7月16日、greenz.jpのタグラインは「いかしあうつながり」に変わりました。

greenz people ロゴ

共感を呼び、熱狂を生み出す。スポーツ選手が持つその力を企業や地域の未来に活かすには? イノベーション・ファシリテーター、上井雄太さんに聞いた。

何かよいアイデアが浮かんでそれを実行しようと思ったときに、一緒に行動してくれる仲間がいたらどんなに心強いでしょう。

フューチャーセッションは、多様な立場の人が集まり、未来を描くアイデアを一緒につくりだす対話の手法です。ひとりでは思いつかないアイデアが生み出せるのと同時に、参加者同士が互いの強みを活かして、生み出されたアイデアを力強く実現していけることが特徴です。

今回はそんなフューチャーセッションを推進する株式会社フューチャーセッションズ上井雄太(うわい・ゆうた)さんに登場していただきます。上井さんは “スポーツを通じたまちづくりの未来”に取り組むイノベーション・ファシリテーター。さて、どんなアプローチで未来をつくろうとしているのでしょうか?

新しいリーダーを育てながらワクワクする未来をつくりだす

上井さんが最初にファシリテーションへの興味を持ったのは大学生の頃。お父さんが持っていた『ファシリテーション入門』(日経文庫)という本を読み、ファシリテーターという職業を知ったそうです。

上井さんの持ち味はこの親しみやすい笑顔。なんでも気軽に相談できそうな雰囲気があります

中学高校時代、僕は部活でサッカーに打ち込んでいました。実はその頃の立ち位置がすでにファシリテーター寄りだったのです。たとえば、目標を立てることを提案して、その目標に向かってチームが動けるようにはっぱをかけて……。だから、『ファシリテーター入門』を読んだときの印象は「これは僕が部活でやっていた役割と同じだ。この仕事、僕に向いているのでは?」でした。

大学卒業後、自動車メーカーの社員として広島に勤務。「ファシリテーションは、これからの社会に必要な能力になる!」と考えた上井さんは、仕事以外の時間に勉強会などへ参加して、ファシリテーションを学び続けました。そのときに株式会社フューチャーセッションズ代表・野村恭彦さんの著書『フューチャーセンターをつくろう』(プレジデント社)に出会います。

刺激的な内容の本でした。単に会議をうまく進めるためのファシリテーションではなく、未来を描いて、仲間と一緒に実行する方法が書いてあったからです。

集まった人たちに対話を促すことで、一緒にわくわくする未来を生み出していく。そして、その未来の実現を強制するのではなく、後ろから力強く支援する形でリーダーシップを発揮していく。そんなファシリテーションのあり方に強く惹かれました。「これだ!」と思いました。

上井さんがファシリテーションするフューチャーセッションの様子。まずはアイスブレイクで対話しやすい雰囲気をつくります

上井さんは本を頼りに、広島でフューチャーセッションを自主開催します。有志を募って広島の未来について語り合いました。最初は友だちと3人ではじまった対話の場は、すぐに30人の仲間を集めるまでになりました。

そしてその半年後、上井さんは株式会社フューチャーセッションズにメンバーのひとりとして参画します。

スポーツには活かしきれていない大きな可能性がある

上井さんが仕事を通してつくりたい未来のひとつに、“スポーツを通じたまちづくりの未来”があります。

上井さんはスポーツが持つ大きな可能性を信じています。でも、いまはまだそのポテンシャルが十分に活かし切れていないという問題意識を持っているそうです。

僕はスポーツが好きです。中学高校時代はサッカー部で活動していました。スポーツってすごく魅力的ですよね。多くの人が熱狂します。でも、まだまだそのエネルギーが、組織や地域の中で活かされていないように感じるのです。

大好きなスポーツについて、スポーツの未来について話すときは、表情も真剣。熱い想いがあふれます

少し想像してみるだけでも、たくさんのスポーツに多くの人が熱狂する様子が浮かびます。そして、確かに、そのエネルギーは、もっと組織や地域と連動できそうな雰囲気も。でも、いったいどんなふうに働きかければ、スポーツの可能性を広げることができるのでしょうか。

2016年頃から、縁あってラグビーチームに帯同させていただくプロジェクトを3つ動かしています。3つのプロジェクトは、それぞれ別の組織からオファーをいただいたものです。2019年に「ラグビーワールドカップ2019」が開催されることもあって、いま、ラグビーを盛り上げようという機運が高まっているのでしょう。さまざまな取り組みが動きはじめているのを感じます。

上井さんは「ラグビーワールドカップ2019」に向けて盛り上がるこの機運を組織や地域に根づかせたいと考えています。ラグビーが文化となり、組織の中で輝き、地域に根づくにはどうすればいいのかを、上井さんはステークホルダーと一緒になって考えているのだそうです。

自分たちに備わっている力に気づいてもらう

3つの案件のなかから、事例をひとつ紹介しましょう。依頼主はNTTコミュニケーションズさんのラグビーチーム「シャイニングアークス」のジェネラルマネージャー(GM)です。GMからは、「企業チームで活躍する選手の価値を選手自身が高めていく方法を考えたい」と相談をいただきました。

“選手たちには、よりよい未来をつくる大きな力が備わっている”。そう信じているからこそ言葉にも力がこもる

NTTコミュニケーションズは、「Victory(ビクトリー」と「Value」のふたつの“V”から、「シャイニングアークス」の価値を高めたいと考えていました。ビクトリーとは、チームの勝利に向かって活動すること。そして、バリューは選手自身の価値を企業の内外で高めていくことです。

ビクトリーについては勝利に向かって厳しいトレーニングを重ねるなど、常に実践が行われています。しかし、バリューはあまり手がつけられていない現実がありました。ラグビー選手の力を、どうやって通常の企業活動に落とし込めばいいのか、企業も考えあぐねていたのです。

企業でスポーツチームに所属する選手は、チームを離れて仕事に戻ると、輝きをなくしてしまう人が少なくありません。チームにいるときは、リーダーシップを発揮したり、ムードメーカーになったりする選手が、仕事の場では目立たない存在になってしまうのです。そして、選手としての活動を終え引退すると、その企業にいられなくなってしまうことがあるのです。いわゆる、企業チームに属するスポーツ選手のセカンドキャリアの問題ですね。

シャイニングアークスの事例では、選手のバリューを見つめ直すことで、企業スポーツ選手のセカンドキャリアの新しいモデルが生まれてくることに期待しました。

企業内のスポーツチームに所属する選手は、通常の仕事への参画度合いが低い場合があります。そこに対して、上井さんは選手たちが自信を持って企業内で活動していけるようフューチャーセッションを仕掛けているのだそうです。

対話のセッションを重ねるたびに、参加者同士、参加者とファシリテーターの信頼関係が深まっていく

今回、フューチャーセッションを行うときに、上井さんはポジティブアプローチという手法を使いました。ポジティブアプローチとは、足りないものを努力して補うのではなく、すでに持っているものに別の角度から光を当てて、魅力を再認識していく働きかけの方法です。

初回のフューチャーセッションでは、「ラグビー選手は会社にとって、どんなプロフィットを生み出せるだろうか?」という問いを投げかけました。この問いをもとに、選手やマネージャーたちに、自分たちの持つ価値を再認識してもらおうと思ったのです。

自分たちが持っているポテンシャルに気づいていないことは誰にでもありますよね。でも、それってもったいない。一流のスポーツ選手ならなおさらですよね。

たとえば、目標に突き進む力、仲間を勇気づける力、周囲の共感を呼ぶ力、健康管理についての知識、強い身体を育てる心がけなど、実は企業が必要としている力をスポーツ選手はすでにたくさん持っているのです。だから、そこを認識し直すことで、可能性を追求してもらうことにしたのです。

そんな問いをもとに、初回は選手と職場のマネージャーで、ありたい未来の自分たちの姿を描き出しました。そして、対話を通じて自分たちのできることを、自分たちで探しはじめたのです。そうすることで、選手たちは、自分たちの可能性を自分たちで発見することができるようになりました。どんどん自信がわいてきて、自分たちのつくりたい未来に、わくわく胸を躍らせるようになりました。

選手たちの様子もどんどん変化しました。たとえば、これまでなら練習が終わったらすぐに帰ってしまっていたのに、練習後もパソコンを開いてメールチェック。やりたい未来が見えてきた選手同士で、打ち合わせをしたり、企画書をまとめたり。それが、ほかの選手にも、どんどん影響を及ぼすようになっていったのです。

未来に希望が浮かんだら選手は自由に動き出す

活動を通じて、次第に選手たちが生き生きとしていく姿は、NTTコミュニケーションズの一般社員からの注目も集めるようになりました。働き方改革を進めていくうえでの大きなヒントになるかもしれない、ということから、一般社員も交えたセッションにも広がってきています。

スポーツ選手には、人の共感を呼ぶ力が備わっていると信じています。だから、こんなふうに、多くの人を自然と仲間にしていくことができる、というのは、今回のフューチャーセッションの構想段階から考えていたことでした。しかし、広がり方は想定外ですね。当初、半年くらいのセッションを考えていたのですが、その枠でおさまりそうにありません。

ただ、上井さんを困らせる展開も待ち受けていたそうです。そのひとつが、選手にとってはチームとしての勝利、つまりビクトリーが優先されるということだったのだそうです。

試合が近づくとセッションに参加できない選手が出てきます。また、怪我の影響でセッションに参加できない選手も出てきました。ここは少し困ったのですが、その反面、とてもわくわくすることも起こりました。

ビクトリーを優先するためにセッションに参加できない選手はいるのだけれど、そういった選手たちは、自分たちで自主的に、みんなで対話をする場を設けるといった活動をはじめたそうです。

未来を考えたことで選手たちのなかに希望が生まれました。そうなると強い。目標が定まれば、そこに向けて人並み外れた努力ができるのがスポーツ選手です。僕も彼らの未来に役立ちそうな場や人をどんどん紹介しました。そうしたら、自分たちで考えて率先して動くんです。

フューチャーセッションの場を設計しなくても、未来に対する希望が具体的に見えるだけで、みんな自主的にどんどん動けるようになる……。これは、今回のプロジェクトを通じて僕が学んだことですね。

フューチャーセッション参加者のアイデアが、具体的なプロジェクトとして動き出す瞬間に喜びを感じるという上井さん

また、「シャイニングアークス」は来年度、千葉県浦安市に練習グラウンドを移転する予定があり、こちらのプロジェクトも選手が主体となって地元とパイプをつくりながら進めています。

まちの人にしても、いきなりスタジアムの建設がはじまるのではなく、まずはどんな選手が来るのかを知りたいのではないかと思います。選手たちがまず地域との関係をつくって、受け入れてもらう準備を整えていく。選手には、そんなふうに地域の人たちの共感を呼ぶ力があると思います。

自分たちで生み出したアイデアだからこそ、はじめられる

上井さんがフューチャーセッションを行う上で心がけていることは、新しいアイデアの創出と、それを実行する仲間づくりのプロセスなのだそうです。

「新しいアイデアを考えましょう」「仲間をつくりましょう」という取り組みは、どちらもいろんなところでなされていると思います。フューチャーセッションのすばらしいところは、このふたつを同時にやっているところだと僕は思っていて。「この仲間とやっていきたい!」と思えるからこそ、新しいアイデアにどんどんチャレンジしていけるんです。

そして必ずそこに、自分たちの想いを込めること。誰かに言われてやるのではなく、自分たちで考えて、取り組んでいくのがベストです。だからこそ、自分ごととしてプロジェクトに取り組むことができます。プロジェクトがうまくいかなくても、支え合いながら、そこからまたはじめていくためのポイントだと考えています。

たくさんの経験を積んできたことで、参加者発のプロジェクトに対して、より深い支援が行えるようになった

上井さんの今後の目標は、さまざまな分野で活動するイノベーション・ファシリテーターを増やしていくことだそうです。得意分野を持った人がつながればつながるほど、新しい可能性が広がると考えています。

アスリート×イノベーション・ファシリテーター、プログラマー×イノベーション・ファシリテーター、アーティスト×イノベーション・ファシリテーターみたいに、専門分野を持ったイノベーション・ファシリテーターの数を増やしたいですね。そして、みんなで集まって、なにか壮大なプロジェクトをやりたいです。

メンバーが増えれば、それだけ勢いがつき、つくりたい未来がリアルになります。確かに、それはイノベーションを生み出す上で大きな原動力になっていきそう!

シャイニングアークスのメンバーは、何人かがファシリテーションを勉強したいと手を挙げてくれています。こんな人が増えていくとどんどん変革を起こしていけそうですよね。

フューチャーセッションの参加者に寄り添う。あるいは若いファシリテーターの活動に寄り添う。そんな、“寄り添い型のファシリテーション”が上井さんのスタイルだ

それぞれ個性的なメンバーが揃うフューチャーセッションズ。その中で、上井さんは自身の強みについて「仲間として伴走するタイプのファシリテーターですね」と答えてくれました。

まだフューチャーセッションズに入社する前に、ファシリテーターとして第一歩を踏み出した頃、テンパってしまったことがありました。そのとき、ファシリテーションを教えてくれた先輩が、「ナイスチャレンジ!」って、声をかけてくれたんです。その経験があったおかげで、僕はファシリテーターとして、それからも挑戦していくことをあきらめずに済みました。

ファシリテーターとして活動していくには、そんなふうに、サポートしてくれる仲間の存在が大切なんですよね。だから僕は、未来を変えていきたいと思う人、ファシリテーションをやってみたいと思っている人に、伴走していけるファシリテーターになりたいのです。

何事も最初はうまくいかないかもしれません。でも、仲間を見つけて小さくてもいいから踏み出していくことが大切なのではないでしょうか。

つながればつながるほど、きっと未来はつくりやすくなると思います。未来思考で話せる仲間を、どんどん増やしていきましょう!

– INFORMATION –

◆フューチャーセッション説明会 ~新規事業コンセプトの創出事例とセッション体験~

2018年1月19日 10:00~12:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2742
2018年1月19日 14:00~16:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2743
2018年1月19日 19:00~21:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2744
2018年1月23日 10:00~12:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2745
2018年1月23日 14:00~16:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2748
2018年1月23日 19:00~21:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2747

◆フューチャーセッション説明会 ~対話から始まる働き方変革とセッション体験~

2018年2月20日 10:00〜12:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2753
2018年2月20日 14:00〜16:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2754
2018年2月20日 19:00〜21:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2755
2018年2月27日 10:00〜12:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2758
2018年2月27日 14:00〜16:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2756
2018年2月27日 19:00〜21:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2757