさを引いてもらって」(さくを薄切りにして刺し身にすること)、それを食べるイベントをやっているそう。

と、真面目に説明しましたが、実際はふぐをネタにしてみんなで楽しむ団体ということのようです。

世界ふぐ協会のイベントの様子

以前は食育とかも考えてたんですが、今は楽しんでもらえればいいと思っていて、だから体験として面白いものをやりたいと思っています。そうする中で、どうして毒のあるふぐを食べるのかという部分にも自然と話しが及ぶので、それでふぐを知ってもらうという目的は果たせるかなと。

なんとも楽しそうな団体で、greenz peopleでも「ふぐ部」をつくってイベントに参加したい!と思ったのですが、そう思わせることこそがまさに追崎さんの「人をつなげる」ことの秘訣でもあるような気がしました。

追崎さんは、これからどんな人やものをつなげていきたいのでしょうか。

これからなにをつなげるか

以前、ちんぷんかん(門前仲町のスナック)でたまご屋さんとコラボしてパンスナックをやったんですが、そうやって人と自分がやりたいことを絡めてなにか楽しいことができたらいいと思っています。

例えば、パン教室をやるのでも、誰か材料を提供してくれる人と一緒にやって、パンのつくり方は教えるけれど、発酵を待っている間にその人の話を聞いたりワークショップをしてもらうとか。作業をして、話を聞いて、できあがったらパンを食べながらお酒を飲んだり、そういうのは面白そうですね。

ふぐ部に続いてパン部までできそうな勢いですが、greenz peopleにも色々なものをつくっている人がいる(詳しくは「ピープル図鑑」をご覧ください)ので、そういう人たちとコラボレーションをして新しいパンをつくったらまた楽しそうですね。そうやって、「この材料でパンをつくってくれ」と言われることは結構あるのでしょうか?

けっこうあります。多いのは味噌で、米味噌、麦味噌、豆味噌とつくりましたが、どれも味が違って、にんにくラー油味噌パンでつくったラスクはお酒好きの方にヒットしました。つくってみて好みに合わないこともあるんですが、持ってきてくれたらつくります。

週末に出店するマルシェで声をかけられることもあるとか。

人と人だけではなく、パンと色々なものもつなげて新しいものを生み出す追崎さん、greenz peopleの間をつなぐ存在にもなってくれそうです。

SNSでつながるのも手軽でいいんですが、やはりリアルで人と人とが共有する「場」が人をつなげるということを実感しました。なので、追崎さんとつながりたい、または追崎さんに面白い人とつなげてもらいたいという方はぜひ、追崎さんのパン屋を訪ねてみてください。

ここは持ち込み自由なので、夏はお寿司とビール持ってきて飲んでる人なんかもいます。それでつまみが足りなったからパン頂戴、みたいな。私はここのフロント係みたいなもので、悩んでいる人や何か探している人がいればつなげるので、どんどん遊びに来てください

追崎雅賀さんの連絡先
せたがやブレッドマーケットFacebookページ https://www.facebook.com/setagayabreadmarket/

(写真: 松沢美月)

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