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暮らしているまちで、子育てから生まれた思いを形に。東京都羽村市で始まった、赤ちゃんとお母さんをつなぐ「RICCO Japan」のオーガニック日本茶

みなさんは、子どもと気持ちを分かち合う時間はありますか?

子育ては思いのほか慌ただしく、子どもと一緒にゆったりと過ごす時間は、なかなかつくれないものですよね。

大好きな日本茶を通じて、子どもとお母さんがつながる時間を届けたい。

自身の子育ての経験からこんな思いを抱いた増田真梨さんは、お母さんと赤ちゃんが一緒に飲めるオーガニックな日本茶を広めようと、自宅のある東京都羽村市で「RICCO Japan」を立ち上げました。

2016年7月、日本茶の販売から始めると、11月には「母と子のためのオーガニック日本茶サロン」の運営も開始するなど、少しずつ活動の幅を広げています。

ところで、日本茶はカフェインを含むことから、赤ちゃんの飲み物には適さないと思っている方も多いのではないでしょうか。確かに市販の日本茶はそうです。でも、茶葉の選び方や淹れ方を工夫することで、日本茶は赤ちゃんもお母さんも楽しく飲めるものになるのです。

日本茶が大好きになった増田さんが子育てをきっかけに起業する経緯や、活動に込めた思いをお聞きしました。

増田真梨(ますだ・まり)
1983年生まれ。静岡県浜松市出身、東京都羽村市在住。老舗お茶屋に嫁ぎ、煎茶の面白さに惹かれる。日本茶検定1級。社団法人日本茶インストラクター協会認定日本茶アドバイザー。茶道歴15年。2014年出産を機に、「食育×オーガニック×日本茶」を意識するようになる。2016年「RICCO Japan」をスタート。

子どもとの暮らしを大事にすることで形になった
「RICCO Japan」の活動

「RICCO Japan」が販売する日本茶の最大の特徴は、なんといっても親子で一緒に飲めること。赤ちゃんや子どもが苦手とする日本茶独特の苦みが少なく優しい味で、かつ、子どもの繊細な味覚でもしっかり味わえる本格的な茶葉を選んでいます。静岡県の山奥で、農薬・化学肥料を一切使わずに育てられた茶葉は、増田さんが直接足を運んで選んだ、安心・安全で“確かな”ものです。

「煎茶」、「抹茶入り玄米茶」、「ほうじ茶」のどれもが赤ちゃんでも飲める優しい味

パッケージをカラフルな色やイラストにしたのは、赤ちゃんが親しみやすくするため。お母さんのカバンに入れても場所を取らない小ぶりなサイズにすることで、“いつもの味”を持ち歩くことができます。

また、ティーバッグにはとうもろこしからつくられた自然素材を使うなど、「RICCO Japan」の日本茶には、子どもに飲ませたくなるような、お母さん目線のアイデアが詰まっています。

出先では簡単に淹れられるティーバッグが活躍。土に還る素材なのも安心です

「RICCO Japan」の活動は、赤ちゃんを育ててみないと思いつかなかったこと。子どもの日々をみているから形にできたことなんです。

増田さんは老舗の日本茶専門店に嫁ぎ、勉強するうちに煎茶の面白さを知りました。

以前は日本茶をほとんど飲まなかったのですが、結婚して毎日飲むようになったら体調が良いことに気づいたんです。油っこいものよりは、味付けの薄い和食を好むようになったり、身体のバランスが崩れた時に飲むと、リセットされたりする感覚がありました。

その上、カテキンやテアニンといった身体にいい成分が含まれていて、虫歯予防やアトピー・花粉症予防などの効果もある。大人の私でも変化を感じたのだから、子どもにもきっといいだろう、自分の子どもにも飲ませてあげたいと思いました。

しかし出産し、子育てをするなかで赤ちゃんが飲める日本茶が売られていないことに気づきます。

日本茶を子どもたちにも飲んでもらいたいという思いをもった増田さんは、赤ちゃんが日本茶を飲むために必要なことを調べ、試行錯誤を繰り返しました。

そうしてたどり着いたのは、ノンカフェインといった加工処理した茶葉ではなく、カフェインを含んだ自然そのものに近い本格的な茶葉でした。

いろいろなお茶を試しましたが、加工処理をすると味や栄養素が違ってきます。私がこの先ずっと自分の商品として販売したいのは、見かけの良さだけではなく、中身がしっかりしている日本茶。赤ちゃんとお母さん、お父さんが一緒に飲める、本物のお茶を届けたいと思ったんです。

お茶、子育て、食、有機農法などさまざまな本がオフィスには置かれています

妊婦の方やお子さんはカフェインを摂り過ぎないように留意してください、という東京都福祉保健局の指針、そして毎日摂取して健康に影響が出ないと推定される量には個人差があることを踏まえて、増田さんはカフェインを最大限に抑えた飲み方をすすめています。

やっぱりカフェインは赤ちゃんには摂らせたくないものですよね。でもそこは、お茶の淹れ方を工夫することで調整できるんです。

増田さんが提案しているのは、水出しで淹れる方法。沸騰したお湯を常温に冷まして、10分間抽出します。これは、抽出温度が低いとカフェインが出にくいという緑茶の特徴を生かした淹れ方ですが、茶葉そのものにカフェインが含まれているため、淹れたお茶にはどうしても微量のカフェインが含まれます。

どれくらいのカフェイン摂取量だと乳幼児でも安全か、国内では明確な指標や研究結果がありません。たとえばココアやチョコレートにも、カフェインは含まれています。日本茶にはテアニンやカテキンのような積極的に摂りたい成分も含まれているのに、カフェインを含むからといって子どもに一切飲ませないのはもったいないと思うんです。

私は、日本茶のことを深く知り、メリットとデメリットを理解した上で、日本茶のすばらしさにちゃんと焦点を当てたい。カフェインを最大限抑えた飲み方と一緒に、子どもが飲めるオーガニックな日本茶を広めていきたいと思っています。

それに、食は毎日の積み重ねであり、健康をつくるものです。いきなり本気で食生活を変えるのは大変かもしれませんが、湯冷ましとティーバックでつくることのできるオーガニックな日本茶だったら取り入れやすいとも思うんです。

抹茶入り玄米茶の玄米は浮かび、茶葉は沈む様子も、赤ちゃんにとっては興味深いもの。そのため、お茶の様子が見えやすい透明ボトルを使っているそう

さらに、水出しだと、苦味や渋味を抑えながら、甘味や旨味を引き出せることから、赤ちゃんの持つ繊細な味覚を育むこともできると言います。

月齢の低い赤ちゃんが実際に飲む量はスプーン1杯程度の子もいれば、小さなコップでごくごく飲む子もいてさまざま。水分補給というよりは、味に親しむ感覚で飲ませてほしいです。買ってすぐに飲める便利な飲み物とは違って、つくりたての美味しさを楽しむことができるし、保存料も入っていないから安心です。

そして日本茶の味に慣れてくると抽出時間を長くして、好みの濃さに調整して飲むことができるのもこの淹れ方のいいところ。ただし、20分以上になるとカフェインが多くなり、苦味も感じるので、美味しく飲める10分を目安に薦めています。

初めて飲む赤ちゃんには飲みやすくするために、30秒抽出したお茶から試してもらっています。赤ちゃんには短い抽出時間のもの、お母さんは長めに抽出したものにすることで、親子で同じお茶を飲むことができます。お母さんと同じポットから出てきたお茶を飲むのは、赤ちゃんにとってうれしいことなんですよね。

赤ちゃん専用の日本茶ではなくて、お母さんと一緒に飲める本格的な日本茶を。取材で増田さんに淹れていただいた日本茶は、甘味があって、ほっとするような美味しさでした。苦味や渋味をほとんど感じなかったですし、子どもも美味しく飲める日本茶なのも納得です。

増田さんはマルシェやイベントへ積極的に出店し、お茶のことと一緒にカフェインを抑えられる淹れ方も直接伝えています。赤ちゃんの繊細な味覚を満たす味、おしゃれなデザインなどから、「RICCO Japan」の日本茶は、ママたちの間で少しずつ知られるようになってきています。

お母さんと同じポットの日本茶が飲める、という体験

増田さんは2016年11月、自宅で「母と子のためのオーガニック日本茶サロン」(以下、「日本茶サロン」)を開きます。お母さんが子連れで参加できて、日本茶のことを知り、淹れ方を体験できる場所として、その後も月2回のペースで開催。その日は増田さんのお子さんも、保育園を休んでみんなと過ごす特別な日なのだとか。

「日本茶サロン」の様子。羽村市独自の制度「赤ちゃん休憩室」の登録施設にもなっていて、開講日以外は、おむつ替えや授乳・調乳のできる「赤ちゃん休憩室」として開放しています。

「日本茶サロン」を思いついたのは、当時1歳だった子どもと、ゆっくり何かしたいなと思った時。お茶の淹れ方を体験してもらう場所をつくれば、みんなでお茶を淹れたり飲んだりすることができて、自分の子どもも保育園以外の地元のお友達と遊ぶことができるからちょうどいいなと。

「子育てを大事にしたい」と話す増田さんらしい形で立ち上げられた「日本茶サロン」には、リピーターやお母さんたちの口コミで参加する方が増えてきています。

はじめに、私たち親子でお茶を淹れる様子を見せた後、参加された方にも実際に淹れてもらっています。

赤ちゃんが触ることができるように茶葉をテーブルに広げたりもしていますね。家だと散らかって掃除が大変だからとやりたくないことも、ここだったら数人分の片付けが1回で済むからいいかと思って。

参加者にお茶を提供するだけではなく、淹れる体験をしてもらうのも「日本茶サロン」の特徴。それは日本茶を淹れる“過程”が大切だと考えているから。

ポットに入れた後、しだいに茶葉が開き、水の色は緑色に

台所で淹れてコップに注いで出したお茶はただのお茶なんです。

でも、ポットに茶葉と水を入れるところから、茶葉が開いて透明だった水が緑色に変わるまでを一緒に見て過ごすことは、赤ちゃんにとってお母さんと楽しいことをしたという体験になります。それを体験するかしないかで、赤ちゃんの “飲んでみたい”というわくわく感が違うんです。

「お茶を淹れようか」と言うと、赤ちゃんはお母さんと一緒に何かできるとわくわくします。私の子どもは、今は少し大きくなって、引き出しからお茶を選んだり、自分で茶葉をポットに入れたりするんですよ。

赤ちゃんと体験を共有し、言葉をかけながらゆっくりお茶を淹れることは、赤ちゃんにとって五感で感じたことを受け止められる豊かな時間なのだと思います。

一日の飲み物のうちの一杯を日本茶に変えるのは、そんなにハードルの高いことではないと思うんです。オーガニックな日本茶で、親子で過ごす時間がより豊かになればいいなと思っています。

RICCO(リッコ)とは、イタリア語で“豊か”という意味。“自分ごと”から始めた増田さんの活動には、こうした思いが込められていました。

日本茶を淹れる時間は赤ちゃんにとって特別なもの

「RICCO Japan」を始めて2年目を迎える増田さん。起業したことで地元・羽村市でも、新しい交流が増えたと言います。

羽村市はコンパクトなまちなので、誰かと誰かが知り合いだったりするんです。それに、温かい方が多いですね。たとえば「こういうことをしたいんだけど」と相談すると、力になってくれそうな方を紹介してくれたりします。起業したことで新しい出会いが増え、地域とのつながりも深まったと実感しています。

そして、「子育てを中心にしたい」と話す増田さんに、起業し、育児と両立する上で大切にしていることを教えてもらいました。

起業したからには頑張りたいので、小さな目標をたくさん設定しています。日々、やりたいことが無限にあって。子育てを中心にした限られた時間のなかで何をして何をしないかを考えながら仕事をしています。こうして自分で仕事の方向性を決められることも楽しいですね。

地域とつながりながら、自分とお子さんのペースを大事にする姿勢が、「RICCO Japan」を形づくっているのだと感じました。

最後に今後への思いを聞いたところ、次のように話してくれました。

日本茶は、ゆっくり丁寧に淹れることで味も違ってくるし、アレンジして飲めるおもしろさがあります。日本を代表する文化ですし、赤ちゃんに日本茶を飲ませることがもっと当たり前になってほしいですね。

赤ちゃんにとって、お母さんやお父さんと一緒に淹れる日本茶は親の愛情を確かめながら飲める、特別なものだと思うんです。そのことを「RICCO Japan」を通してもっと伝えていきたいです。

あなたにとって、豊かな時間ってどういうことでしょうか?
そして、子どもにとっては?

RICCO Japanの活動は、そんな問いに対する答えを見つけるヒントになりそうです。

(撮影: 星野耕史)

– INFORMATION –

地域イノベーターの育成・支援を行う「にしたま創業キャンプ」に、増田さんが講師として登場します! 【グリーンズ共催】地域資源をいかした仕事をつくろう!「にしたま創業キャンプ@はむら」

【日時】
2017年8月26日(土)、8月27日(日)*2日間開催
26日(土)9:30受付/10:00〜17:00(*初日終了後、別途交流会開催)
27日(日)9:30受付/10:00-17:00

【会場】
26日:羽村市産業福祉センター 2階会議室(羽村市緑が丘1-11-5 JR青梅線羽村駅徒歩8分)
27日:羽村市コミュニティセンター 2階研修室(羽村市緑が丘5-2-6 羽村市役所隣 JR青梅線羽村駅徒歩15分)

【申込み締切】
8月23日(水)22:00
※定員に達し次第、受付を停止します。お早めにお申込み下さい。

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