greenz people限定『生きる、を耕す本』が完成!今入会すると「いかしあうデザインカード」もプレゼント!→

greenz people ロゴ

その数、5万人以上。ロサンゼルスのホームレスを救うべく、学生チーム「Homes for Hope」がデザインしたのは、2週間で安価に建築できる生活拠点!

寝る時間を含めると、1日の中でも長く過ごす場所といえば、自宅ですよね。
帰って横になれる場所があるというのは、当たり前のことだと感じますが、帰る家を失い路上で生活している人は数多くいます。

日本には6000人ほどのホームレスがいると言われ、今回ご紹介するプロジェクトの舞台であるロサンゼルスには、現在5万人以上の人が路上で寝起きしていると言われています。

そんなLAのホームレス問題を解決するために立ち上がったのが、今回ご紹介する「Homes for Hope」。サウスキャロライナ大学で建築を学ぶ学生11人が、NPOや行政との連携のもと進めているこのプロジェクトは、2週間で建てることができ、コストも抑えられた画期的な家を設計し、話題を呼んでいるのです。

「Homes for Hope」の家の前で写真を撮る学生ら

「安くて簡単に建つ」。
そう聞くとプレハブみたいな家を思い浮かべるかもしれませんが、そんなことはありません!

95平方フィート(約4.7畳)のスペースに、ベッド、机、椅子と生活に必要なものはそろっています。窓も2つあり、日が差しこむ明るい室内に。

ミニマムなものだけがそろうタイニーハウスのような室内

家には最低限のプライベートな空間しかないものの、お風呂場やダイニング、ワーキングスペースといった他の機能をもつ家と組み合わせることもできる、非常に機能的なつくり。移動式の家なので、他の場所で組み立てることも可能なのだとか。

家の設計図

また、デザインにも優れており、室内は木のあたたかみにあふれ、外はこぢんまりとしてかわいらしい見た目になっています。

白が基調の落ち着く雰囲気で、思わず昼寝したくなりそう

このように、機能性にもデザイン性にも優れた「Homes for Hope」の家ですが、プロジェクトを進める上で大きなハードルが2つあったといいます。

一つは住宅規制が厳しいこと。LAで家を建てるには大変難しい基準を超える必要があり、建設許可を取るのは通常数年もかかるのだそう。

そこで、この問題を解決するべく「Homes for Hope」のメンバーは、規制に対抗するのではなく、ルールに詳しい行政側の人々をプロジェクトに巻き込むことにしたのとか。そして、住宅規制に合わせて形やサイズなどを決定することで、規制にかかることなく早急にプロジェクトを進めていきました。

限られたスペースを最大限活かすため、窓の部分は出っ張ったつくりになっている

もう一つのハードルは、ホームレスのためのシェルターを設置するエリアが限られていること。そこで彼らは、シェルターと一般的(恒久的)な家の間、つまり“一時的な家”として建設することで、この困難を乗り越えました。

”一時的な家”とすることで規制をクリアするだけでなく、必要なときにすぐ建てられるので、撤去するのも簡単に。空いているスペース、例えば建設予定地や駐車場に一時的に設置することもできるので、ホームレスが寝られる場所を増やすことにつながります。

そして現在は、1軒あたり2万5000ドル(約280万円)のコストがかかるそうですが、将来的に大量生産することで更に抑えられる見込み。日本における仮設住宅建設費が一戸あたり400万円程度とされているのと比較すると、格安であることは明らかでしょう。

プロジェクトの家を空きスペースに複数建てることも可能。

「Homes for Hope」を率いる大学教員、Sofia Borges(以下、ソフィアさん)は、こう語っています。

このプロジェクトでやっていることを、何も“特別”なものにはしたくありません。特に建築をやっている人にとっては、こうした取り組みはごく当たり前のことなのです。

ホームレス問題という社会的に重大で差し迫った課題が目の前になるならば、それに現実的な手立てで応えないわけがありません。

ソフィアさん

日本においても震災の仮設住宅やオリンピックの宿泊施設不足、増える空き家など“住む場所”をめぐる問題はつきません。

従来とは異なる手法やデザインを用いて課題解決を試みたり、制約を味方につけたりすることで何か新しい糸口が見つかるかもしれませんね。

[via MADWORKSSHOPMADWORKSSHOPCO.DESIGNCURBEDSOFIA BORGES]

(Text: 菅原沙妃)